エストニアは電子政府としての取り組みが注目され、近年では最新の技術であるブロックチェーンを国家として導入している。

またブロックチェーンは仮想通貨のコア技術であるため、エストニアは仮想通貨に関しても先進的な国家と言われている。

そこで、今回はエストニアの仮想通貨について以下の順に解説していきたいと思う。

  • エストニアの仮想通貨事情
  • エストニアの仮想通貨のライセンスについて
  • エストニアの仮想通貨取引所
  • エストニアの仮想通貨の税金
  • 国家としてICOで「エストコイン」を発行

エストニアの仮想通貨事情について

前述した通り、エストニアは電子政府を推進しており、国家のオンライン管理システムにブロックチェーン技術を導入するなど、先進的な取り組みを行っている国家だ。

エストニアでの会社設立は、全てオンライン上で手続きが完了することができ、オンライン上で銀行口座も開設できる。さらに、税金の支払いもオンラインで可能。

企業にとって非常に有利な状況であるため、多くの企業がブロックチェーン事業をエストニアに移転しており、すでにブロックチェーン関連企業が700社を超えているという。

他にも、エストニアに進出・移転することで、EU市場へ展開する拠点となる、電子政府関連事業の新規開発の拠点となる、スタートアップ投資の拠点となる、といったメリットもある。

エストニアの仮想通貨はライセンス制

エストニアで仮想通貨事業を行うためにはライセンスが必要になる。エストニアで仮想通貨のライセンスの対象となるのは、仮想通貨取引所仮想通貨ウォレットの2つ。

ライセンスの取得も、オンライン上で手続きが可能だ。ただし、ライセンスの取得には要件があるため、誰でもライセンスを取得できるわけではない。

エストニアは仮想通貨法人への規制を強化

また、エストニアは仮想通貨法人に対しての規制を強化している。
新たな法案として承認された主な修正点は、以下の通り。

  • 取締役会の構成メンバーへの審査を強化
  • 会社、取締役会及び経営の登録場所はエストニア国内
  • ライセンスの申請費用を345ユーロから3300ユーロへ変更
  • 審査期間を1ヶ月から3ヶ月へ変更

エストニアは行政サービスの99%が電子化されており、デジタル社会の安全性と信頼度の向上が必須だ。

そのため、仮想通貨法人への規制が強化されている。ただし、マネーロンダリング対策などの目的で規制を設けており、仮想通貨市場を制限するものではない。仮想通貨法人への調査を強めることは、仮想通貨市場の安定にもつながる。

このように規制は強まっているが、この度、エストニアで日本人として初となる仮想通貨取引所が設立された。

日本人が初めてエストニアに仮想通貨取引所「PLUSQO」を設立

エストニアの金融局に日本人として初めて認定された仮想通貨取引所「PLUSQO」が、2019年5月にオープン。

トークン発行案件の可否、内容を緻密に精査することで、ユーザーが安心して取引・出資できるサービスを目指している。また、決済手段が幅広く、利便性の高いサービスだ。

対応している決済手段は以下の通り。

  • クレジットカード
  • デビットカード
  • Paypal
  • 銀行振込

PLUSQOが設立された背景には、日本国内のスタートアップへの資金流入が少ないことが挙げられる。

日本は、起業家へのサポートが充実している、シンガポール、中国(深圳)、イスラエル、アメリカ(シリコンバレー)などと比較し、リスクマネーは数十分の一から数百分の一と圧倒的に不足している現状だ。

そのため、PLUSQOでは、新たな資金流入として仮想通貨を導入し、海外からの資本を日本へ取り入れることを目指している。

PLUSQOでは、すでに伝統工芸や医療、機能食品など、複数の分野でトークンエコノミーの整備を進めている。

また、日本からエストニアへの展開だけはなく、エストニアから日本への事業展開を視野に、会社を設立するパターンもある。

日本への展開を視野に

エストニアの首都タリンに本拠地を構えるblockhiveが、日本でblockhiveを設立。

blockhiveは、デジタルID認証や仮想通貨スマートウォレットeesty、エストニアの国営電力会社との仮想通貨マイニング事業に取り組んでいる。また、これまでのパートナー企業であったスプレッディの株式を取得し、子会社化した。今後、日本向けのサービスの提供に加えて、グローバルの新サービスの準備を進めているとのことだ。

他にも、SetGo Estoniaが日本企業のエストニア進出を支援する新サービスの提供を開始。エストニア進出を検討している日本企業の、進出前の事業分析や調査支援、戦略アドバイスから各種ライセンス取得支援などのサービスを日本とエストニア両国から提供する。

エストニアの仮想通貨取引所を紹介

エストニアには、様々な仮想通貨取引所がある。その中でも、代表的な取引所が以下の3つだ。

  • OMGFIN
  • Kriptomat
  • ATAIX

OMGFIN

https://omgfin.com/exchange/

OMGFINは、エストニアを拠点とする仮想通貨取引所だ。正式なライセンスをエストニアから受けている。OMGFINの基軸通貨は、以下の4通貨となる。

  • ビットコイン(Bitcoin)
  • イーサリアム(Ethereum)
  • テザー(Tether)
  • ユーキッドコイン(Uquid Coin)

