11社目: 体験型アクティビティのプラットフォーム「Trip4real」(2016年9月)

Trip4realは現地の人が企画したツアーやアクティビティを予約できるC2Cのプラットフォーム。2016年9月の買収時点で約4万のユーザーを抱え、1万以上のアクティビティが掲載されていた。報道では買収額は500万ドル〜1,000万ドルほどだと言われている。

Airbnbでは2016年6月からTrip4realのコンセプトに似た「シティホスト」プログラムのテスト版をリリースするなど、宿泊以外の旅行領域にも事業を広げようと目論んでいたフェーズだった。その構想は同年11月に「トリップ」として正式に公開され、Trip4realやシティホストのコンセプトは「Experiences」に継承されている。

12社目 : 富裕層向けAirbnb「Luxury Retreats」(2017年2月)

Luxury Retreatsは高級な別荘や住宅をシェアする富裕層向けのAirbnbだ。買収時点で世界100カ所に4,000件以上の物件を所有しており、コンシェルジュサービスなどと合わせることで何年も黒字を達成していた。それ以前の買収に比べると金額も高く、約3億ドル相当になると報道されている。

Airbnbに買収された後もサービスが継続している唯一の事例で、Luxury Retreatsの物件はAirbnbにも掲載されている。Airbnbで予約できる物件のバラエティ拡大に寄与しているかたちだ。

13社目 : マイクロ決済「Tilt」(2017年2月)

日本でも個人間で気軽に決済や送金できるアプリが話題になっているが、Tiltはその草分け的な存在だ。個人間に加えてグループで利用ができ、複数人に対する請求書の発行から集金までをオンライン上でスムーズに行えることが特徴。過去に6210万ドルを調達しており、買収金額は非公開ながら6億ドルを超えるという報道もあった。

Tiltのサービスは6月で終了していることから、人材採用を目的とした買収である可能性が高い。Tiltのサイトでは「ソーシャルペイメントの経験をAirbnbのエコシステムに組み込んでいく」と書かれている。

14社目 : デベロッパー向けの開発環境を手がける「Deco Software」(2017年5月)

Deco Softwareはモバイルアプリの開発者の負担を減らすことを目的に、React Native用の統合開発環境を開発するスタートアップ。買収前からAirbnbの開発パートナーを務めていた。

2017年5月にチームメンバー5人全員がAirbnbに移る形で買収が完了していることからも、目的は人材採用だといえるだろう。Deco Softwareが開発していたDeco IDEはAirbnbには引き継がず、現在フリーのオープンソースとして提供されている。

15社目 : 身元調査サービス「Trooly」(2017年6月)

Troolyはデータ分析力を強みとしたスタートアップで、公共のデータやソーシャルメディアの情報を解析した結果を様々な企業に提供している。Airbnbも2015年からTroolyと連携し、ユーザーがAirbnbの外で取引する行為など違反行為のチェックを行ってきた。

Troolyを社内に取り込むことで、不正利用をなくし健全なプラットフォームを構築することを目指しているのだろう。

Airbnbの成長に影で貢献した買収企業

買収した15社を見ると富裕層向けのLuxury Retreatsを含めても同業は3社しかなく、大半がAirbnbのサービスには関係のないものだ。実際ほとんどのサービスが買収後に閉鎖されている。一方で「Acqui-hire」と呼ばれる採用を目的とした買収が目立つ。

サービスを眺めているだけでは分かりづらいが、Airbnbは裏側の技術力に強みを持つテクノロジー企業だ。Airbnbのコアとなる決済やレビュー、本人確認システムを始め、様々なツールを独自で開発している。

3人の共同創業者のうち2人がデザイナーということもあり、Airbnbでは当初からプロダクトの設計や使い勝手にはこだわってきた。そのこだわりが同様のツールが存在する中でもAirbnbが飛び抜けた存在になったひとつの要因であり、その裏には買収した企業の人員を含めAirbnbを裏で支える技術者がいたからであろう。

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