ドローンでの空撮が、一般の人々にも楽しめるようになってきた。

安定した飛行技術と衝突回避機能の向上の先にあるのは、ドローンがどんなデータを集め、何に活用するのかというチャレンジだ。

AI技術を活用した機器の小型化によって、さまざまなデータ取得が可能となってきたドローンの搭載機器の現状をみてみたい。

ドローン×AIで、林業を成長産業へ

日本での取り組みとしては、産官学共同の動きに注目したい。

2018年9月28日、金沢工業大学は、ドローンとAI技術を活用した、森林境界の明確化や施業集約化のための効率的調査技術の開発に取り組むことを発表した。

この研究は、石川県農林総合研究センター林業試験場と石川県森林組合連合会、エイブルコンピュータ(石川県金沢市)との共同プロジェクトとして、2020年度までの3年計画で実施される。

背景には、林業を営む世帯の88%が保有山林面積は10ha未満と小規模であること、また高齢化が進んでいることで、森林境界の不明確化が進行するなどにより、国産材の需要に応じた安定的な原木供給ができていないという現状がある。

生活様式の変化による天然林の利活用不足や、コナラ等のきのこ原木の確保も深刻な課題だ。

このような状況の中で、ドローンによるデータ収集と、深層学習(ディープラーニング)を用いた画像認識AIエンジンの開発によって、適切な森林整備による原木の安定供給体制の構築を目指すという。

今回の研究では、以下の4項目の開発が進められる。

  1. 無人航空機(UAV)により取得する空中写真データから、新たに開発する画像認識AIエンジンを用いて、主な樹種境界や合意形成に必要となる施業を実施するための森林境界(土地の境界ではなく施業境界)を推定する技術の開発
  2. 全天球カメラから取得した森林内のデータをもとに、今回開発する画像認識AIエンジンによって材積や販売額に直接影響する直材や小曲がり材、曲がり材等の幹の形状(材質)を効率的に判読する技術の開発
  3. UAVの空中写真データからコナラ等の有用な広葉樹を特定し、樹冠径等から材積や原木採材本数を推定する画像認識AIエンジンの開発
  4. これらの画像認識AIエンジンを組み込んだ、森林組合職員等が使いやすいクラウドアプリの開発

こうした技術開発によって、これまで多大な労力を必要とした森林調査や森林所有者の合意形成に至る作業を大幅に省力化し、施業の集約化が推進できることに加え、原木の安定供給や木材の利用促進につながるもの期待されている。

さらに進化する搭載機器


Latest Generation of Phoenix Aerial UAV / LiDAR options

金沢工業大学のプロジェクトでドローンに搭載される全天球カメラ。こうしたカメラの高性能化、小型が進むことで、収集データ量は増し、緻密化される。

ドローン搭載機器の進化はカメラだけではない。センシング技術として「LIDAR」との組み合わせが注目されている。

LIDARとはLight Detection and Rangingの略で、光レーザーで物体の距離を測り、高い精度で対象となる空間を3次元データとして記録することができる。もともとは地質学や地震学などで用いられていたものだが、近年小型化が進み、自動運転車やドローンにも搭載されるようになってきた。

LIDARを搭載することで、これまでデータ取得が困難だった山間部などの3次元マップが作成が低コストで可能となる。この技術は山間部での送電線検査などに活用され、木の状態を詳細に知ることで、伐採や刈り込み、倒木対策など、事前に策を講じることができるようになるという。

すでに海外ではLIDARの活用が進み、フィンランド発のSharper Shapeは、独自開発したドローンとLIDAR機器、ソフトウェアを組み合わせたソリューションを提供している。

社会課題と結びつくドローン×AI

ドローンビジネスは次の段階に進んだ。機器自体の進化によりドローン空撮技術が一般化していく一方で、搭載機器の多様化とビッグデータの収集により、データを解析して何に活用していくか差別化していくことが重要になってくる。

特に農業や林業などの一次産業、送電線検査などのインフラ整備など、これまで多大なコストがかかってきた社会課題を解決に進める大きな推進力になりそうだ。

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