近年、アウトドアブームの盛り上がりが止まらない。「オートキャンプ白書2018」によると、2017年の参加人口は540万人と5年連続で増加をしているという。それほど今、人々はアウトドアに夢中のようだ。

アウトドアではテントを立てる、BBQをする、自然を楽しむなど、楽しみ方や過ごし方は人それぞれ。そんな中、今若者を中心に注目されているアウトドアアイテムがある。

外でもサウナを楽しめる「テントサウナ」だ。テントサウナとは、耐火性のテントの中で薪を焚いて楽しむサウナの1種。このアイテムが今、アウトドア好きにとどまらず、サウナ好きからも関心を寄せられている。

一体、今なぜテントサウナが注目を浴びているのか? 今回は、本場フィンランド製テント式サウナの販売やレンタルを行う、ミズジャパン株式会社 代表 大泉寛太郎氏に話を伺ってみた。

「サウナ好き」から始まった、テントサウナへの挑戦

——いつ頃からテントサウナ事業を行っているのでしょうか。

大泉:2016年からこの事業を始めました。フィンランド製のサウナテントのレンタル・販売をしています。


MIZU JAPAN公式HP

——なぜ、「テントサウナ」に注目をしたのでしょうか。

大泉:もともとサウナが好きだったんです。「サウナ」をどうにかビジネスにできないかと考えた時に、事業にするのであれば本場のフィンランドで一度学ぼうと思い現地に旅立ちました。

日本のサウナは一般的に室内にありますが、向こうのサウナのほとんどは、外と繋がっています。サウナの後、外に出て自然の風を楽しむというのが現地では当たり前です。

また、温度は60度から80度くらいなので、日本のサウナほど高温ではありません。そのためサウナストーンに水をかけて蒸気をだす「ロウリュウ」を行い、室内の温度を変えずに体感温度を上げていくのです。


ロウリュウのイメージ画像

しかし、この本場サウナを日本に作ろうとしてもお金はかかるし、文化も違う。そこで出会ったのがテントサウナです。「これなら、フィンランドのようなサウナ体験を日本で提供できる」となったのが始まりです。

——実際にテントサウナを日本に導入してみて反応はどうでしたか?

大泉:テントサウナ事業を始めた頃は、国内で取扱っている企業はほぼありませんでした。キャンプ場にプロモーションをかけても「テントサウナって何?」という状況。

しかし今ではテントサウナのレンタルが人気で、毎週のように出荷しています。また「テントサウナフェスティバル」を弊社敷地内で開催しているのですが、100人ほど集まるイベントとなってきています。SNSの周知もあると思いますが、サウナファンの繋がりが多いです。

お客様の声を訊いて感じるのは、一般的なキャンプに慣れている人たちにとってテントサウナは「スキマを埋める存在」となっている気がします。キャンプに「スキマ」があるのは、もちろんいいことです。でもありすぎても……という部分に、いつもとは違う楽しみを与えてくれる存在なのかなと。


TENT SAUNA FESTIVAL by MIZU JAPAN

——本場のサウナに入った時の感覚も、違いますか?

大泉:蒸気と汗が混りサラサラした汗が流れます。ものすごく熱いわけではないので、サウナ初心者や高温のサウナが苦手な人でも楽しめると思います。

「違い」ではなく「似ている」点でいうと、フィンランドのサウナと日本のお風呂の普及の仕方です。フィンランドのサウナは、ほぼ一家に一台あります。日本のお風呂と同じ感覚です。

でも、実はテントサウナはフィンランドの一般的なサウナのように一家に一台、使われている訳ではありません。フィンランドは徴兵制という背景もあり、戦地でもサウナが入れるようにテントサウナが活用されています。私たちはその「どこでも利用できるうテントサウナ」に目をつけた訳です。

テントサウナが人気となった理由とは?

——テントサウナと一般サウナの違いとは?

大泉:先ほどもお伝えしましたが、やはりでる汗の「質」が違います。蒸気と汗が混じり合うので、サラサラした感覚がありとても気持ちがいいです。さらに、ものすごく熱いわけではないので、サウナ初心者や高温のサウナが苦手な人でも楽しめると思います。

テントサウナは基本的に水着や、水着に抵抗のある人は汗をかいても大丈夫なスポーツウエアなどを着て、男女いっしょに楽しめます。お酒を飲みながらでも楽しめるので、若者にとっては非日常な体験の場でありながらも、コミュニケーションの場にもなっているのだと思います。

——テントサウナが人気の理由は何とお考えでしょう。

大泉:日本のサウナ人気の後押しが要因の一つでもありますね。私が日本のサウナを好きになったのは22歳の頃でした。

サウナで会う人は年上ばかりで、とくに経営者が多かった気がします。若いけれど「何かをやってやろう!」という気概のあるコアなサウナ好きと経営者の発信力が、サウナ人気を広めているような気がするのです

それに加え、キャンプ&サウナメディアの「Sauna Camp」や、テントサウナを楽しむ様子を動画で紹介する「TENT SAUNA PARTY」などのWebメディアが、テントサウナをおしゃれに紹介している点も大きいです。最近では雑誌などにも掲載されています。

2017年からSauna Camp主催のテントサウナイベント「Sauna Camp Festival」が開催されるなど、テントサウナに関するイベントも多くなってきました。


Sauna Camp Festival (Sauna Camp 公式HP

さらに今年は、日本とフィンランドの「友好100周年の記念の年」にあたります。私はフィンランドのサウナアンバサダーを務めているため、北欧関連のイベントでテントサウナを紹介する機会もあります。そのような後押しも大きいです。

テントサウナを体験できる場を増やしていくことが次のステップ

——今後の展望について教えてください。

アウトドアや「体験したい」というニーズはさらに増えるでしょう。それにともない、テントサウナの需要も伸びていくはずです。今後はより多くの人にテントサウナの楽しさを知ってもらうために、レンタル事業を強化していきたいですね。

今はテントサウナから川や海、簡易プールに入るイメージですが、今後はフィンランド式の移動式五右衛門風呂「KIRAMI(きらみ)」も楽しんでもらいたいと思っています。

テントサウナ事業を始めたばかりの頃は、キャンプ場での認知に苦労したのですが、2019年の9月、埼玉県飯能市にできる「喜多川キャンピングベース」でテントサウナが常設されることとなりました。今後もたくさんのキャンプ施設にプロモーションをかけて多くの人にテントサウナの気持ちよさを体感してもらいたいですね。

——テントサウナを通して何を届けたいですか。

「自然をもっと楽しもう!」と伝えたいです。それは地球環境にも通じることです。自分たちが楽しんだ自然を汚そうと考える人はそうそういないでしょう。本当に楽しいと感じる場所は、きれいであって欲しい。そういう意識の変化が、自然環境にかかわってくるのです。

取材・文:夏野久万
写真:西村克也