スポーツビジネスというと、まず思い浮かぶのは、試合開催による興行収入、企業広告によるスポンサー収入、映像コンテンツ販売などだろう。スポーツ選手から見ると、プロや実業団のメンバーとなり、その結果に対して報酬を受け取る、というのが多く見られる形だ。

これまでのスポーツビジネスは、一部の企業とスポーツ選手に閉じられていた感がある。しかし、スポーツを取り巻く環境の変化、新しいビジネスのあり方が生まれ、その姿をオープンなものにアップデートしようとしている。

スポーツビジネスのアップデートが始まる

スポーツを取り巻くビジネスの新しい動きを見てみよう。

オンライン後援会の「athlete yell(アスリートエール)」は、スポーツ版のクラウドファンディングにより、マイナー競技選手、アマチュア選手、ブレイク前の選手など、アスリートの競技資金難やPRをサポートする、というビジネスを展開。

選手は、アスリートとして登録することで、PRやコミュニケーションを行い、幅広い個人や企業から資金を得て、競技環境整備・競技力向上・遠征・大会出場の可能性を広げる。

スポンサーとなる個人のファンは、ネット上の決済で簡単に小口の出資ができ、アスリートからのメッセージやメールマガジンを受け取ったり、プレゼントやレッスンなど独自のスポンサーメリットを受けることができる。

スポンサー企業は、小口の出資でアスリートとのタイアップを行い、販売促進やPRが可能だ。アスリート応援によるCSR(企業の社会的責任)ブランディングの効果もある。

また、プロサッカーリーグのイギリス・プレミアリーグに加盟し、ロンドンに本拠を置くアーセナルは、「Arsenal Innovation Lab」を立ち上げ、クラブのスポーツビジネスをテクノロジーによって変革するスタートアップの発掘を行う。

英アーセナルがインキュベーションプログラムを開催、名門サッカーチームにもオープンイノベーションの波

「Arsenal Innovation Lab」がスタートアップに期待する変革の分野は、コンテンツにVR・ARを導入することによるファンのエンゲージメント向上、ファンのデータを分析によるオンライン広告プロダクトの開発、オンラインショップでスマートな商品提案を行う小売り展開などである。

アーセナルは、新たなテクノロジーの導入でビジネスを拡大し、スタートアップもまた、プロサッカーリーグという巨大な市場への参加が可能になる。

こうしたスポーツビジネスのアップデートの一環として、アスリートとスポンサー企業の新しい繋がりを実現するサービスが登場した。

プロ・アマ問わず、活動資金や企業の宣伝活動を支援するマッチングサービス誕生

2017年12月11日、Kプロデュース株式会社は、プロ・アマ問わず、スポーツに情熱を注ぎ、私たちに感動と勇気を与えてくれるアスリートを応援するサイトである「Find-FC(ファインドエフシー)」と、アスリートが選手価値を高めてスポンサー獲得するためのノウハウサイトとなる「アスカツ」のリリースを発表した。

アスリートがスポンサーを募集するサービスは多く存在するが、「Find-FC」の大きな特徴は、アスリートが資金援助をくれる企業に対して、企業の宣伝活動をすることを具体的な手段で示すことができる、という点だ。

施設・商品の利用レポートなど、SNSやブログでのスポンサー企業サービスの宣伝、社内イベントやスポーツフェアを盛り上げるゲスト役、イメージキャラクターとしての活動、などが想定されているようだ。

アスリート側も支援企業も、無料で募集ページを掲載することができ、スポンサーを見つけたいアスリート、そしてアスリートを応援したい企業の双方へ向けたサービスとなっている。

「アスカツ」は、活動資金が足りないためにスポーツ活動を継続できない、資金を稼ぐためのアルバイトで練習時間が取れない、スポーツを引退した後の生活への不安といった、アスリートが抱えるお金の問題を解決するためのノウハウサイトだ。

この2つのオンラインサービスにより、幅広いアスリートが抱える「活動資金」や「将来の不安」という問題を解消し、スポーツへの集中と、より高いパフォーマンスの実現を支援する。

スポーツビジネスは、プロ・アマ問わないアスリート、個人・企業の資金、スタートアップのテクノロジー、と幅広い参加者を巻き込む方向へと進んでいる。

スポーツビジネスのアップデートは多様なプレイヤーを巻き込む

スポーツは、ビジネスという観点で、企業・アスリートともに参加者が限られ、まだまだ発展途上といってもいい。

スポーツにおいては、自分の応援するチームや選手などと、そのサービスを享受するユーザーである「アスリート」と「ファン」の繋がりは普通のビジネスの消費者との繋がりよりも強いものがあり、さらなるビジネス展開の余地がひろがる。

オンラインサービスにより、アマチュア選手、マイナー競技の選手、ブレイク前の選手など、資金調達可能なアスリートの幅が広がった。クラウドファンディングは、個人の出資を手軽にする。

スタートアップは、スポーツビジネスに新たなテクノロジーを導入することができ、巨大マーケット参入への道がひらける。また、アスリートを応援することにより、PRやCSRブランディングを行うことも可能だ。

スポーツビジネスはアップデートを続け、多様なプレイヤーを巻き込みながら成長を続けていくことになるだろう。

img: @Press , Arsenal Innovation Lab