少し前まで、音楽はアーティストのCDを買って聞くという形態が普通だった。それが今ではAmazon MusicやApple Musicのようなサブスクリプションサービスにとって代わり、1つのアプリで様々なアーティストの音楽を楽しむことができるようになっている。

それに加え、ここ最近はシェアリングサービスの台頭によって、さまざまなものやことの使い方、活かし方のリプレイスがされている。民泊によって個人の住まいが宿泊施設に代わり、カーシェアによって個人所有の自動車がレンタカーのようになった。

このような動きは日本の文化である「カラオケ」の業界でも進んでいるようだ。

サブスクリプションの波はカラオケにも

カラオケは、元はその字のごとくカラオケをする場所だった。しかし、カラオケという概念を取り払った場合、そこは1つの個室であり、実に様々な用途で使用できる可能性が秘められている。仕事の合間、楽器の練習室、ママ友の集まり、趣味の仲間とのオフ会など、実はそこには大きなニーズが隠されていた。

またカラオケには、特性上夕方から深夜までの時間帯が売り上げの多くを占め、平日や昼の時間帯での売り上げることが難しいという状況があった。運営事業者側からすると、アイドルタイムを含めた全時間帯での稼働率アップは至上命題だ。

そこで、空室状態にあるルームとニーズを持つユーザーとをマッチングさせ、新たな売上創出をはかろうという動きが出てきた。

バンダイナムコグループの株式会社VIBEは、カラオケルームを利用したサブスクリプションサービス『HEYAPASS(ヘヤパス)』を展開している。そのシステムは、複数のカラオケルームをネットで事前予約し、定額制によって何度も利用可能というものだ。

4月1日にはリニューアルも行われ、利用可能な店舗に株式会社B&Vの運営する「カラオケ館」全店舗が追加された。また今まで以上にサービスを気軽に利用できる、月額500円で月に3回利用可能なライトプランも提供していくという。

現状はカラオケルームを利用したサービスとなっているが、将来的には全国各地にある様々な業態の「部屋(ルーム)」を確保し、ユーザーニーズとのマッチングを促進することで、快適な個人スペースを早出していく狙いだ。それによって提携店舗への新たな売上収益基盤の構築を実現させたいという。

『HEYAPASS』サービス概要は下記の通り。

クリエイターのためのプラットフォームWeWork

形は異なるが、今回のようにスペースを活用したビジネスで有名なのはAdam NeumannとMiguel McKelveyによって設立されたWeWorkだろう。WeWorkは「働く」をサポートするこワーキングスペース事業者だけではなく、生きることそのものをサポートする企業に進化しつつあり、現在では世界15カ国49都市に155カ所以上のスペース、13万人以上のメンバーという状況まで達している。

入居しているのは、起業家やスタートアップ企業、フリーランスなどを中心に、Fortune 500の企業の10%以上がWeWorkのメンバーとして登録しているという。そのむく的としては、他企業とのコラボレーションやイノベーション創出があげられる。

そのコワーキングスペース内では様々なイベントが開催され、コラボレーションやイノベーションが生まれやすい入居者同士の交流を作る仕掛けがなされている。“つながり”を生むためのパーティーやセミナーを開催することで、WeWorkのコミュニティとしての価値を高めていく狙いだ。

働くことと暮らすことの境目は曖昧になってきている。だからこそ、サービス提供側も、その前提に立って価値を生み出していかなければならないということがWeWorkでは実現されている。

モノやコトのアップデートでの価値創出

イノベーションと聞くと、何か今までにない全く新しいものを生み出すことと捉えがちではないだろうか。もちろん、それもイノベーションであり、実現すれば素晴らしいことであるに間違いない。

しかし、既存のモノやコトを「掛け合わせる」ことで生まれるもの、「見方を変える」ことで生まれるものなども、ユーザー体験や価値をアップデートさせることができればイノベーションと呼べるものになるだろう。

サブスクリプションサービスやシェアリングサービスは、まさにそのモデルだ。今後も生まれてくるであろうこういった形態の様々なサービスが私たちの生活やビジネスシーンを豊かにしてくれることを期待したい。

img: PR TIMES