スマートグリッド
スマートグリッドとは、情報通信技術を用いて送電効率の最適化を実現する送電網である。
現代生活において電気は欠かせないエネルギーである。快適な生活に必要というだけでなく通信や交通インフラ、医療や介護など、社会システムの維持や生命の安全にも電気は欠かせない。しかし、現代の大都市における電力網は都市開発の初期に整備されたものが多く残されており、効率的に整備されているとはいいがたいのが現状である。
例えば、2003年に発生した北アメリカ大停電では世界一の大都市であるニューヨークが大規模な停電に見舞われたが、この停電によりニューヨークの都市機能は完全にストップしてしまった。交通は完全に麻痺状態となり通勤通学は不可能、8月の暑い時期にもかかわらず空調が使えないため体調を崩す人が続出した。この大停電の原因は諸説あるが、有力な説のひとつが設備の老朽化である。証券所や国際空港を抱えるアメリカの中枢部エリアを支える電力網であるが、使用されていた電力設備には1960年代に整備された古い設備が含まれていた。電力が初期に整備されたエリアほど設備の老朽化は深刻な問題であるが、北アメリカ大停電はそれが杞憂ではないことを現実に証明している。
電力網における最大の問題が需給バランスの調整である。電力で一番厄介なのは発電された電力を貯蔵できない点にある。発電した電力はすぐに送電する必要があるのだが、電力需要は企業や家庭の動向によって変動するため常に一定ではない。気温が急上昇して冷房使用が増加すると電力需要は急増するが、需要の急増に備えて発電量を増やしても気温が上がらなければ発電した電力は無駄になってしまう。
スマートグリッドはそのような電力ロスの解消を目指す技術である。スマートグリッドでは最終消費を行う企業や家庭に対し既存の電力メーターに代わりスマートメーターと呼ばれる特別な計測器を設置する。スマートメーターは専用回線で電力会社のコントロールシステムと接続され、電力消費量がリアルタイムで送信される。電力会社は詳細な電力消費データを元に最適な発電量を割り出し、無駄な電力を発電せずに最適な電力量を送電する。
スマートグリッドによって送電網の最適化が実現すれば、停電のリスクは大幅に低減する。需要の変動に備えた余剰電力を過剰に用意する必要もなくなり、発電所の数を増やしすぎることもなくなる。さらに送信される電力消費データをビッグデータとして活用すれば、将来的な需要変動予測精度の向上も期待できる。これまで一方通行だった電力がスマートグリッドによって双方向化されることで送電効率の最適化が実現するのである。
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