政府が掲げる「働き方改革」が話題になっているが、実行している企業はどのくらいあるだろうか。高齢化社会という問題を背負っている日本は、どのような働き方をしていけばいいか世界に学ぶ必要性があるかもしれない。

オンライン総合旅行サービス「エアトリ」を運営する株式会社エアトリは、10代~70代の男女849名を対象に「他国の働き方」に関する調査を実施した。

理想的で現実的なオランダの「時間貯蓄制度」

これは、海外で取り入れられている様々な「働き方」において、日本でも導入できそうな施策がないか、を聞いたアンケート調査である。

対象となった国と働き方は以下のとおりである。

  • ドイツ:労働時間の制限
    1日10時間を超える労働を法律で禁止
  • ベトナム:副業/ダブルワーク
    ベトナムでは複数の仕事を行うことが当たり前であり、過半数が兼業している。
  • タイ:子連れ出勤
    社会全体で子育てを行うという文化であり、子連れ出社も珍しくない。
  • ブラジル:バケーション休暇
    1年のうちに連続30日の有給を与えなければいけない。
  • アメリカ:フレキシブルワーク
    完全成果制。在宅勤務など働く場所や、労働時間も完全自由。
  • イギリス:圧縮労働時間制
    1日の労働時間を延ばす代わりに週の労働日数を少なくできる。
  • スウェーデン:親休暇法
    子供が8歳になるか基礎学校の第1学年を終了するまでに合計480日間を取得できる。
  • オランダ:時間貯蓄制度
    残業や休日出勤など所定外の労働時間を貯蓄し、後日有給休暇などに振り替えて利用できる。
  • フランス:日曜勤務
    日曜出勤で給与が平日の倍になるなど、高待遇となる。

その結果、「理想的な働き方」の1位はブラジルの「バケーション休暇」の14.3%だった。しかし、その一方で「実際に日本でも取り入れられそう」と答えた人は8.2%に留まった。

逆に「実際に日本でも取り入れられそう」な働き方の1位には「副業/ダブルワーク」(13.5%/ベトナムなど)となったが、「理想的な働き方」だと思う人は9.3%となり、いずれも理想と現実に乖離が出たとしている。

最も理想と現実の差が少なく、「理想的な働き方」だと答えた人が多かったのがオランダの「時間貯蓄制度」で理想が13.6%、現実が12.9%だった。

また、「子連れ出社」や「副業/ダブルワーク」、「日曜出勤」は「理想的な働き方」だと答える割合が低く、環境や時間などメリハリを持って働きたい人が多いこともわかったという。

「時間貯蓄制度」を「理想的」かつ「実際に日本でも取り入れられそう」と答えた人の意見は以下の通り。

「時間外労働は忙しいときはどうしても避けられない。日本は基本的に有給休暇も少ないし、目的を持ってプランすることによりメリットは大きいと思う。(50代男性)」

「一定期間に集中して仕事を行うことでパフォーマンスも上がり、後から有給休暇として活用できることでバランスも取りやすい。現状の企業でも代休などとして取り入れている企業もあり、導入ハードルが低い。(30代男性)」

働き方改革成功のカギは国・企業・個人の三位一体

また、「日本が『働き方改革』を成功させるために最も必要なことは何だと思いますか?」という質問に対し、最も回答が多かったのが「国(政府)からの強制力」(39.0%)、次いで「職場(企業)の自主性」(30.5%)、「一人一人の意識改革」(25.1%)となった。

「国(政府)からの強制力」と答えた人の多くは中小企業に勤めており、「人材が少なく、企業が自主的に改革を行なうことは難しそう」という意見が多く聞かれたという。

また、「職場(企業)の自主性」を挙げた人からは「国が改革を掲げても、現実的でない施策であることが多い」、「一人一人の意識改革」を挙げた人からは「これからは国や会社に期待するのではなく、個々が意志を持って動いていく時代」だという意見が多く聞かれた。

同社では、これらの意見から最も大切なのは、国・企業・個人が三位一体となって協力し合って行くことだと分析している。

「国(政府)からの強制力」が必要と答えた人の意見は以下の通り。

「都会にある企業は働き方改革や休暇など、変化が直ぐにみえるかもしれないが、僻地にある小さな会社や、人工生産性人工生産性と追い立てまくられている、少人数で会社を回せと追い立てられている会社の下々には、全く御縁が無い話だと思う。 どうせやるなら、逃げ道も作らないで、国でしっかり固めて、下々にも良い環境で働けるようにして欲しい。(30代女性)」

「とにかく子供が小さくても働きやすい環境であってほしい。あと、私は妊活中なので、もっと理解してほしい。(30代女性)」

また、「職場(企業)の自主性」が必要と答えた人の意見は以下の通り。

「大多数の人が望むことを実現するために、施策を実施して改革を行うことが重要で、現場が望まないことを強制する施策や国・政府の押し付けで行う施策では意味がないと思う。また、企業によって体力が異なるので、その分を補う視点を持たないと、中小零細企業を中心に人材不足に陥るリスクがある。(30代男性)」

「政府の行っているのは企業への忖度でしかない。働き方改革ではなく、人件費圧縮法となることが見えている。 将来に対してさらに不安が増すこととなりかねないです。本当の改革は、企業が自主性をもって取り組むことにより 生産性を向上させるとともに個人の負担を減らすものでなければ成功しないと思います。(50代男性)」

「一人一人の意識改革」が必要と答えた人の意見は以下の通り。

「そもそも働き方改革の本質が理解されていないように感じる。仕事の質を上げるよりも、単純に長時間労働の削減や有給休暇の取得に意識が行き過ぎ。成果も出ない(出せない)生産性も上がらない状況で、労働時間短縮、有休消化が進めば、確実に日本の国力は落ちる!(50代男性)」

「個々が自立して、自らが機会を作れるようになっていけば、自ずと働き方も多様化していくのではと思っています。政府、企業、個人の連携と努力を期待しています。(30代男性)」

このような実際のビジネスパーソンのコメントからは、企業側と働き手側の意識にズレがあるのがうかがえる。これについては、以前、AMPでも取り上げており、「働き方改革は「企業側」と「ビジネスパーソン側」で“ズレ”がある。実態調査から見えてくるものとは」を参照されたい。

日本人らしい理想の働き方「時間貯蓄制度」

日本人はチームワークや協調性を重んじるとよく言われる。それからすると、今回、オランダの「時間貯蓄制度」という周りに迷惑がかからなそうな制度が理想的で現実的とされたのは、いかにも日本人らしいと言えるだろう。

一方で、ブラジルの1年のうちに連続30日の有給を与えなければいけないという「バケーション休暇」が、理想のトップとなったことも見逃せない現実だろう。現実的ではないと思いつつも、やはり余裕を持ち、ワークライフバランスをしっかりと確保しつつ働くということへの期待があるのだろう。

img: @Press