アメリカのみならず世界を代表するLCCと言われ、各国のLCCがそのビジネスモデルを参考としている「サウスウエスト航空」。

1967年に設立、1971年にわずか3機のボーイング737で運航を開始。「従業員第一、顧客第二」というユニークな経営方針を掲げ、1973年以来黒字運営を続ける同社だが、音楽を軸としたこれまたユニークなサービス「Southwest.fm」を展開しているのはご存知だろうか。

ローカルの音楽シーンを盛り上げ、フライト中の機内も盛り上げる

「Southwest.fm」はいくつかの企画の集合体だ。

サウスウエスト航空の地元であるアメリカ南西部のアーティストや楽器メーカーなどを含む音楽シーンを取り上げる「Southwest Music Scene」、アーティストがフライト中の機内(3万5千フィートの上空!)でライブする「Live at 35」、アメリカ各地のアーティストを紹介する「Destination: Red Rocks」は、いずれもサウスウエスト航空の出自や、数多くの音楽イベントにスポンサードしてきた経緯を活かした企画である。

中でもユニークなのは「Live at 35」。アーティストはフライト中の機内でのライブのみならず、空港で演奏を行ったり乗客との記念撮影などのコミュニケーションをしており、その様子は「Southwest.fm」上でもビデオ配信されている。

ここ日本においても遅延したフライトの機内で、たまたま乗り合わせた歌手の松山千春氏がパフォーマンスを行ったというニュースも記憶に新しいが、退屈しがちな時間を彩るエンターテインメントとして、音楽の生演奏は嬉しいひと時かもしれない。

企業の利益とCSR活動を両立した「Southwest.fm」

航空運賃と安全性、サービス品質のバランスで評価されるLCC。ともすれば価格競争だけで選ばれがちで、コモディティ化しやすい同分野において、サウスウエスト航空は音楽で差別化を図っているのだろうか?

この「Southwest.fm」を理由に次のフライトにサウスウエスト航空を指名するユーザーは決して多くはないだろう。しかし、音楽フェスや音楽学校の運営にも乗り出すレッドブルや、音楽を活用したキャンペーン展開をよく行うハイネケンの戦略からも、音楽分野との積極的交流は企業のイメージ作りに一定の効果をもたらすものと評価されていると予想される。

競合の航空会社との差別化のためのイメージ戦略として、そして企業がその社会的責任を果たすCSR活動として地域の音楽文化をサポートする「Southwest.fm」は、地方の魅力を提示し、旅行を促すコンテンツになっている。そのことからも、サウスウエスト航空にとっては、いずれ自身のビジネスに実利として返ってくるであろうサービスと言えるはずだ。

これは顧客を引きつける施策としても、そしてCSR活動としても、一つの理想的な形なのかもしれない。

img : southwest.fm