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総務省統計局の「労働力調査 (基本集計)平成30年(2018年)3月分(速報)」によると、就業者数は6,620万人。前年同月に比べ187万人の増加で63カ月連続の増加となった。そして完全失業者数は173万人で、前年同月に比べ15万人の減少となり、94カ月連続の減少となった。
このように雇用状況は、高度経済成長期に近い水準に上昇しており、失業率も四半世紀ぶりの低水準で推移している。これは、求職者側からすると好環境といえるが、雇用側からすると労働需給がひっ迫度を増しており、人手不足は続いている。
そこで、帝国データバンクは人手不足に対する企業の見解について調査を実施した。その結果、正社員が不足している企業は50.9%で2017年7月から5.5ポイント増加し、7月として初めて半数を超えて、過去最高を更新したという。
多業種で高まる正社員の「人手不足」感
まず、現在の従業員の過不足状況を尋ねたところ(「該当なし/無回答」を除く)、正社員について「不足」していると回答した企業は50.9%となった。
正社員の人手不足割合は1年前(2017年7月)から5.5ポイント増となるなど、引き続き高い水準で推移しており、7月としては初めて半数を超えて、過去最高を更新したという。
総務省が発表した「人口推計」によると、2018年8月1日時点の日本の人口は1億2,649万人で、2010年以降8年連続で減少している。これに加え、高齢化や少子化などで労働人口の減少も続いているようだ。
「不足」していると回答した企業を業種別にみた結果が以下になる。
- 「情報サービス」(71.3%、1年前比1.6ポイント増、2年前比11.3ポイント増)
- 「運輸・倉庫」(67.6%、同6.7ポイント増、同19.5ポイント増)
- 「建設」(66.3%、同6.8ポイント増、同13.1ポイント増)
- 「メンテナンス・警備・検査」(66.2%、同9.5ポイント増、同 16.2ポイント増)
- 「家電・情報機器小売」(63.9%、同2.4ポイント増、同1.1ポイント減)
ソフト受託開発などの「情報サービス」が最も高く、企業の7割超が不足を感じていたという。
また、注目されるのは、前年は30位だった「輸送用機械・器具製造」(62.9%)や27位だった「人材派遣・紹介」(62.1%)が1年前より20ポイント以上増加していることだ。人手不足感が急速に高まり、多分野に拡がっていることがわかる。
規模別にみると、「大企業」(58.5%)では6割近くの企業が「不足」と考えており、1年前から6.7ポイント増加し、大企業における人手不足感は一段と強まっている。
また、「中小企業」は49.0%(1年前比5.3ポイント増)、中小企業のうち「小規模企業」は43.6%(同4.8ポイント増)が不足していた。規模の大きい企業ほど正社員に対する不足感が強くなる傾向で推移するなか、小規模企業の人手不足も広がっているという。
このように、規模の大小にかかわらず、人手不足は広がっているようだ。
正社員、非正社員ともに拡がる不足感
また、正社員数の増減をみると、企業の26.4%が1年前(2017年7月)より増加、15.3%が減少していた。また、非正社員では、企業の17.5%が1年前より増加、13.9%が減少している。
そこで、正社員の過不足感と社員数(正社員、非正社員)の増減との関係をみると、正社員が「不足」「やや不足」「適正」「やや過剰」と感じている企業では、1年前から正社員数が増加している企業の方が減少している企業よりも多くなっている。
雇用過不足感が「適正」な企業では正社員数を増加させることで適正化が図られている一方、「不足」「やや不足」な企業では正社員数の増加が追いついていない様子がうかがえるとしている。
しかし、正社員が「非常に不足」と考えている企業では、正社員数が1年前より増加している企業より減少している企業の方が多い。さらに、非正社員数についても減少した企業が多く、社員数の減少とともに正社員不足が深刻化している可能性が示唆されるとしている。
一方、非正社員が「不足」していると回答した企業(「該当なし/無回答」を除く)は33.0%となった(1年前比3.6ポイント増、2年前比8.1ポイント増)。
非正社員の「人手不足」割合は7月として初めて3割台となり、引き続き高水準で推移している。「適正」と考えている企業は60.8%で、1年前より2.7ポイント低下した。「過剰」は6.2%だった。
非正社員について、最も人手不足と感じている業種が以下になる。
- 「飲食店」(82.9%、1 年前比4.9ポイント増、2年前比3.4ポイント増)
- 「メンテナンス・警備・検査」(65.1%、同16.6ポイント増、同14.7ポイント増)
- 「人材派遣・紹介」(60.0%、同11.2ポイント増、同11.2ポイント増)
- 「娯楽サービス」(58.2%、同7.3ポイント増、同4.8ポイント減)
- 「飲食料品小売」(57.9%、同1.0ポイント増、同5.9ポイント減)
- 「各種商品小売」(57.8%、同1.8ポイント減、同14.9ポイント増)
「飲食店」が8割台で最高となり、上位10業種中8業種が小売・個人向けサービスという結果になった。
規模別にみると、「大企業」(36.1%、1年前比4.0ポイント増)、「中小企業」(32.1%、同3.5ポイント増)、中小企業のうち「小規模企業」(30.5%、同3.0ポイント増)とすべての規模で3割を超える企業が「不足」と考えていた。
正社員と同様に、規模の大きい企業ほど非正社員に対する不足感が強くなるなか、従業員の少ない企業も人手不足は一段の高まりをみせているとしている。
適正な労働力のバランスを考えた施策の実行を
今回の調査では、企業の半数以上が正社員の不足感を抱いていることがわかった。しかし、その反面、必ずしも労働市場における需要と供給がマッチしていない可能性もあることがわかった。
人手不足解消について、企業や政府は、適正な労働力のバランスを考えた施策の実行が必要だろう。