ITの発達によりスポーツ界に革命が起きているのは言うまでもない。試合分析、技術の向上、体調管理の面など大きな恩恵を受けている。スポーツビジネスに世間が注目している中、“プレーヤー”ではなく“観戦者”をターゲットとした新たな取り組みが行われようとしている。

合同会社DMM.com、ベルギーの株式会社STVV、株式会社Candee、トランスコスモス株式会社の4社は、STVVが運営するサッカー ベルギー1部リーグシント=トロイデンVVにおいてスタジアムのICT化を目指した「Connected Stadium(コネクテッドスタジアム)事業」を開始すると発表した。

スマホ一つでチケット購入から飲食購入まで完結

Connected Stadium事業とは、スタジアム内の高速インターネット環境のもと、デジタル技術により、観戦チケット購入や駐車場の予約、スタジアムでのグッズ、飲食の購入などがスマートフォン一つで完結できるSTVV公式アプリの開発事業のこと。
これにより、スポーツ観戦の利便性を高め、試合前から試合終了後まで楽しむことができるコンテンツやサービスを提供する予定だ。さらに、スタジアムを起点に周辺地域やコミュニティの活性化にもつなげ、地域とともに発展を目指す方針だ。

各社の役割としては、まず、DMMは2017年11月にベルギー1部リーグSTVV(シント=トロイデンVV)を運営する株式会社STVV(本社:ベルギー シント=トロイデン)の経営権を取得した。これにより、STVVへのIT支援および開発リソースの提供やファシリテーションを担当し、Connected Stadium事業を推進する。

一方、STVVは、街とともに歩むクラブとして地域に活気をもたらし、日本とベルギーをつなぐ橋渡しになることを目指し、活動している。サッカークラブ運営によるノウハウの提供やコンテンツ導入後の現場運営を担当している。

Candeeは、海外スポーツ領域の動画マーケティング支援の実績をもとに、海外事例の市場調査、マーケティング活動を積極的に行い、Connected Stadium事業全体のマネジメント、STVV公式アプリのコンテンツ提案・支援を担当。同事業発足を機に、STVVのオフィシャルスポンサー契約も締結している。

トランスコスモスは、Connected Stadium事業第一弾であるSTVV公式アプリの開発および運用を支援する。また、子会社であるplayground株式会社が提供する電子チケット発券システム「QuickTicket」の導入や、スタジアムで利用するローカル通貨であるJetonのデジタル化、動画をはじめとするデジタルコンテンツの拡充と販売面の強化など、テクノロジーの導入コンサルティングから運用までをワンストップで提供していく。

スポーツとテクノロジーを融合した新しいビジネス

冒頭でも述べたが、ITの発達によりスポーツ界に革命が起きている。これは簡単にいうと、スポーツとテクノロジーを融合した新しいビジネスが登場してきているということだ。

具体例としては、「スマートスタジアム」がある。これは、近年、スポーツ・ライブなどのイベントで導入されているサービスだ。来場者と興行主が、スマートデバイスを介してつながることで、コンテンツやサービスをリアルタイムに受け取り、これまで以上にエキサイティングなイベント体験を実現しようとするものだ。

西武ライオンズとplaygroundが取り組む「チャットベースのスマートスタジアム化」は、LINEで電子チケットを発券することから始まる。複数枚チケットを購入した場合は、LINEを通じて同伴者にも渡すことも可能だ。

球団公式のLINE@アカウントから、「ご来場に対する“御礼”メッセージ」「試合情報や選手情報のアナウンス」「座席位置の情報」「キャンペーンに関するお得な情報」が届き、快適な観戦をサポートする。

利用の流れとしては、LINEで発券し、電子スタンプで入場。プレイ動画やプレイデータなどのデジタルコンテンツで、拡張されたイベント体験をユーザーに提供する。チャットで、クーポンや抽選、フードデリバリーなどの特別サービスを受ける。イベント終了後にはLINEを通じて体験をシェアする、といったイメージだ。

電子チケットを起点としたデータ活用も視野に入れる。電子チケット利用者の実来場者データを取得し、不正防止施策やマーケティング施策などに活かす。次世代の野球観戦体験の実現への有効なデータだ。

また、観戦の「スキマ時間」を利用し、スポーツと周辺ビジネスが融合した例もある。ニュージーランドのスタートアップ「DROPIT」が考えたのは「スタジアムにあるディスプレイ」と「ファンが持っているスマートフォン」を活用し、60秒間のライブオークションを開催するというアイデアだ。

これは、試合会場にいてアプリに登録している人なら誰でもオークションに参加できるというものだ。ただし最終的に商品を購入できるのは、会場にいるたったひとりの勝者だけ。一般的なオークションは設定価格から徐々に値段があがっていくが、DROPITのアプリでは時間の経過に伴って値段が下がる仕組みになっている。

待てば待つほど安くなるが、待ち過ぎれば誰かに先をこされてしまう。試合中のスキマ時間を一瞬でスリルと興奮を味わえるエンターテイメントに変えるという試みは興味深い。勝者のプロフィール画像は参加者のスマホとスタジアムのディスプレイに表示されるので、試合中に一足早く勝利の喜びとちょっとした優越感も味わえるのだ。

また、これらに加え、スポーツメディアにVRやARを導入して、スポーツの視聴体験を高める、というサービスも試みられている。イベント体験、放映方法、スポンサーシップなどさまざまなシーンで変革を起こしそうだ。

最も進んだ「スマートスタジアム」

スマホ一つで、チケットの購入だけではなく、グッズや飲食購入までできるとは、何とも便利な世の中になったものだ。

今回の「Connected Stadium事業」は、先ほど紹介した「スマートスタジアム」のカテゴリに入るが、中でも最も進んだサービスと言える。今回の発表では、事業開始時期は明らかにしていないが、まずはベルギーで始めるとのこと。ベルギーでどういった反響を呼び、いつ日本で展開されるのか、今後の展開に注目したい。

eye catch img:DMM.com