高齢化社会が進むにつれ、高齢者の介護問題が大きな社会問題となっている。総務省が7月に発表した「平成29年就業構造基本調査」によると、過去1年間に介護や看護を理由に離職した人は約10万人に上ったという。

また、会社勤めなど雇用されて働きながら介護をしている人は、約300万人で前回12年調査より約60万人も増えたという。

このなかで、仕事と介護を両立させている女性の意識はどうなっているのだろうか。

フィールド・クラウドソーシング事業を展開するソフトブレーン・フィールド株式会社は、同社が推進するサステナブル∞ワークスタイルプロジェクトの第5回目として「働く女性の仕事と介護の両立に関する意識調査」を実施した。

6割以上が介護と仕事の両立を望む

サステナブル∞ワークスタイルプロジェクトとは、国連で採択された2030年までの国際目標「SDGs(Sustainable Development Goals/持続可能な開発目標)」の考えに基づいた持続可能な働き方である「サステナブル∞ワークスタイル」を浸透させるためのプロジェクトだ。

このプロジェクトの第5回目となる今回の調査は、同社に登録する女性キャスト会員を対象とし、有効回答数は745名(平均年齢47歳・親の介護が身近になる40代~50代がボリュームゾーン)だった。

まず、介護を担うことになった場合に、仕事との両立をしたいかどうか尋ねたところ、「両立したいと思う」が64.8%となり、6割以上が親の介護を担うことになっても仕事を続けていく意向があることがわかった。

実に約6割もの女性が仕事との両立を望んでいる。女性の社会進出は着実に進んでいることがわかる。

次に、親の介護状況やそれに伴う生活の変化について調査した。

親の介護状況については、過去に親の介護を担った経験はなく、「現在、介護が必要な親はいない」が62.7%ともっとも多く、「現在、親の介護を担っている」が11.0%、「現在、介護が必要な親はいるが、自分以外の人が介護を担っている」が11.5%となった。2割近くの親が介護を必要としている状況である。

また、現在は介護を担っていないが、「過去に親の介護を担った経験がある」が、11.8%となり、約3割の女性がなんらかの形で介護の経験があることがわかった。

これは、この調査対象の平均年齢が47歳と高いことから、介護経験者が多いと思われる。

また、「現在、親の介護を担っている方」および、「親の介護を担った経験がある方」(n=170名)を対象に、介護が理由による生活の変化について調査した。

介護が理由で変化したことについては、「プライベートの時間」が74.1%、「生活リズム・スタイル」が62.4%と続き、「仕事」の52.4%を上回る結果となった。

このことから、女性にとっては介護は、仕事よりプライベートへの影響が多いことがわかる。

介護と仕事の両立には9割以上が不安を感じる

そして、介護が理由による離職の経験や予定について調査をした。介護が理由による離職の経験や予定について尋ねると、「自分自身が離職の経験がある」が55.9%と半数を超え、「自分自身が離職の予定である」が22.4%となった。

「現在、親の介護は必要ではない」女性(n=467名)を対象に、今後、親の介護が必要となった場合に、介護に対してどのような負担を感じているか調査をした。

そのなかで、今後、親の介護が必要となった場合に不安を感じるか尋ねたところ、「とても不安を感じる」が34.7%、「やや不安を感じる」が56.5%と合わせて、9割以上が不安を感じると回答した。

今回の調査では、約6割以上が、親の介護を担うようになった場合でも、仕事と介護を両立し継続的に働きたいと考えていることがわかった。

そこで、仕事と介護を両立し継続的に働くためには、どのようなことが必要だと考えているかを調査した。

まず、仕事と介護を両立し継続的に働くためにはどのようなことが必要であるか尋ねたところ、介護休暇や介護手当などの「働きながら介護をする人に対する企業側の理解や制度」が63.0%でもっとも多かった。

そして、医療施設を退院した後のサポート体制として、医療施設を退院し、自宅介護に切り替わる際の要介護者の見守りや在宅医療、各施設への送迎など、介護者の仕事・働き方に支障がでない「医療と介護の連携」が58.8%。

介護者の負担を軽減し、手続きがスムーズに行えるように「地域行政と医療施設・介護施設の連携」が46.7%と続いた。

その他、「介護サービスの仕組み、手続きなどが簡単にわかる情報サイトやアプリ」が41.2%、「働く人が介護について知る機会をもっと増やす」が27.8%、「介護関係者の地位・待遇の向上」が36.8%となり、深刻化している人手不足に対する対策などが挙げられた。

女性の場合、体力的な問題もあり、さまざまな面からのサポートが必要となるだろう。

最後に、2018年は4月に実施された「65歳以上の介護保険料の改正」を始め、さまざまな介護や医療費に関する制度改正について、それぞれの認知度について調査した。

2018年に実施された介護や医療費に関する制度改正の認知度については、8月実施の「70歳以上の医療費自己負担上限額の引き上げ」が31.1%、「介護サービス費自己負担割合の引き上げ」が25.8%と続いた。

また4月実施の「65歳以上の介護保険料の改正」は20.9%だった。一方で、今回調査した制度改正については「どれも知らない・聞いたことがない」との回答が54.8%と半数を超える結果となった。

制度改正については、総じて認知度が低い。制度を利用すれば、それだけ負担は軽くなるだけに、認知度を上げるためにも、企業側の制度や理解、医療・介護の連携、周囲や地域の協力体制などが求められる。

介護ロボットなど新しいテクノロジーの活用で介護対策を

介護問題への対策として注目されているものに、介護ロボットがある。

厚生労働省は、2018年4月1日付けで老健局内に「介護ロボット開発・普及推進室」を設置した。

ここでは、介護ロボットの開発・普及に関する専門家として老健局参与(介護ロボット担当)に9人を任命し、介護ロボットによる生活の質の維持・向上、介護者の負担軽減を目指している。

日本人の平均年齢は年々伸びているが、高齢者がすべて健康で介護不要なら問題ないが、現状はそうではない。介護ロボットなど新技術や新制度の導入で介護者の負担を減らし、よりよい社会となることを願う。

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