各自動車メーカーが注力する「自動運転」テクノロジー。多くが2020年以降にレベル4以上の自動運転レベルを達成する計画を明らかにしており、それに向けた開発・投資が加速している。

自動運転に関していえばドローンも同じような状況下にあるといえる。現在、パイロットが操縦しているドローンだが、今後数年でパイロットなしの自律飛行が主流になる見通しが少しずつ見えてきたのだ。

今回はドローンの自律飛行テクノロジーを開発する米スタートアップ「SKYDIO」に注目してみたい。自律飛行精度はどれほどのものなのか、どのような分野に応用できるのか、ゲームチェンジャーとなる可能性を秘めるSKYDIOドローンのポテンシャルを紹介したい。

MIT出身エンジニアが立ち上げた「自律飛行ドローン」スタートアップ

ドローンが社会に広く普及するために超えなくてはならない重要課題の1つは「衝突による墜落」を最小限に抑えることだろう。これはひとが操縦する限りついてまわる問題だが、人工知能を導入することで大幅に改善できる可能性がある。

米拠点の「SKYDIO」は、人工知能を活用したドローンの自律飛行技術開発に特化したスタートアップだ。マサチューセッツ工科大学(MIT)出身の3人のエンジニアが2014年に立ち上げた。共同創業者でCEOのアダム・ブライ氏は、グーグルのドローンプロジェクト「Project Wing」に携わった経験を持つ。

SKYDIOの自律飛行技術は投資家からの評価が高く、2017年8月にはシリーズB資金調達で約4000万ドル(約48億円)を調達したと報じられている。

これまでの記事で何度かお伝えしているように、黎明期のドローン市場には多くのプレーヤーが参入し、それぞれが市況に合わせて事業形態や方向性を修正・変更しており、現在はある程度期待値が調整された段階となっている。

ドローンで現実的に何ができるのかということが明らかになってきており、各プレーヤーの動きも地に足の着いたものになっている状況といえる。

CB Insightsによれば、2015年ベンチャーキャピタルからドローン企業に投資された総額は4億7900万ドル(約570億円)と前年比で1億4900万ドル(約180億円)増となった一方で、2016年の総額は4億5200万ドル(約540億円)と前年比で2700万ドル(約32億円)減となっている。

これはドローン市場への期待値が調整された動きとも見て取れる。このような状況下で資金調達を成功させたSKYDIOへの期待はかなり現実的なものであると考えられる。

ここまでできる、SKYDIO自律飛行ドローンの実力


SKYDIO固定翼自律飛行ドローン

SKYDIOはこれまでにいくつかのプロトタイプドローンの映像を公開しているが、プロトタイプでもかなりの精度であることが分かる。周囲の障害物にぶつかることなく、自律的に対象物をトラックキングしている。

人工知能技術の1つディープラーニングが活用されており、背景画像とトラックキング対象を見分けるといったプロセスがソフトウェア上で実行されている。現時点でも市場にはトラックキング機能を持つドローンは存在するが、SKYDIOのドローンほど高精度かつ機敏に動くことはできないだろう。

SKYDIOは、自律飛行ドローンをコンシューマ向けに展開する計画であるが、自律飛行技術のライセンス販売などの可能性もあるといわれている。SKYDIOドローンの販売は2017年中に開始されるといわれているが、現時点では明確な販売日は明らかになっていない。

SKYDIOドローンが見せるような高精度な自律飛行が可能になると、どのようなことができるようになるのだろうか。

コンシューマ向けドローンで注目される活用分野の1つにセルフィーがある。スナップチャット運営のスナップ社が中国セルフィードローン企業の買収に向けて交渉していることが報じられるなど、大手が注目する分野といえる。

これまでにもいくつかのセルフィードローンが市場に登場しているが、それらはスマホなどで操縦する必要があり自律飛行はできない。


SKYDIOクアッドタイプ自律飛行ドローン

SKYDIOプロトタイプドローンの映像が示すように、マウンテンバイクやランニングなど動きのあるシーンでのセルフィーが可能になることは容易に想像できる。サーフィンやマウンテンバイクなど、スポーツ関連のドローン空撮映像はYouTubeなどの動画投稿サイトで増えているが、動きの激しい対象物をドローン空撮するには相応の操縦技術が求められる。

手軽に空撮できるようになるのであれば、スポーツ分野の映像コンテンツが増え関連市場にインパクトを与えるかもしれない。

コンシューマ向けだけでなく、産業用途でも幅広い応用が考えられる。これまで紹介してきたような建設現場や大型施設での活用を考えてみると、自律飛行ドローンが狭い場所に入り込みこれまで外からの操縦では難しかったところの点検ができるようになる可能性も十分に有り得るだろう。「自律飛行ドローン」の登場で市場はどう変わっていくのか、今後が楽しみだ。

img: photAC