コミュニティデザイン
コミュニティデザインとは、人々のつながりや交流をデザインするという考え方である。
コミュニティデザインという考え方が誕生したのは1960年台の日本である。当時は高度経済成長のまっただ中であり、人々のつながりが薄れていくことが社会問題となっていた。特に農村部からの人口流入が起きていた都市部では土着のコミュニティと上京してきた人々の間でコミュニケーションがほとんど取られておらず、人工密集地帯でありながら孤独を抱える人々が多く存在していた。
コミュニティデザインはそのような特徴が顕著に現れるニュータウンと呼ばれる都市開発によって誕生した。ニュータウンは従来の土着型の生活圏とは異なり、全く新しい都市を一から作り上げるプロジェクトである。単に建物を作りインフラを整えるだけでは都市としての機能と住人は誕生するが、都市活動を支える基盤となるコミュニティの誕生に大きな支障をきたす恐れがある。問題の解決策として生まれたのが、計画段階から人と人とのつながりや交流を前提に都市設計を行うコミュニティデザインという考え方である。
コミュニティデザインはハードとソフトの2つに大きく分けられる。
ハード面のコミュニティデザインとは都市設備やインフラのことで、住民同士が交流できる広場や公民館を設けたり、人々が見守りやすい場所に幼稚園や学校を建てることで地域社会と子どもたちの間にコミュニケーションを生み出すことを目指す。ハード面のコミュニティデザインは都市設計の計画段階から導入される規模の大きなものになる。
ソフト面のコミュニティデザインとは住民同士の交流を目的としたイベントや祭り、地域活動などが相当する。古くからある土着のコミュニティでは伝統的な各種行事が住人の交流を生み出していたが、ニュータウンのような新興都市にはそのようなイベントは存在しない。いろいろな催し物を企画したり、住民参加型の行事を行うことで地域の活性化と住人同士のコミュニケーション促進をめざす。
コミュニティデザインに唯一の正解は存在しない。地域におけるコミュニケーションは土地の歴史や住民の気質等、様々な要素に影響をうけるため、ある都市で成功したコミュニティデザインがそのまま別の都市で成功する保証はない。よりよいコミュニティデザインを実現し理想的なコミュニケーションが成立するような都市を作るためには、行政と住民が一体となってコミュニティデザインに参加する必要がある。
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