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人が夢を追う際、その多くが一度は将来のキャリアについて考えるだろう。アスリートやアーティストなど、特殊な才能で生計を立てることができるのは、ほんの一握りだ。このため、目標を叶えようとするかたわら、「就職」という選択肢を多くの人が持っているのではないだろうか。
これまでどれだけ多くの夢を追う人たちが、この「夢」と「就職」のジレンマについて悩んできたことだろうか。ところが、音楽に限ってだが、この二つの相反するものをマッチングしてくれるとしたら?
その可能性がみえるような音楽家を対象にした人材育成および人材紹介事業「STLIDE FOR MUSICIANS」を株式会社Luceが開始している。
音楽家として活動しながらも一般社会でも活躍できるスキルを
毎年約5,000人の音楽家が音楽学校(音大・大学院・専門学校)を卒業しているという。しかし、そのうち演奏を中心に活躍している人が3%、音楽活動のみで生計を立てている人は1%以下であると言われている。
その一方で、音楽家が音楽以外の手段で生計を立てようとした場合に、就職の手段や職業訓練を受けられる機会は非常に限られているという現状がある。
同社は、「光の道標を与える存在になる」をコンセプトとしており、単なる就労支援ではなく、能力を持ちながら市場ニーズに受け入れられず、将来のキャリアについて困っている人、または新たな領域にチャレンジしたい人に対し、各人が活躍するための育成支援や環境の提供を行っている。
そして、今回は、これまで「就労」という観点でフォーカスされることが少なかった音楽家に光を当てたという。卒業生は、当然ながら将来は音楽家として活躍することを目指す人がほとんどだ。
一方、音楽家として生活できるのか、将来の不安を抱える人は少なくない。同社は、音楽家としての活動を継続しながらも、一般社会で活躍できるスキルを習得する機会と、そのスキルを活かせる場の提供する。
職に就くことがゴールではなく、職業を通して自らを高め、それぞれが輝ける場所を見つけられるようにすることが、本質的な支援だと考えているという。
株式会社Luceによると、音楽家としての活動をしてきた人は、一般的に以下3つの特徴を持っているという。
- 類まれなる集中力
ときに365日1日10時間以上の練習をこなす彼らは、超人的な集中力を持っているという。 - 知的体育会系な風土
先生と生徒の関係性は、体育会系に見られるような、時に理不尽とも思われるレベルの徹底した師弟関係であるといえる。これにより、打たれ弱い傾向にあると言われる現代の若者と異なり、強靭な精神力を備えているとしている。 - 物怖じしない胆力
大勢の人前に出て演じることを職業としているため、プレッシャーに強く、自身に注目が集まることに慣れている。
これらの特徴を持つ卒業生に、同社の親会社であるコンサルティングファーム(株式会社ベルテクス・パートナーズ)によって作られた、2週間~最大2カ月のビジネススキル向上プログラムを受講してもらい、彼らの特徴をさらに磨いていく方針だ。
活躍の場がない音楽家をビジネスパーソンとして育成
「STLIDE FOR MUSICIANS」は、高いポテンシャルを持っているにも関わらず活躍の場が得られていない音楽家を、ビジネスパーソンとして育成した後に各企業に紹介する人材育成/人材紹介サービスだ。
「音楽家のポテンシャル」、「経営コンサルタントの知恵」、「活躍できる環境の提供」を掛け合わせた一連のサービスとなっている。
現役経営コンサルタントによって作られた、ビジネスに関する基礎知識から、論理的かつ円滑に業務を遂行するためのプログラムを用意している。このプログラムによって育成された音楽家は、持ち合わせた素養に加えて、即戦力として活躍するために不可欠なビジネススキルが備わる。
高いポテンシャルがある人材を同社が育成し、即戦力になるビジネスパーソンとして企業に紹介する。
今後は、オプションとしてITなど専門スキルに特化したプログラムを検討しているという。また、人材紹介業にとどまらず、人材労働派遣についても順次展開していく予定だ。
スポーツではアスリート活動を行う上での支援サービスも
一方、スポーツにおいては、今回のように就職ではなく、アスリート活動を行う上で支援してくれるクラウドファンディングや企業とマッチングさせるサービスもある。
たとえば、オンライン後援会の「athlete yell(アスリートエール)」は、スポーツ版のクラウドファンディングにより、マイナー競技選手、アマチュア選手、ブレイク前の選手など、アスリートの競技資金難やPRをサポートする、というビジネスを展開している。
また、プロサッカーリーグのイギリス・プレミアリーグに加盟し、ロンドンに本拠を置くアーセナルは、「Arsenal Innovation Lab」を立ち上げ、クラブのスポーツビジネスをテクノロジーによって変革するスタートアップの発掘を行っている。
さらに、Kプロデュース株式会社は、プロ・アマ問わず、スポーツに情熱を注ぎ、私たちに感動と勇気を与えてくれるアスリートを応援するサイトである「Find-FC(ファインドエフシー)」と、アスリートが選手価値を高めてスポンサー獲得するためのノウハウサイトとなる「アスカツ」をリリースしている。
「一芸に秀でたる者は多芸に通じる」を活かす
このような音楽、スポーツ、芸術などで成功するには才能に加え、「運」が必要になる。このため、多くの才能を持つ者たちが才能を発揮できず、あぶれてしまっている現状も事実だ。
しかし、「一芸に秀でたる者は多芸に通じる」という言葉があるとおり、ある分野で才能を持つもの(今回は音楽)は、その分野以外でも能力を発揮することが多いものだ。そこに目を付けた「STLIDE FOR MUSICIANS」は、まさに新しい観点の人材サービスと言える。
今回の音楽分野が成功し、他の分野にも広げていくことができれば、アーティストとしての道ではないが、人生の選択肢を増やしてくれる大切な一手となっていくかもしれない。
img:@Press , athlete yell