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再生可能エネルギー源の1つである太陽光発電。地球温暖化対策の一環で、世界中で太陽光パネルの設置が進んでいる一方、消費者向けのソーラーテック製品も続々登場しており、太陽光の利用がより身近になってきている。
太陽光・熱は、コンセントからの充電を必要としないため、登山やキャンプなどのアウトドアシーンや、予期せぬ災害時などでも役に立つアイテムだ。今回は、太陽光・熱利用を含む再生可能エネルギーに関する消費者意識などに触れつつ、消費者向けソーラーテックデバイスの最新動向をお伝えする。
世界と日本の太陽光電力供給状況
世界中で急拡大する自然エネルギー市場の中でも、太陽光発電の普及が飛躍的に進んでいる。その勢いは、これまで主力だった水力発電や風力発電を追い抜くほどだ。Bloomberg New Energy Finance(BNEF)の最新データによると、太陽光発電の2018年の年間導入量は、過去最大となる約1.1億kW(109GW)に達した。
累積導入量(以下の図参照)で見ると、太陽光発電は約10年前の2007年にはわずか900万kW(9GW)だったが、2017年末には4億kW(400GW)と40倍以上に拡大し、ついに太陽光発電が原子力発電(392GW)を追い抜いた結果となった。
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日本国内だけの統計を見ても、2017年の自然エネルギー全体は15.6%に増加し、太陽光発電の割合は、前年の4.4%から5.7%に増加していることがわかった。
全体的に、石炭やNLG、石油など火力発電の発電量は、2017年は前年の83.6%から81.6%に減少と、依然として高いレベルではあるが、減少傾向にある。
原子力発電は、2014年にゼロになってから、2015年以降、毎年発電量が発生しており、2017年には全発電量の2.8%となったが、依然として低いレベルである。
一方、太陽光発電は年々増加傾向にあり、現在の5.7%は原子力の2倍以上だ。2017年は以前は自然エネルギーの大半であった水力の7.6%にも追いつく勢いで、年々存在感を高めている。
太陽光電力に対する日本の消費者意識は
環境省の「2015年太陽光発電に関する 国内消費者向けアンケート 調査票・集計結果」では、2009~2014年に既築住宅に太陽光発電設備を設置した1,022名を対象に太陽光発電の意識を調査をしている。
太陽光発電の設備を導入した主な目的は、1位、全体のうちの91.4%が「電力料金節約のため」と回答、2位が81.7%の「売電による収入」を目的として挙げている。経済的理由2つに続き、3位が環境保護対策目的の、「省エネ、省CO2に貢献するため」(63.1%の対象が回答)を挙げた。
こうした環境保護に対する消費者意識に関して、環境省が同時期に調査した「日本・英国・ドイツの消費者の再生可能エネルギーに対する意識や エネルギー消費実態等に関するアンケート 集計結果」から、日本国民の環境保護に対する意識はイギリス、ドイツ国民の意識よりも薄いことがわかっている。
「再生可能エネルギーのメリット」を約1,000人のランダムな国民に聞いたところ、日本では33%の340名程度が「わからない」と答えており、それより少ない28%が「温暖化対策に貢献する」という回答を挙げた。
同じ質問をドイツ、イギリス両国でも聞いたところ、ドイツでは日本の半数以下である15%が「わからない」と回答しただけで、その他85%は環境保護に触れた観点からの回答をしていた。
イギリスでも、ドイツに引けは取るものの、25%が「わからない」と回答、その他75%が再生可能エネルギーの環境保護に知識があった。
「日本・英国・ドイツの消費者の再生可能エネルギーに対する意識や エネルギー消費実態等に関するアンケート 集計結果」P21
一方、地震や自然災害の多い日本では、欧州の各国と違ったニーズで太陽光発電の需要がある。
