自分が一度購入した商品を他人に売却する場所としては、フリーマーケットと呼ばれる古物市がある。ご存知の通り、公園や駐車場などの広い場所に、たくさんの個人が商品を並べ、集まったお客さんに買ってもらうというイベントだ。

こうした個人間(CtoC)による物品の売買が行われる市場は、二次流通市場と呼ばれる。シェアリングエコノミーのはしりといえるだろう。

インターネットが普及してからは「ヤフオク!」に代表される、ネットオークションが利用されるようになる。売り手ユーザーが出品する商品の写真や説明をアップし、買い手ユーザーがオークション形式で値を決めるといった方式だ。

スマートフォンは、二次流通市場への参加をさらに容易にした。2013年に登場した「メルカリ」などのフリマアプリは、若い年齢層の女性にも受け入れられ、市場を広げた。

ただ、フリマアプリを利用した場合でも見栄えの良い写真をアップし、買い手の心に響く説明文を書き込み、売れ残らないような価格を設定し、買い手からの質問に答え、梱包もする、といったことに負担を感じるユーザーも多かった。それは「フリマアプリ疲れ」とも呼ばれる。

そして今、フリマアプリの次として、即時買い取りアプリが登場している。

「CASH」で即時買取を体験

「CASH」は対象アイテムの写真を撮るだけで、すぐにキャッシュを受け取ることができる、スマホアプリだ。対象商品は、ファッションアイテムと、ガジェット。ユーザーは、2週間以内にアイテムを送る。

CASH(キャッシュ)アプリは、iOSとAndroidに対応している。ダウンロードしてアプリを開き、キャッシュにしたいアイテムのブランド、カテゴリ、コンディションを選択し、撮影する。すぐに査定額が表示されるので、「今すぐキャッシュにする」を選択すれば現金化することができる。後は、宅配業者の集荷を待つだけだ。買取価格には1,000円から20,000円という下限と上限が設定されている。

「CASH」は、2017年6月に、社員6人のスタートアップである株式会社バンクによってリリースされた。リリース直後に、利用者の数が想定を超え、16時間で一旦サービスを停止するほどの人気になった。そしてそれは、スタートアップの資金力の限界を示すものでもあった。即時買取サービスには、膨大なユーザー数に見合った買い取り資金も必要だということを示す事例だった。

そして「CASH」は、2017年11月にDMM.comが、70億円で買収することになる。スタートアップの買収が盛んなDMM.comの傘下に入ることで、安定的なサービスの提供が可能になった。

また、同様の即時買い取りアプリとして「メルカリNOW(ナウ)」がある。フリマアプリの「メルカリ」内に、即時買い取り機能として「メルカリNOW」が表示される。

「メルカリNOW(ナウ)」には「CASH」とはいくつかの点で違いがある。「CASH」が買い取った商品は、オークファンなど外部の業者を通じて販売され、ユーザーは現金を受け取る。現金の引き出しには、手数料が必要だ。

一方、「メルカリNOW」が買い取った商品の代金は、アプリ内通貨の「メルカリポイント」に変換し、フリマアプリでの購入に当てることができる。フリマアプリとの連携が強みといえるだろう。

「CASH」も、「メルカリNOW」との差別化を狙って、さまざまな機能を追加している。

「CASH」新たに、外貨、金券・商品券の買取を開始

2018年2月20日、株式会社バンクは「CASH」での買い取りアイテムとして、新たに外貨、金券・商品券のカテゴリを追加したことを発表した。

「CASH」は、自分が保有するあらゆるアイテムを瞬間的にキャッシュに変えることができるアプリ。これまでに、約8,000種類以上のブランド・アイテムを買取対象としてきた。サービス開始から、買い取りアイテムのカテゴリが追加されるのは初めてとなる。これからも、カテゴリの追加が期待できそうだ。

今回追加されたのは、外貨、金券・商品券のカテゴリ。海外旅行から帰ってきたときに、少額の外貨が手元に残ることがある。外貨のカテゴリは、こうした少額外貨の換金ニーズに答えるものだ。

金券や商品券なども、使う機会がないまま、タンスにしまわれることが多い。買い取りの店舗を探すこと無く、自宅で手軽に現金化してもらおうという狙いだ。扱うのは、外貨紙幣・コイン11種類、金券・商品券40種類からで、今後増やす予定だという。

さらに、上限額の20,000円を超える商品の買い取りをする機能も追加されている。

「あとでCASH」により高額商品の取扱も可能に

2018年2月14日には、「あとでCASH」の機能が追加され、高額なアイテムの買取りが可能になっている。

これまでの「CASH」の即時買取りでは、アイテムの発送前に現金を手にする代わりに、上限額が20,000円に決まっていた。新たに加わった「あとでCASH」では、先にアイテムを発送し、到着後約1週間の審査期間という待ち時間があるが、より高額のアイテムを買い取ってもらえる。スマホの買い取りから始まり、他のカテゴリへ展開する予定だという。

通常のフリマアプリのユーザーを取り込もう、という狙いがあると考えられる。

また「CASH」は「性善説」をとることで、ユーザーが商品を発送するよりも早く、現金を振り込んでいるが、そこに存在するリスクを保証しようという企業もあらわれている。

FinTech分野等のリスクを保証する専門会社「Gardia(ガルディア)」は、2017年12月から、即時買取の「CASH」への保証サービスの提供を開始している。考えられるリスクとしては、ユーザーの不正利用や、債務不履行などが挙げられている。新規性が極めて高い事業のリスクを引き受け、新しいイノベーションを起こす一翼を担おうという考えだ。

即時買取ビジネスの周辺にも、さまざまなチャンスが存在するようだ。

アプリの機能充実が二次流通市場を拡大していく

今、新しい経済のあり方として「シェアリングエコノミー」が拡大している。ルームシェア、ライドシェア、リソースのシェア、そして各種フリマなどを利用したモノのシェアなどだ。

ネットやスマホの普及で、「個人間でのモノの貸し借り」や「個人間でのモノの売買」が盛んになり、価格の低下や循環型経済の実現などのメリットが生じている。

「シェアリングエコノミー」への参加者を増やし、メリットを活かしていくためには、「CASH」の即時買い取りに見られるような、手間を「極限」まで簡単にする、という考えが必要なのかもしれない。

img: CASH , PR TIMES