クイズミリオネアのTV番組を見ながら、自分が出場したとしたら、どんな風に答えてどう振る舞うか、一度は考えたことがあるのではないだろうか。

いまアメリカを中心に英語圏で、1日2回、誰でもクイズ・ミリオネアに参加できるライブ配信のトリビアゲーム「HQ Trivia(HQトリビア)」が爆発的に流行している。

1日2回、世界中から100万人以上が同時参加するモンスターアプリ

HQ Triviaは今は亡き動画共有アプリVineの共同創業者であるColin Kroll氏とRus Yusupov氏が立ち上げた無料のクイズアプリだ。アメリカ東海岸時間の毎日午後3時と午後9時から約15分間、12〜15問のクイズをライブで出題。

クイズに全問正解したユーザーには賞金が与えられる。賞金の総額は事前に決まっており、勝ち残ったユーザーで平等に賞金を分け合う。

みのもんたが「ファイナルアンサー?」と迫る「クイズ$ミリオネア」を、スマートフォンを使って世界中のユーザーと同時プレイするようなイメージを持ってもらえば、わかりやすい。出題されたクイズは10秒以内に回答しなければいけないので、ググったり、チートをしている余裕はない。

今年1月22日の配信時には、世界中から160万人がライブ配信に同時参加し、見事15問のクイズに全て正解した7名が、1万5000ドル(約164万円)の優勝賞金を分け合った。

私も参加してみたが、言語の壁以上にクイズの中身がさっぱりわからなかった。第一問はまぐれで正解したが、第二問であえなく敗退、クイズを見守るだけとなる。

2017年10月にリリースされたばかりだが、その4ヶ月後の2018年1月には160万人がゲームに参加した。驚異的なユーザー数の広がりだ。

2017年5月にAbemaTVで放送された『亀田興毅に勝ったら1000万円』企画のYouTube Live配信の同時視聴者数は70万人と言われており、この数字は驚きとともに迎え入れられた。1日2回の15分間のクイズ配信に100万以上のユーザーが同時参加している(かつ、参加者数は日に日に増えている)のは、驚異的な現象だ。

その時間帯しか参加できないというプレミア感がユーザーを引きつける

これまでもクイズ系のアプリは存在していた。だが、HQ Triviaがここまで大流行しているのはなぜだろうか。

ひとつは、その時しか参加できないというプレミア感だ。HQ Triviaはアメリカ東海岸時間の毎日午後3時と午後9時しかプレイできず、それ以外の時間にアプリを立ち上げても何一つやることがない。

配信時間が迫ると(通知をオンにしていれば)「そろそろ始まるよ!」と通知が来る。1日2回のたった15分間のチャンスを逃すまいと、ユーザーは待ってましたとばかりにスマートフォンにかじりつく。

DIGIDAY』によれば、アメリカの広告エージェンシー勤務の人々は、配信時間になると誰かのスマートフォンを中心に集まり、このゲームを同僚たちとプレイすることが日常になっているという。HQ Triviaは会議や仕事を遮るものではなく、むしろチームビルディングの素晴らしいエクササイズだと見なされている、と書かれているから驚きだ。

見事最後まで勝ち残り、(たったの)11.3ドルを手にした女性の様子を撮影した動画を見ると、オーバーリアクションであることを差し引いても、いかにユーザーがこのHQ Triviaの虜になっているかがわかるだろう。

2つ目の理由は、一番人気のクイズホストであるScott Rogowsky氏の存在だ。クイズホストとは、クイズミリオネアにおけるみのもんたのようなポジションだ。Scott氏はダークスーツ姿に細いネクタイを締め、妙にハイテンションで、テンポ良くクイズを進めていく。

例えゲーム中に不具合が起きても、巧みな話術でうまくこなしていく。現在Scott氏の他に2名ほどクイズホストがいるが、Scott氏は午後9時の回に登場する。その回が一番多くの人を集め、彼は一躍セレブリティとなった。

賞金を受け取るまでの体験もよく設計されている。1回あたりの賞金は勝者の数に応じて異なるが、10ドル程度の時もあれば、2000ドルの時もある。賞金はpaypalを通じて口座に入金される。ただし、賞金は20ドルに達さなければ引き出すことはできない。

HQ Triviaの今後の展開は?

HQを運営するIntermedia Labsは、様々なベンチャーキャピタルから出資を受け、現在の企業価値は約1億ドルと言われている。今後マネタイズ手段のひとつとして、広告表示を検討しているという。

HQ Triviaは、配信するたびにユーザーを増やし「まるでウイルスのよう」に広がり、参加者を興奮のるつぼに誘い込む。そんなライブトリビアゲーム領域を虎視眈々と狙う企業も存在する。匿名チャットアプリYik Yakの元エンジニアは「The Q」という類似サービスをリリースしている。

ここ日本でも多くの類似サービスが登場した。2017年12月、台湾発のライブ配信サービス「17 Live」がクイズゲーム「17Q」を配信開始した。HQ Trivia同様、「17Q」も1日に2回配信されるリアルタイムの参加型クイズゲームで、全問正解すると賞金を獲得できる。現在では2万人のユーザーが参加しているとのこと。

他にもスマホで実況配信ができるサービスMirrativが全問正解すると1500円の賞金がもらえる、参加型クイズ配信「ミラティブQ」をリリースした。これらのサービスはHQ Triviaの流行に追随していると思われる。

HQ Triviaのように中毒的な「キラーコンテンツ」の大流行も後押しをしながら、スマートフォンを中心としたライブ配信がより若い世代を中心に浸透していくだろう。

img : HQ Trivia