次世代エネルギー業界の発展のための調査研究及び広報活動等を行うタイナビ総研は、2018年に自宅に太陽光発電を設置している全国のユーザー141名を対象に「太陽光発電と停電に関するアンケート調査」を実施した。
この調査で、アンケート調査の回答者のうち、41.1%が太陽光発電の設置後に「停電を経験したことがある」と回答し、そのうちの55.2%が「停電時に太陽光発電があって便利だと感じたことがある」と回答。
自宅の太陽光発電を、災害や停電時の対応策として使うケースが出てきていることが明らかとなった。
太陽光・熱をフル活用するソーラーデバイス
このように地球温暖化の防止目的だけでなく、震災や停電の時も役に立つソーラーデバイスが、世界中の特にスタートアップ企業から注目され、開発と新しい製品の販売を展開している。
地球温暖化の防止という目的だけでなく、実用性・利便性も兼ねて注目される、ポータブルのソーラーデバイスを紹介していく。
ニューヨークを拠点とする消費者向けのソーラー充電器を開発・販売するのはVoltaicという企業だ。「場所を問わないデバイスのチャージ」を目的に、登山、キャンプ、サイクリング、カヤックなどアウトドアで電気がない場所で、移動中でも充電が可能なソーラーデバイスを主力製品としている。
現在の充電の対象はスマホやタブレット、小型カメラGoProやラップトップで、ソーラー充電器がバックに搭載されているソーラーバック、ソーラーバックパックから随時チャージできる。エコと利便性の観点から、アウトドア派を中心に注目を集めている企業だ。
アウトドアに共通して、アメリカ発のGoSunは、電気や燃料を一切使わずクッキングが可能な、太陽熱を利用するポータブルクッカーを提供している。
独自の真空管技術を使い、グリルで230度までの調理が可能。オーブン料理ならば野菜、肉、パンなど、何でも対応でき、使い方も簡単で安全なため、家族でのキャンプなどに最適と促進している。
バーベキューをやったことのある人なら想像つくだろうが、意外と炭や木の準備や後始末が厄介である。GoSunはもちろん燃料の準備もいらず、燃やした後の後片付けもいらず二酸化炭素も出ないため、「Clean and Green」を謳っている。同じ要領で水も沸かせるため、キャンプなどのサバイバルにも使える。
大きさは一人用からファミリー用と幅広く、普通のBBQセットを買うのと同じような感覚で、価格帯もリーズナブル。アメリカは自宅の庭等でもバーベキューをする文化があるため、これから市場の拡大を予想している。
アウトドアだけでなく都心では、スマートフォン充電器を鞄に入れて持ち歩く学生やビジネスパーソンも多い。
Lucca Bozziは太陽光で充電できるチャージャーを、財布に兼ね備えたソーラーウォレットを提供している。高品質の皮で作られた財布から、気軽にどこでも携帯のチャージが可能で、見た目も厚みもスマート。
忙しくクライアント先を訪問するビジネスパーソンにも便利で、外出先でも重要な会話の途中で電話が途切れることを阻止できる。
また、会社や家に戻らなくても、太陽光やUSBケーブルでチャージをしながらYoutubeやスポーツのストリーミング、音楽などの連続再生をすることが可能だ。RFID搭載で、スマートフォンと財布の両方のトラッキングも可能だという。財布というモノだけ機能から、充電器との汎用、そして双方の軽量化が実現している。
Lucca Bozzi
さらに軽量化、汎用性の観点で服に着目したのがEvolution Wearの販売するソーラージャケットだ。
「服は防寒やオシャレだけのためにあるのではない、機能も兼ね備えるべきだ」という発想から、多機能性の服の販売を展開している。洋服の進化を開発し、ソーラーパネルをジャケットに搭載してスマートフォンのチャージを可能にする。
ユーザーの要望に合うカスタマイズをすることも可能で、さらに製品を進化していく可能性を秘めている。
再生可能エネルギーの中でも需要が高まっている太陽光発電。それを活用したソーラーデバイスの開発は、これからも無限の可能性を秘めており、アウトドアやスマートな社会での活躍が期待されるだろう。
文:米山怜子
編集:岡徳之(Livit)