リカーリング


リカーリングとは循環、繰り返しという意味を持つ英語で、ビジネスにおいては安定的な顧客基盤を形成し、循環的に収益を確保するビジネスモデルを指す言葉である。


ビジネスモデル上の市場において取引は1度きりであるのが基本である。市場の参加者は価格やサービスを考慮して取引ごとに売買の意思決定を行い、その意思決定は前後の取引に影響を与えない。今回A社から購入したからといって次回も同じくA社から購入するとは限らず、制約なくB社やC社との取引を選ぶことができるのが自由競争市場である。


このような自由競争市場において企業が安定的かつ継続的に収益を上げるためには、顧客にこの企業と取引したいと思わせる動機付けや理由付けが求められる。何らかの理由によって自社が顧客を囲い込むことができれば、売り切り型のビジネスモデルから継続型のビジネスモデルへの移行が実現する。


リカーリングの代表例が電気やガスなどのエネルギービジネスである。日本でも電力会社やガス会社を自由に選べる自由化が実現したが、自由化といっても顧客は購入先を毎月変更することはない。多くの家庭はエネルギーの購入先を決定したら頻繁に変更することはなく、毎月同じ会社から電気やガスを購入し続けている。


このように最初の取引から継続的に取引が行われるようなビジネスモデルがリカーリングであり、企業は初期契約に成功すれば一定期間安定的に取引を行う顧客を抱えることができる。エネルギーの他にもスマートフォンの通信会社や有料放送などがリカーリングに該当する。


リカーリングの企業側のメリットは、安定した収益基盤が形成できる点にある。リカーリングによって得られる繰延収益は安定的な金額であり、将来の収益が予測可能となる。ビジネスにおいては将来予測ができるというのは大きなメリットで、設備投資や資金調達など、様々な面で長期的視野に立った経営が可能になる。大きいが不安定な収益よりも程々で安定した収益のほうが経営の安定には大きく貢献するといえる。


リカーリングの顧客側のメリットは長期契約による割引である。リカーリングは長期間安定的に収益が見込めるため、企業は顧客を囲い込むために様々な優待条件を提供する。例えばスマートフォンの契約では2年契約を結ぶことで基本料金の割引や端末購入代金のサポートが受けられるが、これは安定した収益に対する企業から顧客への見返りである。


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