AIによって、これからの技術の進歩はおそらく今までよりも加速度的に向上していくと考えられている。それは様々な業界において享受される進化であり、スポーツの世界においても同様だ。

今回、トップアスリート向けに体調・トレーニング管理クラウド「ONE TAP SPORTS」を開発・展開する株式会社ユーフォリアと、音声感情解析AI「Empath」を提供する株式会社Empathは、音声感情解析AIを利用したアスリートの体調・コンディションサポート領域において業務提携契約を締結した。

従来、可視化することが困難であったアスリートのメンタル状態を「Empath」で可視化し、さらに「ONE TAP SPORTS」で管理することで心身両面からアスリートをサポートしていくという。

ユーフォリアの技術・開発力とEmpathの音声感情解析AIを融合

ユーフォリアは、トップアスリートの体調・トレーニング・怪我などを管理するクラウド「ONE TAP SPORTS(ワンタップ・スポーツ)」を開発・展開し、ラグビー日本代表をはじめJリーグ/プロ野球など多くのトップチームをサポートしている。

また、Empathは、音声感情解析AI「Empath」を開発・提供しており、すでにメンタルヘルス、フィットネス、ロボティクス、コールセンターなど多様な領域で採用されている。

今回、ユーフォリアの技術・開発力とEmpathの音声感情解析AI「Empath」を組み合わせることにより、スポーツ分野への大きなシナジー効果が期待できるものと判断し、継続的協力関係構築のため、事業および商品開発における業務提携を締結することになった。

把握困難だったメンタル状態の可視化とデータ化を進める

アスリートは、大事な試合で力を発揮するために、体調・コンディション管理を日々行っている。なかでも、「フィジカル(身体)」の状態は、様々な機器・デバイスおよび選手の自覚的な症状を用いて、データとして把握するためのチャレンジが行われている。

一方で、「メンタル(精神)」の状態は表面に表れにくく、把握することが更に難しい分野だ。特に高度の緊張・プレッシャーにさらされることの多いトップアスリートの場合、メンタルがパフォーマンスに及ぼす影響は大きいと言われており、現在も様々なアプローチでメンタル面のケアが行われるようになって来ている。

こうした課題に対して音声感情解析AI「Empath」を利用することで、これまで把握困難であったメンタル状態の可視化およびデータ化を進めて行く。

「Empath」は被災地でのメンタルケアに活用されたことを皮切りに、ストレスチェック義務化対応アプリ「じぶん予報」をNTTドコモ社の「ビジネスプラス」において展開するなどメンタルヘルス分野での実績を多く有しているという。また、Tipiness社の会員向けアプリに導入されるなど、スポーツ分野での実績も広がっている。

著作権管理や学生支援、不動産業務の効率化など拡がるAIの活用

現在、AIの活用範囲は急速に拡がっている。たとえば、Web掲示板や投稿の監視を実施するイー・ガーディアン株式会社では、画像内物体検知システム「Kiducco AI(キヅコウ エーアイ)」を提供している。これは、画像内のロゴやキャラクターが不正利用されていないかを、物体検知アルゴリズムとAI技術を融合することで確認するシステムだ。

また、2017年11月29日、ネクストライブラリ株式会社は、同社が提供する“ユーザー参加型”検索サービス「NAVERまとめ」において、新たに著作権管理システム「Lisah(リサ)」のテスト導入を開始すると発表した。

金沢工業大学とIBMは「コグニティブキャンパス」というプロジェクトを進めている。2016年11月に発表した同プロジェクトは、多様化する学生のニーズへの対応、自己成長に向けた的確な支援をIBMが有するAIの「IBM Watson」によって実現する取り組みだ。

プロジェクトの第一弾として、大学での学びや生活、課外活動など、キャンパスライフ全般のアドバイザーとなる「KITコグ」システムを発表している。

さらに、不動産業界でもGA technologies (ジーエーテクノロジーズ)と首都大学東京が産学連携で、AIを活用した物件レコメンドシステムの共同研究事例や自社内での業界初のマイソク自動読み取りシステム開発を始めとするRPA(ロボットによる業務自動化の取り組み)実現に取り組んでいる。

研究ではAIの機械学習を活用した物件レコメンドシステム導入により、リノベーション業務における物件提案までの時間(中古不動産仕入れ業務のスピード)を最大55%まで削減することに成功したという。

AIをどのように有効に活用するか

このように様々な分野でAIの活用がすすめられており、今回、スポーツ分野での活用も進んで行く。

AIの活用による業務の効率化への取り組みはもちろんだが、今回のような活用は非常に有意義だ。AIについては、人間の職がなくなるなどネガティブな予測もあるが、今回のような有意義な活用で我々の生活をより豊かにしてもらいたい。