働き方はより柔軟に、よりフリーランス的に、よりコラボレーティブに、安定した職というものは激減する。

2009年、米タイム誌は未来の働き方をこのように予言していた。

正規で終身雇用、週休2日で8時間労働、そして長時間労働が慢性化…という従来的な日本人の働き方を変革すべく、政府は「働き方改革」を政策に掲げているが、世界の若い世代の働き方の価値観はずっと先に進んでいると思う。

私たちは、働き方が激変する最中を生きている。これから、働き方はどんどん変わっていくはずだ。自由に働けるとしたら、どんな働き方がいいだろう?

世界中を旅しながら、暮らし働く。一度は憧れるそんなライフスタイルも、これからの時代では可能になるかもしれない。訪れる国も都市も、仕事内容も滞在期間も、柔軟に選択できて、さらにその仕事にもやりがいを感じて、コミットできる環境があったとしたら、あなたはどうするだろうか。

「住みたい国」と「関わりたいプロジェクト」で移住先を選ぶ

jobbatical1

エストニア発の「Jobbatical(ジョバティカル)」は、世界中を旅する優秀な人材をターゲットに、「住みたい国」と「関わってほしいプロジェクト」をベースに人材を募集するプラットフォームだ。

例えば「マレーシアのクアラルンプールで、新しいプロダクトの開発エンジニアとして1年間働く」「ベルリンのデザイン会社でUXデザイナーとして働く」という具合だ。

Jobbaticalという名称は「Job(仕事)」と「Sabbatical(休暇)」の組み合わせからできた造語。その名の通り、求人のプラットフォームでありながら、休暇的な要素がある。

jobbatical2

Jobbaticalのサイトには、世界27カ国から200件以上のさまざまな仕事情報が集まっている。アジアではマレーシア、欧州ではJobbaticalの創業国のエストニアが多く、他にはオランダ、ベルギー、ドイツ、スペイン、タイ、シンガポール、ベトナムなど欧州と東南アジアの国が多い。

職種はフロントエンド、バックエンドのエンジニア、QAエンジニア、フルスタックエンジニアなどのエンジニア職が過半数を占める。他にはUXデザイナーやデータサイエンティスト、マーケティング・コミュニケーション担当など、専門性の高い職種が多くなっている。

求人を出している企業にはスタートアップが多く、最低限の英語(または現地語)でのコミュニケーションスキルは必要不可欠になるが、エンジニアなどの専門職は語学力よりスキルを重視する場合もある。

採用されれば、海外移住のためのビザの取得、住まいのサポートをしてくれるという企業が多い。日本に拠点を構える企業では、視線追跡VRヘッドセットを開発するスタートアップ「FOVE」がCOOやエンジニアを募集していた。

旅先で“社員”として働く選択肢

jobbatical3

Jobbaticalの求人は、フリーランスの業務委託とは異なり、社員としての採用になる。現地で採用された社員として、期間を定めて働くことで、よりプロジェクトに深くコミットすることが求められる。

プロジェクトが完了したら、また違う国に行き、新しいプロジェクトにジョインする―そんな次世代的な働き方を世界中に実現するのがJobbaticalのミッションだ。

世界中を旅する人々を「Globe Trotter」と呼ぶが、世界を旅しながらデジタルノマドとして生計を立てるということは、ビーチでビールを飲みながらノートパソコンとインターネットだけで完結する仕事をするだけではなくなった。

地球市民となり、その国のその企業のチームの一員となって、自身のプロフェッショナル性を最大限発揮して、深くプロジェクトにコミットする。そこから得られた経験と学びを活かして次のプロジェクトに挑戦していくワークスタイルは、人生をより豊かにクリエイティブにしていくことだろう。

「Globe Trotter」は与えられた責務を果たす代わりに束縛を嫌い、自由な時間を大切にする。例えば1年間マレーシアのクアラルンプールで働いた後はバンコクで1年働き、経験も積んで東南アジアに飽きたなら、次はベルリンやオランダなどの欧州にステージを変えたって良い。

高いスキルとコミュニケーション能力さえあれば、そんな働き方は夢ではなくなった。Jobbaticalにある求人情報にアプライしてみるところから、道は簡単に開ける。

世界を飛び回る人材を雇用する価値

企業側、特にスタートアップにも、そうした「Globe Totter」を雇用するメリットは大きい。高い専門スキルをもち、世界各国に赴いてプロジェクトにコミットしたいというモチベーションがある人材ほど、与えられたミッションに対するアウトプットの大切さを理解し、生産効率を高めることに長けているはずだ。

サービスやプロダクトの世界展開を視野に入れている企業ならば、進出を検討している国出身のスタッフを雇うことで、その国特有の商習慣を把握しやすい。新しい市場に進出する際の足がかりになるかもしれない。

また、様々な国からやってくる“旅人“を雇うことで、組織の多様性が促進されるというメリットもある。

2015年にマッキンゼーがアメリカ、イギリス、カナダ、中南米の企業366社を対象に行った調査では、「人種や民族の多様性が上位25%以内に入る企業は、業界平均を上回る財務リターンを上げる確率が35%も高い」と報告されている。様々な人種の人々が組織に集うことは、企業が成長する上で重要な要因のひとつになっている。

旅人を受け入れる企業側も考え方が変化していけば、世界を飛び回る仕事の仕方はより実現しやすくなっていく。

旅をしながら暮らし、働くというライフスタイルを実現するために

旅をしながら暮らし、働くという生き方をサポートしてくれるサービスはJobbaticalだけではない。

Jobbaticalと同じくエストニア発の「Teleport」は、個人にとって最適な移住先を教えてくれるサービスだ。ユーザーが求める生活の質や金銭的なニーズを各都市のデータと照らし合わせて、ベストな移住先をリストアップしてくれる。

Mistletoe 株式会社 代表取締役社長 孫泰蔵氏は、世界中のどこでも自由に暮らせる世の中をつくるために、「Living Anywhere」という考え方を提唱している。

私たちは自分が住みたい国、働きたい会社、そしてそこにいる期間も自由に選べる時代に生きている。ひとつの国や都市、企業に留まり続ける必要もない。「Globe Trotter」になれる自信があるならば、Jobbaticalがその手助けをしてくれるだろう。

Image: Jobbatical