取り扱う仮想通貨の種類は幅広く、トロン(Tron)、ネオ(Neo)、ビットコインキャッシュ(BitcoinCash)、エンジンコイン(Enjin Coin)など、複数の仮想通貨を取り扱っている。

また、2019年3月にはリップル(Ripple)の取り扱いも開始。リップルは、OMGFINの基軸通貨全てと取引可能となっている。

Kriptomat

https://kriptomat.io/

Kriotomatは、エストニアから正式なライセンスを受けている仮想通貨取引所だ。Kriptomatは合計で20種類のコインを取り扱っている。取り扱っている仮想通貨の例は以下の通り。

  • ビットコイン(Bitcoin)
  • イーサリアム(Ethereum)
  • リップル(Ripple)

Kriptomatは、数多くの国にサービスを提供しているのが特徴。Kriptomatのサービスを利用できる国は38カ国あり、WEBサイトは20カ国以上の言語に対応している。

また、ユーロやクレジットカードで購入できるなど、利便性が高いのも特徴の一つだ。

ATAIX

https://ataix.com/

ATAXIXは、2018年11月にオープンしたエストニアの仮想通貨取引所だ。扱っている仮想通貨の例は以下の通り。

  • ビットコイン(Bitcoin)
  • イーサリアム(Ethereum)
  • リップル(Ripple)
  • ステラ( Stellar)

ATAXIXは、日本でも取引が可能。また、ブロックチェーンを用いて、日本とフィリピン間の為替市場と貿易の強化に焦点を当てた「Noah Coin(ノアコイン)」が上場している。

ノアコインは、今後フィリピン国内で予定されているノアプロジェクトへの参加を可能にするために始動を開始。ノアプロジェクトの一例として、マニラ首都圏の住宅不動産、ミンダナオ島の複合用途リゾートなどが挙げられる。

ATAXIXへ上場することで、ビットコインやイーサリアムなどとの取引が可能になり、広がりを見せている。

エストニアでは仮想通貨は税金の対象とはならない

エストニアではICOに関する特別な税制がないため、ICOの収益が配当金になるまで法人税は適用されない。

また、エストニアでは会社の利益を引き出さなければ、法人税がかかりらない。そのため、内部留保で法人に利益を持っていると、課税対象から外れるのだ。

ただし、所得税は一律20%と定められているので、全く税金がかからないというわけではない。

エストニアは、仮想通貨関連の企業の受け入れを行うだけでなく、国家による仮想通貨(エストコイン)の発行についても発表している。

エストニアが国家としてICOで「エストコイン」を発行か

エストニアは、国家としてICOで仮想通貨(エストコイン)開発の計画を発表。

ICOとは、仮想通貨を使用した資金調達手段のことだ。

企業がIPO(新規株式公開)をすることと似ており、企業がIPOすると誰でも株を取引できるようになるのと同じく、ICOでは誰でも仮想通貨の取引ができるようになる。

エストコインは、エストニアの行政システムであるeレジデンシーに使用できる通貨としての利用が検討されている。

ただし、エストニアでエストコインを法定通貨とするには、大きな壁がある。それは、エストニアがEUに加盟しており、ユーロを使用していることだ。

EUに加盟する国は、共通通貨をユーロにしなければならない。もしエストニアが、エストコインを法定通貨とするには、EUからの脱退が必要不可欠だ。

他にも、エストコインの信頼性を担保するものが必要となる。例えば、日本円は日本経済の信用によって価値を担保している。エストコインの信頼性についてエストニアは、エストコインと同額のユーロをエストニアが担保する構成を伝えている。しかし、現時点では開発を計画している段階なので、今後どうなっていくかは未確定な状態だ。

まとめ

以下、今回の要点となる。

  • エストニアは仮想通貨関連の企業の受け入れを行っている
  • 会社の立ち上げも全てオンライン上で可能
  • エストニアで仮想通貨関連の事業を行うにはライセンスが必要
  • エストニアは今後、マネーロンダリング対策のために規制を強化
  • 日本への資金流入を目指し、日本人となるエストニアで仮想通貨取引所がオープン
  • ICOの収益が配当金になるまで法人税が適用されない
  • エストニアが国家として仮想通貨の発行を検討

エストニアは、ブロックチェーンの技術を導入など、先進的な取り組みを行っている。また、仮想通貨関連の企業の受け入れも積極的だ。

しかし、ただやみくもに受け入れるのではなく、市場の安定や信頼性の向上のために、規制を強化している。さらに、エストニア内で仮想通貨事業をするためのライセンス制を設立。国家として仮想通貨の発行を検討するなど、今後もエストニアの取り組みは注目を集めている。