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政府主導で進む「働き方改革」によって各企業の労働の在り方が問われている。
さらにその関連法案として2019年に施行予定の改正労働基準法により時間外労働の上限規制が設けられ、違反すると罰則が科せられるなど、企業の労務管理も対応を迫られている。
その動きをうけ、労務リスクを軽減する新しいサービスが登場し、注目を集めている。
企業の労務管理に朗報。労働時間のリスクを可視化する労務リスク管理サービス「ラクロー」β版公開
株式会社ソニックガーデンは労働時間についてのリンクを可視化し、速やかな問題点の発見と対処に役立つ労務リスク管理サービス「ラクロー」のベータ版を、2018年7月23日に公開した。ベータ版では、未払い残業や36協定違反のリスク(残業上限超過)について速やかな確認が可能だ。
ラクローβ版では、Googleの「G Suite」やマイクロソフト社の「Office365」といったツールのカレンダー・メール機能などのデータから労働時間を算出。従業員が勤怠管理ツールなどで申告した労働時間との差異を、未払い残業のリスクとして確認する。
またラクローβ版は、2018年6月末成立の改正労働基準法の新残業規制に対応。残業上限規制についての違反リスクを確認する機能を備える。
さらにラクローで注目すべきなのは問題発覚後に業務ログを調査するのでなく、日常的に業務ログの分析を行い、事前にリスクを可視化する点だ。ラクローでは1時間という短い時間で1年分のリスク分析ができるとのこと。これによってユーザーは、問題の確認や分析に手間をとられることなく、労務トラブルの予防に集中することが可能だ。
なおβ版では、無料のトライアルを行ってくれる企業を募集中だ。トライアル中にユーザーからあがったフィードバックをベースとして、サービスの改善・安定化を進める。正式版の公開は、2018年10月頃を予定しているとのこと。さらに弁護士や社会保険労務士などの専門家とディスカッションを重ね、機能改善を続ける予定だ。
これまでの労働時間管理の課題とは
従来から労働時間の管理においては、従業員の自己申告で記録される勤怠ツールのデータより、入退室やPCのログといった客観的なデータを使うのが望ましいとされてきた。自己申告のデータは、本人の意思で実際の労働時間と異なる記録が行われる可能性があるからだ。
しかし実際には、入退室やPCなどのログを用いた分析はハードルが高いことが多く、自己申告のデータに頼らざるを得ないことが多い。
一方、2019年4月以降に改正労働基準法の運用がはじまり、そこでは残業時間の上限が規制されている。万が一違反が確認された場合には、罰則が科される。そして厚生労働省のガイドラインでも、これら客観的なデータと従業員の申告を照らし合わせ大きな乖離が生じていないか確認するべきと案内されている。
違反の可能性があるリスクを早期に発見し対処するためにも、従業員の労働時間を適切に管理できる体制を整えるのは経営上の急務だ。
業務ログの活用が業務の生産性向上にも貢献
ラクローによる業務ログの分析は、労務リスクの予防だけでなく生産性の向上にも役立つ。業務ログの分析によって、従業員がどんな作業により多くの時間を費やしているのかが把握でき、生産性を改善するためのアクションにもつなげやすくなるからだ。
従業員にとっても業務ログの可視化はメリットがある。可視化により生産性を悪くする問題点がどこにあるのかわかりやすくなるうえに、仮に長時間労働が必要となった際に、その状況や原因を上司に報告するのが簡単になるためだ。
社員の労務管理をすべてアウトソースできるサービスも登場
コンプライアンスの順守や働き方改革などにより、企業の労務管理はより重要になっている一方で、中小企業・ベンチャー企業では人材不足などから人事部の設置が難しい場合も多い。そこで株式会社ミナジンでは「すべての会社に人事部」をコンセプトとして、社員の労務手続きをすべて代行する「社外人事部サービス」を2018年6月にリリースした。
社外人事部サービスでは、給与計算・保険手続を含め、社員の入退社・人事異動といったライフイベント発生時の労務手続きをすべて代行。さらに従業員への直接対応も行うトータルなアウトソースサービスとなっている。
労務管理に悩む中小企業・ベンチャー企業の強い味方になってくれるサービスといえるだろう。
業務ログを分析するツールや人事部のアウトソースが日本の労務リスクを軽減
ワークライフバランスなどの重要性が注目される中、企業の労務管理の改善は急務となっている。しかし実際には、業務ログを分析する手立てがなかったり、人材が不足していたりすることが原因でなかなか先に進まないのが現状ではないだろうか。
今回紹介した労務リスク管理サービス「ラクロー」や「社外人事部サービス」、こういったサービスが開発されていくこと自体が、企業の労務管理の救う切り札になっていくのだろう。
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