多様な価値観を持つミレニアル世代がビジネスの世界で続々とデビュー・活躍している現代では、ビジネスパーソンに向けたサービスも多様化している。また仕事一辺倒のライフスタイルではなく、健康管理についての関心も高まっている。

AMPではビジネスパーソンのワークスタイル・ライフスタイルに関連する新しい動きやサービスに注目してきたが、これらにはいくつかの傾向がある。今回はその傾向の中でも「サブスク(サブスクリプション)」「シェアリング・エコノミー」「健康経営」の3つのキーワードに注目して、ビジネスパーソン向けの新しいサービスについてまとめる。

ビジネススーツは「買う」時代から「借りる」時代に

先ほどあげた、「サブスク」「シェアリング・エコノミー」がビジネスパーソンの必需品であるビジネスウェアにも押し寄せている。スーツをはじめとした紳士服販売で有名な株式会社AOKIが、2018年4月30日にビジネスウェアの月額定額制シェアリングサービス「suitsbox」を開始したのだ。

ビジネスウェアといえば、ビジネスパーソンにとっては最も重要なアイテムの1つで、その人の印象に大きな影響を及ぼすことさえある。そのためより年齢を問わず、強いこだわりを持つ人も多いだろう。

AOKIでは「着れば始まる」をコンセプトに、より便利にビジネスウェアとの出会いをユーザーに提供するためにこのサービスを始めた。suitsboxではスタイリストが、ユーザーの要望やサイズにあわせビジネスウェア(スーツ・シャツ・ネクタイ)のフルセットをコーディネートし、自宅へ配送。

好みに合わなければ月1回まで無料で交換できる。くわえて交換や返却の際にクリーニングする必要もない。有料のオプションを追加すれば、1ヵ月に何度も交換することも可能だ。

流行りや季節、好みにあわせてビジネスウェアをいろいろ購入していたらそれだけお金がかかるし、もちろんクリーニングなどのメンテナンスも馬鹿にはならない。一方 suitsboxは月額定額制でさまざまなビジネスウェアを試すことができクリーニングなどのメンテナンスを自分でする必要もない。

ビジネスウェアにこだわりたいビジネスパーソンにとっても、モノを所有するより使いたい時だけ便利に使いたいミレニアル世代にとってもスマートな選択肢といえそうだ。

なおsuitsboxのサービス開発にあたって、消費者心理の調査(デプスインタビュー・自宅訪問)を行い、ターゲットとするミレニアル世代の都市部ビジネスパーソンのリアルな意見をヒアリングしてきたとのこと。「住居にモノがあふれている」「ビジネスウェアは高いし、保管場所を取る」といったこの世代の要望を適えたサービスになっているといえるだろう。

民泊も出張先の宿泊の選択肢に

訪日外国人間顧客の激増によるホテル不足を解消する民泊もまた、シェアリング・エコノミーを体現した代表的なサービスといえる。民泊はホテルに泊まるより安価なことに加えて、ホテルとは違った宿泊体験を満喫できる。そして民泊が、出張時の宿泊先としても便利に利用できるサービスがあることをご存知だろうか。

それが、日本初のビジネスシーン特化型民泊マッチングサイト「TripBiz」だ。「一時社宅」をコンセプトとして、ビジネスパーソンの出張用などに、ホテルでは得られない快適な宿泊空間として民泊を提供している。

さらに2018年には、TripBizはクラウド型出張手配管理サービス「AI Travel」と連携を開始すると発表した。AI Travelは出張の要件を入力するだけで、最適なホテルだけでなく新幹線・飛行機といった交通手段まで検索してくれる上に、それらを最小限の処理で予約できるサービスだ。

加えて、総務・経理向けにはこれらが一元的に管理できる管理画面が提供され、分析や改善施策の立案・実行のサポートも行う。

AI Travelではこれまでビジネスホテルや旅館などの宿泊物件が検索できたが、今回の連携によってTirpBizに登録された民泊物件もあわせて選択できるようになるとのこと。

AI Travelを利用することで出張手配の手間を削減できるのに加え、宿泊先として民泊が選べるようになることで、出張時の宿泊がより安価で便利なものとなる。出張の多いビジネスパーソンにとって、うれしいサービスがまた1つ増えたといえるだろう。

世界には必要な時間だけ1分単位でホテルを借りられるサービスも

海外では日本の民泊よりさらに短い期間で「場所」の貸し借りができるサービスがある。その1つがロンドンでリリースされた「Pop Pods」だ。このサービスでは、自宅やスタジオ、オフィスなどの空き時間を貸し出す側のホストが時間単位で登録する。そして借りる側のゲストは、これらから希望に合う場所を検索し、なんと最短30分というスポット利用ができるのだ。

