交通弱者
交通弱者とは自分で自動車を運転できず、公共交通機関に頼らなければならない人を指す。
自動車運転免許証の取得年齢に達しない年少者や運転免許証を返納した高齢者、免許を取得することが難しい身体障害者、要介護者、低所得者らを意味する一方、交通事故の被害にあいやすい人を指すこともある。この場合は主に高齢者と子どもが対象となる。
交通弱者という言葉が生まれたのは1960年代の米国で、当初は自家用車を持たないために都心へ通勤できず、貧困に苦しむ黒人層を表していたが、やがて交通手段の利用に制約がある人を指すようになった。日本では移動に制約がある人としてまちづくりや交通工学、福祉分野などで使われるが、人口減少によって過疎地域の鉄道や路線バスの廃止が相次ぐようになった1980年代以降は、主として公共交通機関が貧弱な過疎地域に暮らし、運転免許証を持たない人を示すときに使われている。
過疎地域では高齢化社会の進行とともに、自動車の運転が困難な人が増え、買い物や通院に困窮するケースが目立ってきた。人口減少で地域内の商店が廃業し、買い物弱者となる人も増加しているが、過疎地域では買い物弱者と同じ意味で使われている。経済産業省は買い物難民の定義を最寄りの食料品店まで500メートル以上離れ、自動車運転免許証を持たない人としている。
この定義に従い、2014年のデータを基に推計した買い物難民の数は全国で約700万人。この大半が山村や離島など過疎地域に暮らしており、おおむねこの数が全国の交通弱者数とみている。最近は地方都市や大都市圏の郊外でも人口減少が顕著になってきたうえ、地方で鉄道や路線バスの廃止が相次いでいることから、交通弱者の数は今後さらに増える見通しとなっている。
政府にとって交通弱者対策は大きな課題に急浮上しており、各省庁がさまざまな施策を打ち出している。総務省は過疎地域で自動運転バスの導入や自家用車による輸送サービスの充実などを検討しており、京都府京丹後市などで自家用車による有償輸送サービスが始まっている。国土交通省は複数の集落に必要な施設を1カ所に集め、コミュニティバスなどで各集落を結ぶ小さな拠点づくりを、厚生労働省は遠隔医療の規制緩和を進めている。
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