日本唯一の自動運転専門ニュースメディア「自動運転ラボ」では、2019年度における自動運転・MaaS領域の変化を予測。その結果を発表した。

主だった内容は以下のとおりだ。

  • 自動運転レベル3(条件付き運転自動化)搭載の市販車が国内でも発表
  • 自動運転タクシー・バスの実用化を目指し、実験が活発に
  • タクシー業界が超戦国時代へ突入。プロモーション合戦が激化。
  • 「トヨタ×ソフトバンク」に続いて、IT業界との連携が加速化
  • 空飛ぶクルマ、日本で初めての有人飛行実施により投資マネー流入が急速に
  • 自動運転の「目」となるLiDARが大量生産により低価格化
  • 「車の所有」の在り方を変える、サブスク型をはじめとしたサービスが続々登場
  • 技術者の不足が深刻化し、国内でもドライな引き抜き合戦が激しくなる

一定条件下で自動運転が可能なレベル3搭載の市販車、国内でも発表の動き

一定の条件をみたすことで自動運転ができるレベル3(条件付き運転自動化)について、独アウディが世界で初となるレベル3搭載の量販車「Audi A8」を2017に発売した。しかしながら各国の法整備、国際基準の策定が追い付いていないため、現時点ではレベル2(部門運転自動化)搭載車両として販売されている。

そんななか、日本では自動運転実用化に向けた道路交通法改正試案が発表。パブリックコメントを経て、2019年の通常国会で提出される見込みだ。

自動運転ラボでは、トヨタ・ホンダといった国内自動車メーカーが、2020年にはレベル3相当の技術を搭載した車両を市場へ送り出すだろうと推測している。また、2019年中には各社のコンセプトモデルも出揃うだろうとのこと。

実用化に向け、自動運転タクシー・バスの実験が活発に

米ウェイモにより自動運転レベル4(高度運転自動化)相当搭載の自動運転タクシーの運行が2018年12月に開始。新たな時代の到来を感じさせている。日本国内では、ロボットベンチャーのZMPと日の丸交通が自動運転タクシーの公道営業サービス実証実験を行い、2020年(東京五輪の開催年)の実用化を目指している。

東京五輪年に自動運転技術を使ったサービス実用化されることを目指し、官民の足並みがそろっており、2018年には国・地方・民間企業・大学の共同実験が頻繁に行われた。自動運転ラボは、今年は実証実験・走行デモの実施がさらに白熱化しそうだとみている。

超戦国時代に突入しているタクシー業界、プロモーション合戦も

2018年は、国内のタクシー業界にとって変革を感じさせる年だった。DeNAの事業拡大、ソニーをはじめとした新会社「みんなのタクシー」設立、ウーバー・DiDiといった大手配車サービス事業者の本格進出などさまざまな動きがみられた。自動運転ラボは、JapanTaxiをはじめとしたタクシー事業者系の配車アプリを含めた超戦国時代が始まったとはなしている。

また2018年にはDeNAの「0円タクシー」、DiDiの「初乗り無料」といった斬新かつ大胆なプロモーションも話題に。自動運転ラボは、今年も各社がシェアの獲得合戦に向けさまざまな戦略を打つだろうと予測している。

「トヨタ×ソフトバンク」に続き、IT業界との連携が加速

自動運転や新時代のモビリティサービスを見据えて、ソフトバンクとトヨタ自動車が共同での新会社設立を発表。2018年度内に新会社「MONET Technologies」を設立し、オンデマンドモビリティサービスを皮切りとして新事業を開始する。

自動車メーカー×IT系の連携は近年のトレンドとなっており、グーグル・アップル・マイクロソフトといった大手IT系は、何がしかのかたちで自動車メーカーと連携している。今後は、自動運転・コネクテッド技術の進展、MaaS(移動のサービス化)浸透にともない、自動運転ラボはこのような連携がさらに強化されるだろうと予測している。

空飛ぶクルマ実用化に向けた日本初の有人飛行実施。投資マネーも急激に流入する見込み

2019年6月、日本国内で空飛ぶクルマの開発を手掛ける有志団体CARTIVATORと株式会社SkyDriveが、日本初の有人飛行試験を実施する予定。自動運転ラボでは、これによって映画や空想のなかのものだった乗り物への注目度が急激に高まり多額の投資マネーが流入すると推測。実用化へ向けた取り組みが国内でもさらに進みそうだとみている。

国も空飛ぶクルマの産業化への支援については積極的だ。国土交通省・経済産業省主導の官民協議会では、2018年11月に発表済のロードマップを素案として、空飛ぶクルマ事業化を2020年代に実現させるとの目標を盛り込んでいる。計画では、地方から実用化を進めるとのことだ。

自動運転の「目」となるLiDARが大量生産によって低価格化

自動運転の目となるセンサー「LiDAR」は、2030年には市場規模が現在と比べ約200倍となる5,000億円もの規模まで拡大するといわれている。LiDARは数年前までは相場が数百万円だったものの、米ベロダインライダーなどの大手による開発や、さまざまなスタートアップ登場により性能向上、低価格化が著しい。市場へ投入される自動運転レベル3の量産車へLiDARが搭載されるようになれば、大量生産化により価格がさらに下がり、1台あたり数万円程度が相場になるとの見方も強い。

サブスク型をはじめ車の所有のかたちをかえるサービスが次々に登場

2018年11月、トヨタが愛車サブスクリプションサービス「KINTO」を2019年初旬に開始すると発表。またカーシェアの業界では、DeNAが運営する個人間カーシェアサービス「Anyca」の登録会員数が、サービス開始から3年で17万人を突破。以前、高い人気を誇っている。

高いローンを組み、ディーラーや中古車事業者で愛車を購入するのが当たり前という時代から変化を迎えている。自動運転ラボはサブスクリプション・カーシェア事業の多様化などにより自動車所有の考え方が変わりゆくなか、2019年にはより多くの選択肢が登場しそうだと推測している。

技術者不足が深刻に。欧米に続き日本でもドライな引き抜き合戦が

米アップルがEV大手の米テスラ・モーターズやグーグル系ウェイもから技術者を引き抜いたことがニュースになるなど、欧米では技術者の引き抜き合戦が常態化。日本国内に目を向けてみても需要の高まりとともに技術者の絶対的不足が指摘されており、自動運転ラボは国内でも同様の引き抜き合戦がドライに繰り広げられるだろうとみている。

優秀なスタートアップに対しては、大手企業などが多額の出資を行い、実質的に技術と人を囲い込む例も次第に増えていく可能性があるとのことだ。

参考:自動運転ラボ 2019年版の「自動運転・MaaS領域におこる変化・潮流10大予測」より