たとえばビジネスパーソンは、外回りの営業中にちょっとした空き時間が生じることがあるだろう。従来であれば、漫画を読まないのに漫画喫茶で仮眠を取ったり、本当はコーヒーを飲みたい気分でもないのにカフェに入ってノートPCで報告書を書くなどの形で空き時間を埋めてきた。けれど、Pop Podsであればより適した場所で空き時間を有効活用できるわけだ。

さらにサンフランシスコに拠点を置く企業「Recharge Labs, Inc.」では、提携先のホテルを1分単位で借りられるサービスを展開している。ユーザーは、リアルタイムでホテルの空きを検索し予約するだけ。予約できる提携先のホテルの中には、HyattやStarwoodといった名だたるハイエンドホテルも含まれている。

スキマ時間を有効活用したい日本のビジネスパーソンにとっても、なんともうらやましいサービスではないだろうか。さらに貸し出す側のホテルにとっても、部屋の稼働率があがり売上を伸ばせるので評判が良いという。

これらのサービスは、日本の民泊よりフレキシブルという意味では、さらに進んだシェアリング・エコノミーということができるだろう。日本でも、同様のサービスが今後登場することを期待したい。

昼食難民を救うランチのサブスク型サービスとは?

昼食難民という言葉があるように、都心部のオフィス街で働くビジネスパーソンにとってどう昼食をとるかというのも大きな問題だ。昼食は仕事の疲れをいやす重要なリラックスタイムだが、近くのお店はどれも大行列で大事な休憩時間を浪費することになったり休み時間中に昼食がとれなかったりなんてことも稀ではない。

そんなビジネスパーソンにとって、うれしいサービスがある。月額定額制で、さまざまな飲食店のランチを待たずにテイクアウトできる「POTLUCK(ポットラック)」だ。POTLUCKでは、あらかじめ月額定額制で30日間有効なチケットを購入する。このチケットでは1食分の料金が一律で決まっており、1ヵ月で購入するチケットの枚数によってその単価が下がる。

そして前日までに希望のお店のランチを予約しておくことで、当日はお店へ行けば待たずにランチをテイクアウトできる仕組みだ。まさにランチのサブスク(定期購入)サービスだ。

なおPOTLUCK は2018年夏~秋頃から一部エリア(渋谷、恵比寿、代官山、表参道)でサービスのベータ版を提供予定となっている。

社員の睡眠のコーチングと分析で健康経営を支援するサービスも登場

健康管理では食だけでなく睡眠も欠かせない。そして社員の睡眠問題改善のための対策に目をつけたのが、スマートフォンとブラウザによる日本初の睡眠コーチング&分析サービス「O:SLEEP」だ。

このサービスは、国が定める「IT導入補助金(サービス等生産性向上IT導入支援事業)」の対象であり、新規導入の際の経費の一部を国に補助してもらうことができる。

O:SLEEPでは、社員が睡眠の際に枕元にiPhoneをおいて、端末内の加速度センサーによって眠りの時間を計測。その結果をもとに睡眠のコーチングを実施する。またブラウザの管理システムでは、アプリで取得したデータを集約し、生産性の低下度合・損失、さらにメンタルヘルスの不調状態を可視化。さらに健康経営を進める際の問題点を抽出し、改善施策を提示する。

経済産業省が発表した「企業の『健康経営』ガイドブック ~連携・協働による健康づくりのススメ~ (改訂第1版)」によれば、企業の健康関連総コストの割合は、従業員の生産性低下が約78%(1人あたり56.5万円/年の損失)で、特に睡眠・メンタルが大きな影響を与えているという。社員の睡眠改善は、企業の健康経営にとって重要な課題なのだ。そして、O:SLEEPは、この課題を解決すための有効な手段となるだろう。

シェアリング・エコノミー、サブスク、健康経営がビジネスパーソンのワークスタイルを変える

憧れの高級外車を購入するために睡眠もとらずにがむしゃらに働く – そんなワークスタイル・ライフスタイルは、ミレニアル世代のビジネスパーソンにとっては古くなりつつある。

モノを所有するのでなく、共有することでより安価に賢く利用するというシェアリング・エコノミーにかなったサブスク型のサービスが続々登場し、企業は健康経営を重視しスタッフのより良い睡眠にまで目を配る時代だ。今後、これらのキーワードで語ることのできるサービスがさらに増え、ビジネスパーソンのワークスタイル・ライフスタイルはさらに変化していくことだろう。

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