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AIというワードを聞かない日はないほど、私たちの生活のなかにAIは入り込んでいる。あなたが持っているスマホにもおそらく搭載されているし、自動掃除ロボットや、モビリティにおいてもAIとの融合は進んでいる。
それは一見AIとの乖離がありそうな不動産業界でも同じことで、不動産テックと呼ばれる不動産業界のテクノロジーが進化している。
今回ご紹介するのは株式会社レオパレス21の事例だ。同社は、AI inside株式会社と共同で、AI insideの持つAI「Neural X」 を活用した、賃料設定の意思決定のサポートおよび物件運用の最適化を図る賃料査定システムを開発、2月1日より導入を開始した。
このシステムの導入により、全国の管理物件(約57万戸)における1部屋ごとの賃料を機械的に算出することが可能となるという。なお、全国の物件を対象とするAIを活用した賃料査定システムの導入は、不動産業界では初の取り組みとなる。
独自の強みを反映した価格の算出が可能に
このシステムは、管理物件の賃料査定において、これまでレオパレス21が蓄積してきた賃料設定データに加え、基礎情報、立地条件や周辺情報、その他外部要因などの大量なデータを、ディープラーニング(深層学習)技術を用いて学習する。
これにより、本来持つ価値やレオパレス21独自の強みを反映した価格の算出が可能となるという。
物件査定システムの導入により以下の3つの効果が見込める。
- 賃料の適正化
- 賃料設定の戦略的な展開
契約実績やその他外部要因を分析・学習することで、物件の市場での値動きを予測することが可能となる。このことから、賃料設定をより戦略的に展開することを目指す。 - 顧客サービスの向上、社員のワークライフバランスの向上、コスト削減
賃料設定するために今まで人が作業をしていた情報収集などの業務が自動化されることで、業務軽減によるコスト削減が見込める。併せて、軽減された業務時間をさらなる顧客サービスの向上に振り分けることが可能となるほか、社員のワークライフバランスが向上する。
物件本来の価値に基づいた価格を機械的に算出することで賃料の適正化が可能となる。これにより入居者様へ適正で透明性の高い賃料での物件提供を実現する。
続々と登場する不動産Techサービス。産学連携の動きも
ここで、各社の不動産Techの取り組みをみていこう。
ソニー不動産は「不動産価格推定エンジン」を2015年に開始した。これは、ソニーと共同開発した機械学習ソリューションだ。1都3県の中古マンションの推定成約価格を算出することができ、常に最新のデータを自動で学習している。
また、ネクストは「HOME’Sプライスマップ」を提供している。このサービスは賃貸検索サイト「HOME’S」を運営するライフルホームズが蓄積してきた物件情報と、独自開発の不動産参考価格算出システムを使って、マップ上でマンション参考価格が簡単に調べられる。
さらに、リーウェイズが提供する不動産の本質的な価値を推定する不動産投資シミュレーター「Gate.」や、ケイアイスター不動産のマホ携帯電話を利用して、セルフで内覧できるサービス「スマート内覧」など多くのサービスが登場している。
一方、GA technologies と首都大学東京が、AIの機械学習を活用した物件レコメンドシステム導入により、リノベーション業務における物件提案までの時間(中古不動産仕入れ業務のスピード)を最大55%まで削減することに成功するなど、産学連携の動きも見逃せない。
AIが労働人口の減少をカバー
少子化による労働人口の減少が懸念されている。そこで期待されているのが、AIによる業務の効率化やコスト削減だ。
このように不動産業界でもすでに多くの取り組みが進められている。レオパレス21では、導入後もディープラーニングを継続することで、価格変動や需要予測を加味した賃料査定と、精度のさらなる向上を目指すという。今後の展開に期待したい。
img : PR TIMES