近年、大きく注目されている課題に、物流業界のドライバー不足が挙げられる。大手宅配事業者が運賃値上げや配達時間帯の指定枠変更などを発表したことは記憶に新しい。

ECやオンデマンドデリバリーサービスなど、便利に注文できるサービスが増えた一方で、届け方に関してはまだまだ課題が存在している状態だ。

公益社団法人 鉄道貨物協会が試算したトラックドライバー需給の将来予測では、2020年には10万人が不足するという。

こうした状況を打破すべく、様々なアプローチが登場している。

配送をクラウドソーシングするアプリ

緊急輸送事業を行う株式会社セルートが開発しているアプリも、配送課題の解決を目指すソリューションの一つだ。

同社は、再配達、遅配、未着で配送完了などの問題を解決するため、一般人の空き時間を使って配達を行う配送クラウドソーシングアプリ「DIAq(ダイヤク)」を開発しており、2017年8月中旬にリリースを予定している

「DIAq」は、自転車で通学する学生や買い物に行く主婦、個人事業主のプロドライバー、バイク便ライダー、自転車便のプロメッセンジャーなどの「空き時間」を使って荷物を運ぶプラットフォームアプリ。

運送者となるためには事前の審査が必要だ。DIAqアプリをダウンロードして、必要事項を入力し、本人確認書類を送る。その後、2~3日程度で運送者としての登録が完了する。

運送者がアプリにログインすると、現在位置情報を基に、近くにいるユーザーの画面上に「オファー可能な運送者」として表示される。運送者は、届いたオファーの中から条件に合う案件を選び、仕事を請けるか判断する。より細かく流れを整理するとこうなる。

  • アプリにログイン
  • オファーが来たら、自分が行きたい方面、空いている時間に合った仕事を選ぶ
  • 集荷先へ向かい、荷物を受け取る
  • 届け先に向かう
  • 荷物を渡して、スマホに受領サインをもらう
  • 運賃の80%が運送者へ支払われる

配送を依頼したいユーザーは、複数名表示される運送者の中から「価格」「評価」「実績」「現在地からの近さ」を比較し、どの運送者に配送をオファーするかを選ぶことができる。

一般人が荷物を運ぶ時代になる?

「DIAq」は、運送者にとっては新たな仕事が生まれる可能性につながる。

一般人がAmazonの「Prime Now」サービスの配達を請け負う「Amazon Flex」では、時給が18〜25ドルと比較的高い。

仕事になると分かれば、運送者は集まりやすい。Amazonとの違いは配送の注文量の違いだ。「DIAq」はクラウドソーシングサービスのため、配送の注文が集まるようにサービスを成長させていく必要がある。

注文が集まるようになると、配送のクオリティにばらつきは生じないよう、オペレーションを整えていくことが「DIAq」の課題となるだろう。まだまだ越えるべきハードルは多いが、配送における課題の解決への挑戦として注目したい。

『AMP』では、Walmartの従業員が帰宅途中にオンライン注文された製品を顧客のもとへ配達するプログラムを試験導入したことについても紹介した。一定割合の荷物配送は、人々のスキマ時間を活用して行われるように変化していきそうだ。

img: DIAq, hyun seok jeongCC BY-ND 2.0