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ブロックチェーンは、仮想通貨の技術基盤として注目を集めている。
現在では、仮想通貨の基盤技術としてだけではなく、暗号技術を活かした様々な仕組みに応用され始めている。
では、今後ブロックチェーンの技術はこれからどのように活かされていくのか。
ブロックチェーンの技術
ブロックチェーン技術の特徴は、これまでの集中管理型のシステムと比べて、以下の3つの特徴がある。
- 改ざんが極めて困難
- 実質ゼロ・ダウンタイムなシステム
- 安価に構築可能
ブロックチェーンは、分散型台帳と表現される。
取引データを暗号技術を用いてつなぎ、複数のコンピュータで取引データを保持し合うことで改ざんを困難にしている。
これらの特徴があるため、IoTを含む非常に幅広い分野での応用が期待される技術である。
ブロックチェーンに関する技術は、現状日本では企業が個別に技術検証が始まった段階だ。
野村総合研究所社は、証券業務でのブロックチェーン技術の利活用に向けた実証実験を実施している。今後、適用シーンの具体化を推進するとしている。
ブロックチェーンの技術が影響を与える分野
具体的に、ブロックチェーンの技術の展開が有望な事例は、以下の5つだ。
- 価値の流通・ポイント化プラットフォームのインフラ化
- 権利証明⾏為の⾮中央集権化の実現
- 遊休資産ゼロ・⾼効率シェアリングの実現
- オープン・⾼効率・⾼信頼なサプライチェーンの実現
- プロセス・取引の全⾃動化・効率化の実現
この5つは、経済産業省の調査報告書でも報告されている事例だ。
引用元:https://www.meti.go.jp/press/2016/04/20160428003/20160428003.html
それぞれの事例について詳しくみていこう。
価値の流通・ポイント化プラットフォームのインフラ化
価値の流通・ポイント化プラットフォームのインフラ化がブロックチェーンによって実現すると予測されている。
これが実現されることで、ポイントが発行体以外との取引にも利用されることになる。
例えば、ブロックチェーンの技術を応用したゲームでは、実際にゲームで獲得したポイントを他のゲームでも利用できるようになっている。
ポイントが発行体以外でも利用でき、流通することで通貨に近い利用が可能となり、ポイント発行額以上の経済波及効果が期待できる。
さらに、ポイントサービスがプラットフォーム化していくことで、ポイントサービスが預金・貸出に類する機能を獲得できる。
ポイントサービスが預金・貸出に類する機能を獲得すると、信用創造の機能を獲得し、民間企業から金融政策を仕掛けられる可能性が高まる。
権利証明⾏為の⾮中央集権化の実現
ブロックチェーンの技術を利用することで、土地の登記や特許など、これまで国が管理してきたものをオープンな分散システムで代用可能になる。
分散システムで代用ができるため、地方自治体の業務であった届出管理等が減少し、政府の業務負担を減らすことができる。
分散システムになることで、従来の本人証明に必要であった印鑑や、銀行口座開設等で必要な本人確認のための書類提出等のプロセスも変化が期待される。
遊休資産ゼロ・⾼効率シェアリングの実現
ブロックチェーンの技術の利用によって、遊休資産の稼働率の効率化が見込める。
ブロックチェーンの技術で、中央集権的な管理者を排除でき、公平な価格形成ができるからだ。
遊休資産の他にも、入場券や客室、レンタカーなどの管理にも効率化が期待できる。
ブロックチェーンの技術によって、シェアリングエコノミーは、プラットフォーム事業者を介在せずに行われる環境が構築され、C2C取引が実現する。
C2C取引がより促進されていくことで、サービス提供者と消費者の境界がなくなり、「プロシューマ」が一般的となる。
プロシューマとは、生産者(プロデューサー)と消費者(コンシューマ)を組み合わせた造語で、自分が欲しいと思った商品を自ら開発することができる消費者のことを指す。
オープン・⾼効率・⾼信頼なサプライチェーンの実現
ブロックチェーンの技術によって、サプライチェーンは効率化が期待できる。
従来のサプライチェーンは、小売店、卸、製造で在庫情報が分断されており、必要な時に必要な場所に適切な量の在庫を持つことができていなかった。
また、商流の情報は小売店に集中しており、卸や製造まで情報が共有されていなかった。
これらの問題に対し、ブロックチェーンの技術を利用することで、サブライチェーンが効率化でき、合わせて活性化が見込める。
他にも、IoT技術と合わせてブロックチェーンの技術を利用することで、消費者の販売後のプロダクトサイクルをトラッキングできるようになる。
プロダクトサイクルをトラッキングできることで、消費者の買い替えに合わせた時期に新製品の提案も可能に。
商品を売り切って終わりではなく、継続的なビジネスが実現できる。
プロセス・取引の全⾃動化・効率化の実現
ブロックチェーンの技術によって、企業におけるバックオフィス業務の置き換えが可能になる。
例えば、以下のようなバックオフィス業務だ。
- 契約の執行
- 取引の執行
- 支払決済
- 稟議等
契約の自動実行はスマートコントラクトと呼ばれている。
スマートコントラクトは、取引の情報が連鎖しており、更新情報も参加者に共有される。そのため、いつどのような処理が実行されたかを参加者が知っているため、不正な処理を行うことは事実上不可能に近い。
ブロックチェーンの技術を利用することで、バックオフィス業務における人為的なミスやコストを削減できる。
ブロックチェーンの技術活用
ブロックチェーンの技術は、様々な分野で適用可能だが、まだまだ課題も残されている。
ブロックチェーンの技術は、実ビジネスでの運用手法等が確立されておらず、ブロックチェーンに関わる各性能要件や仕様が明確になっていない。
そのような中で、ブロックチェーン技術活用のユースケースは以下のものだ。
- 金融系(証券取引、決済、ソーシャルバンキング等)
- ポイント/リワード(ギフトカード交換、リワードトークン等)
- 資金調達(クラウドファンディング等)
- 資産管理(土地登記等の公証)
- ストレージ(データの保管)
- 認証(デジタルID、アート作品所有権)
- 商流管理(サプライチェーン、トラッキング管理)
- コンテンツ(ストリーミング、ゲーム)
- シェアリング(ライドシェアリング)
- 将来予測(未来予測、市場予測)
- 公共(投票、市政予算の可視化)
- 医療(医療情報)
- IoT(マイニングチップ、IoT)
ここでのユースケースは、ビットコイン発祥のブロックチェーン技術を改良しながら広まっていることから、「ビットコイン2.0」とも呼ばれている。
まとめ
ブロックチェーン技術は、金融や医療、食品、不動産など、様々な分野での応用が期待されている。
しかし、現状としては構想や実証実験にとどまっているケースが多い。ブロックチェーンが本格的に社会に普及していくには、数年かかると予想されている。
ただし、ブロックチェーンん普及が進めば、あらゆる業界でブレークスルーが期待できる。
今後、ビジネスでブロックチェーンの技術を取り入れたいなら、日本だけでなく海外の情報もキャッチアップしていく必要がある。
情報をキャッチアップし、実証実験を繰り返して、フィードバックを行うサイクルで知見を貯めていかなければならない。