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営業職の友人がこう言った。「睡眠不足だから、今日はカラオケだな」
外回り営業の経験がない人にはピンと来ないセリフかもしれないが、これは営業職あるあるの一つ、「カラオケで昼寝」を指す。その他にも、マンガ喫茶や移動中の電車は、ビジネスパーソンの三大仮眠スポットとなっている。
フリーライターをしていても、アポとアポの「スキマ時間」には悩まされる。中途半端に2時間ほど空いてしまうと、一旦帰宅するのか、都内にとどまるのかでいつも迷う。結局カフェに入り、惰性でカフェインを摂取しているのは私だけではないだろう。
そんな中、欧米ではシェアリングエコノミーが外出先でのスキマ時間の過ごし方に、選択肢を提供しようとしている。
必要な時間帯だけ借りる、テンポラリーな場所貸しビジネス
シェアリングエコノミーと言えば、「宿泊する場所」をシェアするAirbnbが代表格だ。一方、ロンドンでは「ちょっとしたスペース」をオンデマンドでシェアするサービス「Pop Pods」がリリースされ、注目を集めている。Pop Podsが画期的なのは、その貸し出し時間にある。最短30分というスポット利用を中心に、ちょっとした隙間時間の利用を主とする。
ホストは、自宅やスタジオ、オフィスなどの空き時間を時間単位で登録する。ユーザーは、アプリの地図上から“今”利用できるスペースを見つけ、空き時間を昼寝やシャワーなどにあてることができる。登録された場所は、防犯上、身分証明をクリアしたユーザーのみが利用可能だ。
集中して作業をしているとき、電話や上司の一声で、集中力が途切れてしまった経験がある人は少なくないだろう。
Pop Podsは、隙間時間の活用だけでなく、オフィスの喧騒から離れ「1時間だけこの仕事に専念したい」といったオフィスワーカーのニーズにも対応できそうだ。
高級ホテルも、1分単位で利用可能
個人だけではなく、場所貸しビジネスの本家ともいえるホテルも、テンポラリーの場所貸しを始めている。サンフランシスコに拠点を置く「Recharge」がその例だ。
Rechargeは提携先のホテルを、なんと1分単位で借りることができる。Pop Podsと同様に、リアルタイムで空きのある部屋を検索し、予約するシンプルな仕組みだ。場所を提供するホテル側は、空き部屋の収益化につながる。テンポラリーでの利用予約は、48時間以内に限定されている。
支払いはクレジットカードかデビットカードのみ。退室の数分後、Rechargeから利用時間と料金の通知がくる。提携ホテルには、HyattやStarwoodといったハイエンドホテルも名を連ねており、2017年10月現在、サンフランシスコとニューヨークが対象エリアとなっている。
指先一つでスキマ時間をデザイン!「リアルタイム性」が示す可能性
思い返せば、スキマ時間の活用やプライベート空間へのニーズはあちこちにある。ホテルのチェックインはたいてい14時まで待たなければならないし、仕事帰りにパーティやビジネスディナーに立ち寄らなければならない日には、落ち着いて着替えや化粧直しができる場所があると助かる。ノマドワーカーや授乳中の女性にも喜ばれるだろう。
「場所のシェア」はこれまで、住居としてのルームシェアや、民泊、別荘など宿泊場所のシェアが中心だった。Pop PodsやRechargeの魅力はなんといっても、従来のサービスにはなかった「テンポラリー性」「リアルタイム性」だ。
位置情報と即時性との掛け合わせは、新規事業へのヒントとなるかもしれない。前述のRechargeは、設立から2年というスタートアップ企業にも関わらず、昨年230万ドル(約2.6億円)の資金調達に成功している。
日本でもじきに同様のサービスが始まるだろう。もうやむを得ずコーヒーを注文したり、お世辞にも寝心地が良いとは言えないカラオケなどでの仮眠をしたりする必要はなくなるかもしれない。指先一つでスキマ時間をデザインできる生活への期待は高い。
img:Pop and Rest, Recharge, PEXELS