世の中には「空飛ぶドローン」以外に、「水中ドローン」や「水空両用ドローン」などさまざまなドローンが存在する。いったいどのような姿で、どのように活用されるのだろうか。今回は水空両用ドローン・水中ドローンにフォーカスを当ててみたい。
水中も空も、水空両用ドローンの可能性
米ラトガース大学の研究チームが開発したのは水空両用ドローン「Naviator」だ。
米ラトガース大学研究チームが開発した水空両用ドローン「Naviator」
この動画からも分かるように、見た目は普通のドローンだが、空を飛ぶだけでなく水中を自由自在に航行できる驚きのドローンだ。研究チームは2013年にプロトタイプを開発、その後改良を重ねてきた。現在は防水360度カメラを搭載し、空と水中でのオペレーションが可能で、水深約10メートルほどまで潜ることができる。
これまでに橋梁の点検で実証実験が行われ、水中部分の点検に加え、高所での点検をドローン1台で実施できることを示した。通常、ヘリコプターやボートが必要な場面だが、Naviatorであれば1台で点検が完了する。また、水中から空中に移行する際にはほんの数秒しかかからず、オペレーションの作業効率を圧倒的に高められる可能性があり、大きな期待が寄せられている。
Naviatorは点検のほかにも、水中の地図を作成することも想定されている。開発チームは、誰もが地上でGoogleマップを利用し行き先を調べるように、水中でも同じことができるようにすることを目標にしているという。現在Naviatorの製造コストは1台あたり2万〜3万ドル(約200〜300万円)だが、大量生産が実現すれば約5000ドルでの製造が可能となる。
米オークランド大学の研究チームも同様のコンセプトのドローン「Loon Copter」を開発。Loon Copterは、2016年にアラブ首長国連邦で開催されたドローンコンペティションで100万ドル(約1億2000万円)を獲得している。
米オークランド大学の研究チームが開発した水空両用ドローン「Loon Copter」
海底の財宝探しも?空は飛ばない水中専用ドローン
NaviatorやLoon Copterは、水中と空中でのオペレーションが想定されていたが、水中に特化したドローンもいくつか存在する。水中特化型は、空水両用ドローンに比べ深く潜ることが可能だ。
水中ドローンの代表格の1つが「Deep Trekker」だろう。モデルにより異なるようだがおよそ150メートルまで潜水することが可能という。
NaviatorやLoon Copterが研究開発段階であったのに対してDeep Trekkerはすでに実用化され市販されている。価格は3900〜1万ドル(約40〜100万円)で、主に水産養殖、沈没船探査、環境調査などで利用されている。
水中特化型ドローン「Deep Trekker」(Deep Trekkerウェブサイトより)
水産養殖では、養殖用ネットの破損確認や養殖魚の健康状態を確認する場合などに活用されている。水産養殖ではネットなどの養殖場インフラの定期点検・メンテナンスが重要で、点検・メンテナンスを怠ったことで、破れたネットから大量の養殖魚が逃げ出してしまった事例も少なくないようだ。時間とコストがかかってしまう人員による点検・メンテナンスだが、水中ドローンを活用すれば人員を危険にさらすことなく、低コストで効率的に実施できるようになる。
水中ドローンにはDeep Trekkerのような高価でプロ向きのものもあれば、水中体験などリクリエーションで利用できる比較的手軽で安いものもある。
OpenROV Tridentは約1500ドル(約15万円)で買うことのできる水中ドローンだ。水深100メートルまで潜り、HD画質での動画ストリーミングとレコーディングができる。OpenROV Tridentはユーザーコミュニティがあり、利用に関してさまざまな情報を交換できるのが特徴的だ。
水中ドローン「OpenROV Trident」(OpenROV Tridentウェブサイトより)
水中ドローンが潜れるのは最大で100〜150メートルほどだが、海底探索向けでは十分な深さではないだろうか。2015年に米フロリダ沖で発見されたスペイン船団の財宝が眠っていたのは海底4〜5メートルのところだったと言われている。水中ドローンで海底探索していたら、海底の財宝が見つかることもあるかもしれない。