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世界で初となる国政選挙での電子投票や電子居住権制度である「e-Residency」などの仕組みを構築し、電子国家として世界中から注目を集めているエストニア。
エストニアは北ヨーロッパにあり、日本からは遠い位置に存在する。
遠く離れたエストニアへ移住し、永住権を取得することはできるのだろうか。
今回は、エストニアの永住権について解説していく。
エストニアの永住権について
エストニアの永住権を取得するには、一時滞在許可証等を継続してエストニアに滞在することで申請資格を得るのが一般的である。
電子居住権制度であるe-Residencyはe-Residencyは居住許可証ではなく、仮想住居の証なので取得してもエストニアには住めないのだ。
e-Residencyは、提供している場所を問わず使えるオンラインサービスを使用可能にするためもの。
e-Residencyを取得してもエストニアで電子投票はできない。エストニアはe-IDカードで電子投票が可能だが、エストニアの選挙で投票するためには永住許可を取得しなければならない。
では実際にエストニアに滞在するためのビザや許可証はどうなっているのだろうか。以下で詳しく解説していく。
エストニアには滞在期間が90日以内であれば査証を取得せずに入国できる
エストニアには、滞在期間が90日以内であれば査証を取得せずに入国ができる。この場合の渡航目的は、観光や知人訪問、短期商用等の場合に限られる。
エストニアはシェンゲン協定加盟国であるため、査証を取得せずに入国が可能だ。
引用:https://www.ee.emb-japan.go.jp/jp/ryoujiSasho.html
シェンゲン協定加盟国は、他にも多くの国が加盟している。シェンゲンビザについて詳しく解説していこう。
シェンゲンビザとは
シェンゲンビザは、協定国の一つの大使館及び総領事館で発給されたビザを所有すれば、短期での観光、出張、訪問(最長6カ月間に90日)を目的として全ての加盟国への自由な移動が認められる。
シェンゲン協定加盟国は、以下の国である。
- オーストリア
- ベルギー
- デンマーク
- チェコ
- エストニア
- フィンランド
- フランス
- ドイツ
- ギリシャ
- ハンガリー
- アイスランド
- イタリア
- ラトビア
- リトアニア
- リヒテンシュタイン
- ルクセンブルク
- マルタ
- オランダ
- ノルウェー
- ポーランド
- ポルトガル
- スロバキア
- スロベニア
- スペイン
- スウェーデン
- スイス
シェンゲン域内における無査証滞在期間は、最初にシェンゲン域内に入ったときから6カ月間で90日を越えないことが求められる。
例えばエストニアに入国する前に、6カ月の間にドイツに45日滞在していたら、エストニアに滞在できるのは45日となる。
引用:https://japan.diplo.de/ja-ja/service/schengen/895304
シェンゲンビザで入国する場合は、他のシェンゲン協定加盟国に滞在していた期間も考慮しなければならない。
90日以上の滞在には滞在許可が必要
就労等の営利目的でエストニアへの滞在は、90日以内であっても査証が必要となるので注意が必要だ。
就労等の営利目的で必要となる査証は、エストニア大使館で申請が可能。また、就労や留学等で90日以上エストニアに滞在する場合も、エストニアでの滞在許可が必要となる。
エストニアの居住許可を取得するには、最大2カ月程度要するのが一般的だ。また、各種書類も必要となるため、事前に在日本エストニア大使館やエストニア入国管理局に問い合わせておこう。
居住許可申請には、直近6ヶ月の「Legal Income Certificate」が必要になるため、こちらも事前に準備が必要だ。
Legal Income Certificateは、会社からの雇用証明書や銀行の講座明細(最近6ヶ月の収入状況がわかるもの)が該当する。Legal Income Certificateでは、英語またはエストニア語の文章を求められる。
注意点は、日本で発行される所得証明や源泉徴収表は証明文書として認められないことだ。
改めて、エストニアの永住権やビザについての情報を整理しておこう。
- エストニアで永住権を得るには一時滞在許可証等でエストニアに滞在する必要がある
- 滞在期間が90日以内であれば査証を取得せずに入国できる
- 営利目的や90日以上滞在する場合は許可証が必要
実際に滞在するためにはビザが必要であることがお分かりいたただけただろうか?
では電子上でエストニアの住民になれる「e-Residency」という制度がどのようなものなのか以下で詳しく解説していく。
e-Residencyとは
e-Residencyとは、エストニアに居住していない人でも、エストニアのデジタルIDと電子サービスが付与されるデジタル身分証明システムだ。
国籍や住んでいる場所に関係なく誰でも申請でき、様々な機会を受け取ることができる。
e-Residencyを取得すると、以下の3つが出来るようになる。
国外からエストニアの現地法人を設立できる
e-Residencyを取得すると、エストニアの現地法人をエストニア国外から設立できる。
日本で法人を設立する場合は、書類の手続きで税務署等を訪れる必要がある。しかし、エストニアはそのような手続きが必要なく、電子上で法人登記が可能だ。
さらに、簡単かつ低コストで法人を設立でき、維持コストも抑えられる。
ビジネス口座を開設可能
e-Residencyを取得することで、エストニアでのビジネス口座を開設できるようになる。
エストニアはEUに加盟しているため、エストニアで口座を開設するとEU市場にアクセスできるように。
ただし、一部の金融機関では面談が必要となるため、e-Residencyを取得すれば口座を必ず開設できるわけではないので注意が必要だ。
電子署名が可能に
e-Residencyを取得すると、エストニアが提供するソフトウェアを利用し、電子署名が可能になる。
電子署名が可能になることで、契約書を締結する際に国際郵便等を使う必要がなくなる。書類でのやり取りがなくなることで、スピード感を持ってビジネスが実現される。
他にも、e-Residencyを取得すると、e-Residencyのネットワークを通して新しいビジネスパートナーと出会うことも可能だ。
e-Residencyの受取方法や取得費用
e-Residencyの受取は、日本の大使館かエストニア国内で可能だ。郵送などは受け付けていないため、日本で受け取る場合は、在日エストニア共和国大使館で受け取る必要がある。
e-Residencyプログラムは人気になっているため、審査やカード取得に時間がかかるようになってきている。
申請してから審査の結果が出るまで約30日間ほど。さらに、審査に通過してからカードを取得するまでには、約4週間から7週間ほどかかる。
e-Residencyを申請してカードを取得するには、全部で1ヶ月半から長くて3ヶ月ほどかかることを念頭に置いておこう。
e-Residencyを取得には、100ユーロが必要だ。100ユーロは、日本円にすると約13,000円程度である。e-Residencyの支払いは、VISA/MasterCardで決済可能だ。
まとめ
今回は、エストニアの永住権やビザ、e-Residencyについて解説してきた。
エストニアは電子政府として世界中から注目を集めている。
そのため、エストニアに訪れたり住んでみたいと思う人も増えてきている。
だが、実際にエストニアに訪れたり、住むためにはビザが欠かせない。
今回紹介した内容を参考に、必要となるビザや査証を取得しておこう。
エストニアの電子国民となれるe-Residencyでは、実際に移住したりビザを取得できるわけではないので、注意しておこう。