網膜走査


網膜走査とは、目の網膜に直接光を当てて、像を映し出す仕組みのこと。別名、網膜走査ディスプレイともいう。


この仕組みは、網膜に害のない程度の明るさの光を当てて、高速で動かすことによって残像を作り出し、実際に物体を見ているのと同じ感覚で網膜に像を映し出すことができる。


現在では、目が全く見えないわけではないが視覚機能が著しく弱く日常生活に支障をきたしている弱視者のために、この原理を用いたメガネの開発が進んでいる。弱視者は人それぞれに症状が違い、見え方が異なるため、市販のメガネでは視力の矯正効果は得られない。しかし、網膜走査の仕組みを用いることで弱視者の視力を補助することができる。そのメガネの仕組みは、メガネフレームの外側に埋め込まれているカメラで周囲の景色を映し出し、その情景をメガネフレームの内側に内蔵されているプロジェクターを使い、レーザーをメガネをかけている人の網膜に当てて投影することで、普通のメガネをかけているのと同じようにリアルタイムで景色を見ることができるというものだ。


このレーザーは蛍光灯よりも弱い光を当てるため、網膜への悪影響は心配されない。


弱視者への視力の補助として、カメラで写したものを液晶ディスプレイや有機ELディスプレイに映し出す方法も考えられるが、これらの方法は周囲の明るさに応じてディスプレイ自体の明るさを調節しなくてはならないという問題がある。しかし、この網膜走査の原理を用いると、そういった明るさの調節は一切必要ない。


他にも敢えて網膜走査を使うメリットとしては、ピントを合わせる必要がないことや視野の拡大などが挙げられる。このメガネの実用化を求める弱視者は多い。


網膜走査の仕組みは弱視者の視力矯正以外にも、手術中に視線を動かすことなく事前に撮っておいたCTの画像を見ることができたり、工場での製品検査の工程で、作業マニュアルを見ながら作業を行うことができたりと、医療や工業の分野での応用が期待されている。


現在この原理の実用化、普及には至っていないが、前述した通り非常に具体的な将来性のあるものであり、例をあげた分野以外にも応用が期待される原理である。


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