AIがわれわれの身近な存在となった昨今、AIを搭載したツールとして大きな注目を集めている「スマートスピーカー」。

日本では2017年11月に「Amazon Echo」が上陸し、大きな話題となった。調査会社アクセンチュアの「2018年アクセンチュアデジタル消費者調査」によると、日本では、2018年1月時点で出荷台数が100万台を超え、普及率は約8%になるなど、大きく成長してきている。

また、同調査によると、スマートスピーカーの所有率は中国、インド、アメリカ、ブラジル、メキシコの5カ国で、2018年末までにオンライン人口の3分の1にまで達する見通しだという。

今後さらなる市場拡大が見込まれるスマートスピーカー市場をターゲットとし、株式会社アイリッジはスマートスピーカー向けアプリの開発プラットフォーム「NOID」を正式公開した。

アプリの制作からストア公開までがワンストップで

NOIDは、プログラミング不要で簡単にスマートスピーカーアプリが作れるクラウドサービスだ。「まるでノートに書き出すように」というコンセプトのもとに開発された。

WebブラウザからNOID管理画面にアクセスし、画面に従って「ユーザーのどんな呼びかけに対して(input)」「音声アシスタントに何をさせるか(output)」をマウス操作あるいはテキスト入力していくだけで、アプリの制作からストア公開まで直感的にワンストップで行うことが可能だ。

利用には無料/有料の2つのプランを用意しており、自分用のスキルを作りたい個人から商用にスキル開発を行いたいプロクリエイターや法人まで幅広く利用できるという。


NOIDサンプル動画

主な機能としては、オーディオプレイヤー機能、ストレージ機能(NOID内にMP3ファイル等をアップロード可能)、申請機能など。

2018年9月現在の対応プラットフォームはAmazon Alexaで、Google Homeにも対応拡大予定だ。

今後はフラッシュニュース対応、動画対応、電子カート対応、電子決済対応(Amazon Pay等)などの機能追加を予定している。

「手」を「声」に置き換える「VUIデザイン」とは

冒頭でも述べたが、日本で最も話題を集めているのが「Amazon Echo」だ。そして、そのアプリの開発に欠かせない技術として「VUIデザイン」がある。

この名称は「Voice User Interface(声というユーザーインターフェース)のデザイン」の略だ。つまり、スマートスピーカーの最大の特徴である「声」というユーザーインターフェースを表している。スマートフォンの場合、「手」行っていた操作を「声」に置き換える技術なのだ。

VUIのデザインプロセスは、オランダ拠点のエンジニア伊東知治氏によると以下の5つに分けられるという。

  • 目的とユーザーストーリーの定義

    まず、スキルの目的、スキルが提供できる価値を明確化すること。
  • 会話シナリオのサンプルを作る

    次に1で定義した内容を念頭に置き、ユーザーはどんな声をかけてくるか、それに対してなんと応答すべきか、会話シナリオのサンプルを作ること。
  • すべてのスキルをフローに書き起こす

    そして、ユーザーのニーズに対応するそれぞれのスキルについて、2のように会話の流れを考慮しながら会話のフローを作り込んでいく。
  • 会話のパターンを実際のセリフに落とし込んでいく

    3で挙げた会話のパターンを、実際にデバイスが発話するセリフに落とし込む。このとき、「〜〜なさいますか?」ではなく、「〜〜にしますか?」とフランクな言い方にするなど、表現も調整する。
  • 実装、テスト

    最後に実装し、テストを行う。

伊東氏によると、「VUIデザイン」についてデザイナー、エンジニアに求められるのは、「会話をデザインする力」だという。

具体的には、声の抑揚、高低、発話の長さ、単語の選び方、イントネーション、男らしい声、女らしい声、方言など特別な訛りといった要素を、デザインする際に考慮しなければならないとしている。

スマートスピーカーの普及を左右するアプリの作成

アプリ(スキル)開発に必要なのは、言うまでもなく「いかにユーザーに最適なアプリ(スキル)」を作るかという点であるが、これまでは個人で作るにはかなりの技術を必要とし、個人ユーザーにとってそのハードルは高かった。

このハードルを「NOID」がどこまで低くし、スマートスピーカー普及を後押しするか、今後の展開は注視しておきたいところだ。

img:PR TIMES