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これまでの学校教育は画一的であり、受験のための勉強であると揶揄されることも多く、本来の意味で学問となりえているものは少ない。学校を卒業した後に待ち構えているビジネスの世界でも、テクノロジーの進化がものすごいスピードで進み、近い将来、多くの仕事はAIに取って代わられると言われている。
日本においては特にICT教育の分野で注目が集まることが多いが、はたして教育は特定の分野(プログラミングの必修化など)の導入や、アクティブラーニングのような教育手法の変更だけで、本来の課題の解決や社会に出た際の実学に結びつくものになるのだろうか。
2018年7月26日、SNS education株式会社(東京都港区 代表取締役:内藤賢司)は、堀江貴文を主宰者として、座学を目的とせず行動を目的とする新しい高校「ゼロ高等学院」を2018年10月1日に開校することを記者会見の場で発表した。
「ゼロ高等学院」は、「学校教育を壊す(ディスラプトし再構築する)」という堀江氏の発言をきっかけに、堀江氏主宰のもと、新しい学習形態を提供する株式会社が設立する高等学校として、既存の通信制高校と連携した教育を推進していくとしている。
対象者は“高校を卒業していない人限定”として、「選択肢があることを知ることができる 仲間と共に選択肢から選び、行動し、学び、成功するまで失敗できる」といった世界の実現を目指している。
机上の空論ではなく、行動のための選択肢と環境を提供
一番の特色は、実業家である堀江貴文氏の知見と、約1,500人を有するHIU(堀江貴文イノベーション大学校)と、様々な有識者、実業家のネットワークを活かしたプロジェクト活動への参加だ。生徒たちは、実際に宇宙ロケットの開発・発射等の活動、和牛の生産、販売、寿司職人になるための技術や経営、ファッションやエンジニアリングに関する体験等を、実際に現場や店舗にて経験し、第一線で活躍しているプロに学ぶことができるという。
その他にも、村づくりや全国にてシェアオフィスづくりなど、様々な分野が進行中であり、その活動の主催、参加が可能とのことだ。また、既存の高等学校と連携することで、様々な社会活動に参加しながら、通信制高校として高校卒業の資格も取得できる。
「自身の行動によってのみ自分が本当にやりたいもの、人生をかけて関わりたいものがみつかる」という考えのもと、机上の空論ではなく、実在の社会活動へ参加し、行動しながら学べる社会参画の場や課外活動の場など、多くの行動のための選択肢と環境を提供するとしている。
“多動力”を発揮して人材をプールする
2018年7月26日に行われた記者会見では、堀江貴文氏と「ビリギャル」の著者である坪田信貴氏、「インベスターZ」や「ドラゴン桜」の編集者であり、株式会社コルク代表取締役社長の佐渡島庸平氏が登壇し、「今後の教育」をテーマに語り合った。
話題は、堀江氏がなぜわずか半年の準備期間で「ゼロ高」を開校するに至ったか。
堀江氏(以下敬称略)「ぼくJリーグのアドバイザーもやってて、なぜJリーグのユースが盛り上がらないか考えてみたら、高校サッカーって同級生が応援に来るんですけど、Jリーグのユースは応援に来ない。客が来ないと盛り上がらないし、選手自身も盛り上がらない。じゃあもう高校から創っちゃえばいいじゃんっていう。高校生ならユースのチームで高校サッカーも出れるから。
そう思っていたら、FC琉球が高校創ったんですよね。これどうやって創ってるんですかって話したら、実は通信制の高校と提携してやってるんですって聞いて。俺、一からN高(運営:学校法人角川ドワンゴ学園)みたいにめちゃくちゃ面倒くさい手続きとかしないといけないのかなと思ってたから、なんだこんな方法あるんだと思って。
それからその方法をそのまま教えていただいて作らせていただいたんです。」
坪田「これってめちゃめちゃ大きなヒントだと思う。僕、教育業界にずっといるんですよ。そうしたら、学校の先生も塾の先生もそうなんですけど、『いつか俺学校つくりたい』って人、2万人くらい見てきたんですよ。当然学校の作り方なんてわからないし、めちゃくちゃお金かかると思っているし、いつ作るんですかって聞いたら、10年後、20年後、それが夢ですって人いっぱいいるんですよね。世の中変えたい、と。それおじいちゃんになっちゃうよって話じゃないですか。
ところが、堀江さんがなぜ半年でできたかというと、山程いろんな“多動力”を発揮して、いろんなイベントを開催したり、いろんな事やっているからいろんな人と出会うわけじゃないですか。そうしたら、そこが人材のある種ストックみたいになっていて、これやりたいってなったら、それどうしたらいんですかって。じゃあそれを真似ようみたいな。これって教育の基本中の基本で、それが体現されている。」
