ストーリーテリング
ストーリーテリングとは、伝えたいメッセージを強く印象付けるためにストーリー仕立てにし、聞き手に深く印象付けるコミュニケーション技法のひとつである。
あるメッセージを他者に伝えたいと思い、直接的に伝えたとしても必ずしも十分に伝わるものではない。メッセージを伝えようとする側は熱意を持って伝えようとするが、受け取る側は伝える側ほど熱意を持たないため、どんなに努力しても伝える側の熱意に見合うほどメッセージが伝わることは稀である。
ストーリーテリングとは熱意に差のある相手に対してメッセージを伝えるために開発された技法である。ストーリーテリングではメッセージにテーマを設定し、物語形式に落としこむことで興味関心を強め、高い求心力を持ってメッセージを伝えることをめざす。
ストーリーテリングの好例が教訓を含む昔話である。民話や伝承として伝えられる昔話の多くはテーマとして教訓を含んでいる。誰かに優しくすれば恩が返ってくる、欲張りすぎると身を滅ぼす、嘘をついてばかりいると肝心なときに信用されないなど、子どもは昔話を通じて多くの教訓を学ぶ。もし昔話という形式を取らず直接的に教訓の内容を伝えたとしても、子どもたちにはほとんど伝わらない。昔話は教訓を子どもたちに効率的に伝えるために用いられるストーリーテリングであるといえる。
ストーリーテリングはビジネスのテクニックとして広く応用されている。ビジネスで重要な役割を持つプレゼンテーションでは「どれだけ伝えたいメッセージをアピールするか」がポイントになるが、どんなに優れた内容であったとしても聞き手に興味をもたせられなければプレゼンテーションの成功は望めない。ストーリーテリングの技法は興味を持たせ、関心を引きつけるために使われる。
ある製品の優れた機能をアピールするのはプレゼンテーションでの重要事項だが、直接的に機能をアピールしても本当の価値を伝えるのは難しい。そのようなケースではストーリーテリングを取り入れ、どのような場面で機能が役に立つのか、その機能があることでどのような未来が待っているのか、機能によりどんな可能性が広がるのかなど、物語形式にすることで聞き手の興味を強められる。使用例や体験談などを交えると説得力は一段と強まる。
ストーリーテリングはあくまでも技法の一種のため、伝えたいメッセージの価値そのものは変化しない。価値あるメッセージを伝えるのに高い効果を発揮するが、大した価値の無いメッセージだったとしても価値があるかのように印象付けてしまう可能性もあるので注意が必要である。
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