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働き方改革の一環として、テレワークを導入する企業も多いことだろう。けれどテレワークでは、オフィスに出社したスタッフとのやり取りは、PCやスマートフォンなどの画面上で展開されるチャットやウェブ会議にとどまる。実際に出社して顔を合わせるのと比べてしまうと、コミュニケーションに不便を感じるのは否めない。
またテレワークが可能なのはデスクワークに関してのみで、身体を動かして仕事をする現場でのテレワークは想像もしない人が多いのではないだろうか。
そんな中、あたかも実際に職場へ“出社”して、同僚と顔を合わせたり身体を使った労働ができたりする分身ロボットが実用化されつつあるのをご存じだろうか。
出社したかのようにテレワークが可能な「OriHime」
身長20cmの「OriHime」は、実際にオフィスへ出社したかのようにテレワークができる分身ロボットだ。利用者はOriHimeを操作することで、遠隔からオフィスの中を見回したり、簡単なジェスチャーを交えてオフィスにいる同僚とコミュニケーションをとったりすることができる。
OriHimeはすでに全国約70社で導入済であり、開発・提供元の株式会社オリィ研究所でも、育児や難病によって生身で出社することなく、OriHimeを利用しテレワークを続けているスタッフが3名いるという。
従来のテレワークでは、コミュニケーション手段がPCやスマートフォンのモニタ上でのチャットやウェブ会議に限られていた。OriHimeを使えばより柔軟なコミュニケーションが可能となり、テレワークもさらにしやすくなるだろう。またすでにオリィ研究所自身が行っているように、難病の方が自宅のベッドなどからあたかも出社したかのような感覚で仕事をできる点にも魅力を感じる。
なおオリィ研究所は2017年より、さまざまな理由で働けない人達がテレワークで仕事を続けられる可能性を探るプロジェクト「働くTECH LAB」を、一般社団法人WITH ALSと共同で実施している。
新たな研究用モデルとして、移動が可能な「OriHime-D」を開発
OriHimeはすでにテレワーク分身ロボットとして実用化されているものの、移動ができず身長も低いため、接客や受付などではできる仕事量に制限があった。そこでオリィ研究所では、移動が可能な全長約120cmの新型の分身ロボット「OriHime -D」を研究用モデルとして新たに開発した。OriHime-Dは14の関節用モーターを内蔵しており、前進や後退、旋回といった移動が可能。モノを持つこともでき、簡単な肉体労働も行うことができるという。
これまで、テレワークといえば想定されるのはデスクワークだけだったのではないだろうか。OriHime-Dによって、身体を使う職場でもテレワークがすすむのは画期的だ。
また「働くTECH LAB」の紹介動画では、心臓の病を抱え健常者のように身体を動かせない方が、OriHime-Dを使い「カフェの店員さんや博物館の案内係として働きたい」と語っていたのが印象的だ。
テレワーク分身ロボット「OriHime」「OriHime-D」のテストパイロットの募集を開始
オリィ研究所では、OriHime-Dの研究用モデルを使い、肉体労働・接客業でのテレワークの可能性を探るため、共同での事業開発や研究などが開発を行う企業・研究機関を募集したところ、複数の賛同・協賛の声が上がったという。
そこで次のステップとして、外出が困難なテストパイロットを10名前後募集し、「OriHime」ならびに「OriHime-D」を使った接客・オフィス出社などさまざまな就労ケースでの実験を行うという。
今回の募集では、身体障害や育児・介護などの理由により「働く意思があるものの外出が困難な方」を対象として、2018年10月~2019年4月までの半年間、フィールド実験を行うという。また実験にあたっては謝金も支払われるとのことだ。
世界には“バーチャル通学”が可能なロボットも
OriHimeのようなロボットは、世界でも活躍しているようだ。
ノルウェーでは、長期療養中の子どもたちのために、バーチャル通学が可能なアバターロボット「AV1」が登場している。使い方は簡単で、モバイル端末のアプリを通じてロボットを操作し、授業に「参加」する。ロボットの視界を通して、授業や他の生徒の様子を見ることができるほか、質問をするなど積極的なコミュニケーションも可能だ。
遠隔地の子どもと教室をつなぐことだけを目的とするなら、既存のビデオアプリだけでも十分だろう。けれどかわいいかたちをしたあばたロボットは、「周囲の生徒に安心感を与える」と営業担当のクリスチャン・マツェン氏は語っている。
くわえて、このロボットは、たとえば白く光っているときはアクティブであるなど、ランプ状態によってユーザーの状態を知らせることが可能。さらに、ユーザーは、左右は360度、上下は40度まで視界を自由に調整することも可能。そしてその視界の動きはロボットの動きにそのまま反映されるため、クリスチャン・マツェン氏の言う通り、ビデオアプリより円滑なコミュニケーションが実現できるだろう。
病によって日本で学校へ通学できない子供たちも、AV1を利用したいと考えるのではないだろうか。OriHimeなどとともに、このようなロボット活用が日本でもすすむことを期待したい。
分身ロボットがテレワークを革新する
PCやスマートフォンの小さな画面でしか展開されなかったテレワークが、分身ロボットによって「あたかもその場所にいるような」かたちで業務ができるようになる。
育児中の女性も難病の方も仕事で活躍できる「一億総活躍社会」を真に実現するためには、このような分身ロボットの活用が必要になってくるのではないだろうか
img: PR TIMES