新しいことをするには、まずは行動すること。
行動していくことで人脈が増え、それが人材のプールとなって、あらゆる場面でヒントを得ることができる。世の中の多くは「それは堀江貴文だからできる」と言うだろう。しかし、なぜ堀江氏にそれができるのかというと、行動ベースでやってきた賜物なのだ。
あらゆる物事の構造を要素分解する
ここで、佐渡島氏もセッションへと参加。話題は、漫画の構造分析の話へ。
堀江:「今、漫画の構造を分析しているんです。漫画って文字と画像が一緒に入ってくるでしょ?コンピュータのCPUとGPUに例えるとわかりやすいんですけど、文字がCPUの方で、画像がGPU。それが同時に頭の中に入るんで、めちゃくちゃ効率がいいんですよ。理解力が高い人たち、時間を大事にしたい人たちの吸収メディアとして、世界的にメジャーになると思ってて、マーケットは急拡大すると思っている。
ただ、良い漫画を作れる人が少ないんですよね。良い漫画を作れる人ってなにができるかっていうと、絵コンテを作るのがうまい人だと思うんです。ただ、実は絵コンテを作るという部分が全く理論化されていない。」
佐渡島:「数年前に、『マンガ・カ・ケール(開発元:株式会社グランゼーラ)』というソフトが出たんですよ。そのソフトの中に、告白するシーンとか質問するシーンとか、さまざまなシーンごとにどんな構図が最適かというテンプレがあるんです。このソフトのように漫画のいろんなシーンのテンプレを作って、それの組み合わせと途中を自由にできるようにしていくと、うまくいくのではないかと思ってます。既存の漫画を機械に読ませて、どのような構図がこういう場合にいいのか、というのを整理していくと、出てくる気がするんですよ。そういった見方で漫画を読んだことがなかったけど、できそうだなって。」
今あるものの構造を分析し、要素分解することで、他の分野の要素と照らし合わせてヒントを得る。日常のありとあらゆる事象やものの中にも、多くのビジネスヒントは隠れているのだ。堀江氏の発想も、常に思考を続ける習慣と物事を俯瞰的に捉えることに起因しているのかもしれない。
行動したやつが一番強い
また堀江氏は、こうも語る。
「ゼロ高の中で講座を開きたい人も募集しています。俺の会社でインターンしていいよという人も。1カ月とか3日でもいいし、いろんなコースを生徒たちに用意したいんです。これからの時代必要なのは、座学でなく行動。行動したやつが一番強い。とりあえず行動力があるやつが一番得しているんですよ」
佐渡島氏いわく、経営者でも成功している人はプログラマーに多いという。プログラミングの“やってみて改善していく”という発想が大事なのだという。一から上手くいくことは少ない、どんなものもトライアンドエラーの積み重ねということなのだろう。
堀江:「僕たちも(高校の運営は)やったことないから、なにをやっていいのかわかんないけど、とりあえずやってみる。そして国・数・英などの一般教養は、ノウハウがある通信制の高校に委託していく。」
「ゼロ高」の制服も、ONE OK ROCKの衣装のデザイナーに特別にデザインを依頼したのだそうだ。しかも、発注したのは2カ月前。
変化が激しく、更にオープンソースで誰とでも情報を共有できる時代。構想を練りに練って、数年掛けてリリースしていく時代ではなくなってきている。
とにかく行動を重ね、そこで出会った人材をプールし、できないところは周りの協力を得て進めていく。特定の集団に身をおくのではなく、個人で活動できる時代だからこそ、行動しない事自体がむしろマイナスになるのだろう。
「ゼロ高」では、行動できる人材を輩出していくことを目指しているが、ゼロ高の活動や行動規範を“他人事”とは思わず、今この瞬間に一歩踏み出すことが重要なはずだ。
「自分にはそんな力ない・・・」と思う人もいるだろう。
しかし、それも行動してみた結果でなければ本来はその判断もつかないはずだ。そしてそのマインドセットでは、これからの時代に取り残されてしまう可能性が高い。
現在放映中の『サバイバルウェディング(日本テレビ、波瑠主演)』というドラマの3話で、雑誌の編集長を演じる伊勢谷友介が部下である波瑠に言う、こんなセリフがある。
「百聞は一見にしかず 百見は一考にしかず 百考は一行にしかず 百行は一果にしかず」
つまり、聞くよりも見て、見るよりも考え、考えるよりも行動を起こせということだ。そしてその行動ですらも結果を結ばなければ意味がない。
堀江氏の言うように、行動した者が一番強く、成果となるまでは何回でも行動し、トライアンドエラーを繰り返さなければそれは何もしないのと同じということだ。
まずは行動することで、そこから生まれる出会いやヒントがあるかもしれない。