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DeNAと横浜市による「無人運転サービス・AIを用いた地域交通課題解決プロジェクト」やNTTドコモによる「AIタクシー」など、AIを用いた交通手段の実証実験が行われている。また、それにともない、交通量計測分野でもAIの活用がはじまった。
クラウディアン株式会社は、データ生成現場(エッジ)でAI処理を実行する小型装置「CLOUDIAN AI BOX(AI BOX)」の第1弾ソリューションとして、同社が開発した「交通量自動計測機能」を予め搭載した「Smart Traffic(スマート・トラフィック:スマトラ)」のベータ版を提供開始する。
ディープラーニングによる画像認識で車両を検出
Smart Trafficは、道路や交差点の撮影映像から、AIのなかでも最近注目を集めるディープラーニングによる画像認識で車両を検出する。
そして、車種を分類し、同社が新たに開発した映像に映る走行車両画像の追跡技術により、車線別に走行車数と平均速度を測定するソリューションだ。
これを高速計算処理用GPUとLTE/WiFi通信機能内蔵、カメラ接続機能付きの「エッジAI」実行用小型装置であるAI BOXに予め搭載した製品として提供する。
これまでの交通量計測には、以下3点のような課題があったという。
- 人手による計測における課題
これまで交通量計測の多くは、特定の期間を定め人がカウンターを使い測定していた。そのため、期間限定の統計的な調査が中心で、人数と測定期間に応じた作業委託費がかかり、災害時などの緊急調査手配に苦労するなど、各種制約があった。 - センサーによる計測における課題
センサーを使う交通量計測は設置コストがかかるため測定場所が限られており、点の測定であるため走行車両を追跡するものではなかった。 - 画像認識による計測における課題
従来型の画像認識は、主に直進道路における渋滞などの通過車両数の測定に使われている。場所毎に車線が異なる交差点では設定の手間がかかることや、バスやトラックの背後に隠れたのち再度出現する車両を2重に数えてしまうといった課題などがあった。
このような課題に対し、Smart Trafficには以下のようなメリットがある。
- 設置が容易
設置場所や固定通信回線手配を気にすることなく、既存または新規設置ビデオカメラ映像だけで交通量計測が可能 - 走行車種認識
画像認識により大型(バスとそれ以外)と小型の車種を自動認識 - 交差点計測
車両の移動経路が複雑で、目標物がない道路や交差点でも計測 - 走行車両追跡
撮影映像から車両を認識して走行経路や軌跡を取得 - 走行車両再認識
大型車の背後に隠れ再度出現する等の車両を同一と再認識
Smart Trafficは、2016年9月に実施した「AIを活用しカメラ映像から走行車種を認識しターゲット広告を配信へ」における実証実験の成果を、公的機関から受託した交通量自動計測プロジェクトに応用し、そこで得た経験や知見をもとに改良を重ね、より使いやすく、汎用的な製品にしたもの。
現時点ではベータ版だが、交通計画、交通調査、交通渋滞・安全対策、交通施設計画などを実施する企業組織などを中心に展開し、日本全国の道路や交差点における実証を続け、来年度早々には正式版として広く発売していく方針だ。
なお、AI BOXが集める現場の最新データを同社のオブジェクトストレージ製品「CLOUDIAN HYPERSTORE」に保存しAIの再学習に使うことで認識精度を持続的に高めるAI再学習サイクルを実現できるという。
ドローンを用いた交通量計測用のソフトウェアも登場
交通量計測で注目されるのは、テラドローン株式会社が開発したドローンを用いた交通量計測用のソフトウェアだ。このソフトは、ドローンによって、空中から道路をビデオ撮影することによって、低コストかつ自動での交通量計測を行うことができるというもの。
このソフトでは、一般的なドローンで問題なく運用でき、従来、人力での交通量計測での課題だった設置コストの問題や情報量不足を解消できる。
ドローンを活用することにより、無人でなおかつ広域での計測が可能となる。さらにAIによる自動認識により、車や人の速度、走行軌道、車種ごとの交通量算出などさまざまなデータが取得可能となる。
テラドローン株式会社は今後、この技術を用いた人口流動のデータ取得やマーケティングでの利活用を実現するシステムを開発する予定だという。
安全な交通社会の実現にはAIが必須
今後、自動運転などの普及に伴い、交通量計測にはますます高い精度が求められてくるだろう。そのための今回のようなAIの活用は大いに予測できる。
AIをうまく活用し、安全な交通社会の実現を目指してもらいたい。