労働人口の減少や長時間労働の問題を是正するために、昨今特に声高に叫ばれるようになっている生産力の向上。高い品質を維持した上でチームの生産力を上げるためには、具体的にどのように取り組めばいいのだろうか。

今回は、時間管理アドバイザーやセミナー講師などとして活躍している石川和男氏に、そのノウハウを伺ってみた。

1.指示や連絡は具体的な数字で示す

部下に対して、「なるべく早く終わらせて欲しい」「少なめに発注して欲しい」「広めの会議室をとってほしい」など、形容詞や副詞を使った漠然とした指示をしていないだろうか。

石川氏によるとこの場合、「15分でやってほしい」「いつもより20本少なめに発注して欲しい」「50人収容できる会議室をとってほしい」という風に、具体的な数字を提示することが大切だという。数字にすることで指示の意図が明確になり、双方の認識のズレを防ぐとともに迅速な判断を促し、業務の効率化に繋げることができるのである。

あわせて気を付けておきたいのが、タスクの優先順位だ。新入社員の場合は、数字で指示をしても、ビジネスリテラシーに乏しく、そもそもプライオリティのつけ方がわからないという社員も多い。そのため、明確にタスクの順番を提示したり、本人に考えさせたりしてフォローしていくことも欠かしてはならないと、石川氏は語る。

2.業務を手放す

「自分でやった方が早い」と思ってタスクを溜め込むのではなく、部下に割り振ることも、リーダーが備えておきたい素質のひとつだ。いくら優秀であっても、一人でやれる業務量には限界がある。そのため、誰にどのタスクをアサインできるのか、常にアンテナを張っておくことが大事だと石川氏は語る。

タスクを手放さないと、自分自身の業務が圧迫してしまうのはもちろん、部下のスキルアップにもならない。自分のタスクを上手くシェアすることで一人一人のエンパワーメントを促し、最終的に強固なチーム体制の構築に繋げることができるのである。

3.インプットで”気づき”の機会を増やす

人は意外と慣習や思い込みで、業務の効率化をはばんでいることがある。石川氏によると、社内やチーム内でルール化されているもの中には、実は形骸化したものが多くあるという。けれども、ルーティンになってしまっていると、そのことになかなか気付くことができない。

パラダイムにとらわれることなく、隠れた非効率を見つけ出すためにも、日々インプットの機会を増やすことが大切なのだそうだ。異業種交流会やセミナーに参加したり、ビジネス書などを読んだりすることで、非効率を見抜く目を養い、チームにイノベーションをもたらすことができるのである。

4.月一の飲み会より毎日の会話を増やす

生産性を高めるためには、チーム内での信頼関係の構築も欠かせない。部下との仲を深める方法のひとつとしてよくあるのが「飲みニケーション」だが、さまざまな価値観や働き方を持つビジネスパーソンが増えている現状では、機会を設けることが難しいこともあるだろう。

そのため、今後のチームビルディングにおいては、月一の飲み会よりも、毎日の会話を意識する方が効率的だと石川氏は述べる。単純接触効果と呼ばれるもので、時間は短くても、頻繁にコミュニケーションをとることで、部下との距離を効果的に縮めることができるのだそうだ。

ただし、この時に注意しておきたいのは、決して部下の言葉を否定しないことだ。たとえ新入社員が見当違いなことを言おうとしても否定はせず、一度受け入れる。そうしないと、せっかく接する機会を増やしても、会うこと自体が苦痛だと受け取られてしまうと、お互いの信頼関係が築きにくくなってしまうのである。

以上、どれも基本的ではあるが、意外と疎かになっているリーダーも多い。チームの生産性を上げるためにも、この機会に今一度リーダーとしてのマインドセットを見直してみてはいかがだろうか。

石川和男
1968年、北海道出身。建設会社の経理部で働く傍ら、30代から勉強を始め、税理士、宅地建物取引士、建設業経理事務士1級などさまざまな資格試験に合格。現在は税理士や大学・専門学校講師、建設会社総務経理担当部長を務める他、ビジネス書の執筆やセミナーや講演なども行っている。著書に『残業しないチームと残業だらけチームの習慣』『最新ビジネスマナーと今さら聞けない仕事の超基本』ほか、YouTubeでも活動をしている。『時間管理の専門家 石川和男のビジネスパーソンチャンネル