最寄駅から目的地まで道のりを指す「ラストワンマイル」を補う移動手段として、バイクシェアが広がりをみせている。

とくに2017年はITベンチャー企業による参入が相次ぎ、日本におけるバイクシェアの普及に期待が集まった。

国内外のベンチャーによるバイクシェア事業

9月にはメルカリがバイクシェア事業『メルチャリ』を2018年初頭に開始予定すると発表。膨大な顧客基盤を有するフリマアプリ「メルカリ」との連携に期待が高まる。

DMM.comも2017年末から2018年初頭にかけて、シェアサイクル事業『DMM sharebike(仮)』のローンチを検討していると明らかにしたが、後に参入を取りやめた

さらに、バイクシェアの普及が進む中国からもビッグネームの日本進出が続いた。2017年7月、中国のバイクシェアサービス大手『Mobike(モバイク)』は、福岡市に日本法人を設立。福岡市と札幌市でサービスの実証実験を開始している。12月にはLINEが同法人との資本提携も発表。2018年上半期中にはLINEアプリを用いたバイクシェアサービスを展開予定だ。

Mobikeに並ぶ中国バイクシェア大手『ofo(オッフォ)』も、同年9月にソフトバンクC&Sと協業し、国内でのサービス開始を発表した。9月以降から、東京、大阪で順次サービスを展開すると述べていたが、同社のTwitterでは11月30日に「国内でのサービス開始に向けて調整中」と回答している。

ドコモとソフトバンクによるバイクシェア

NTTドコモやソフトバンクといった大手通信キャリアは、国内外のITベンチャーの参入に先駆けてバイクシェア事業に取り組んできた。

NTTドコモは2015年に『ドコモ・バイクシェア』を設立。東京や横浜、仙台、広島の4都市でサービスを展開している。

ソフトバンクも2016年11月にOpenStreet株式会社を設立し、自動車シェアリングシステム『HELLO CYCLING(ハローサイクリング)』を提供してきた。現在は、都市圏のみならず愛知県や兵庫県、沖縄県にもサービス範囲を広げている。

(「ドコモ・バイクシェア」の貸し借り拠点)

両サービスの利用方法はほぼ同じだ。アプリ上の地図から貸し借りが可能な拠点を探し、自転車の予約を行う。送られてくる4桁の暗証番号入力すれば、自転車の開錠ができる。

あらかじめICカードを登録しておけば、ワンタッチで開錠も可能だ。

(上が「ドコモ・バイクシェア」、下が「HELLO CYCLING」で開錠を行う場合)

東京都周辺で比較すると、両者のエリア展開には違いがみえる。

「ドコモ・バイクシェア」の貸し借り拠点(同サービスでは「サイクルポート」と呼ぶ)は千代田区や中央区、新宿区などオフィス街や繁華街が中心なのに対し、「HELLO CYCLING」の拠点(同サービスでは「ステーション」と呼ぶ)は、首都圏から見れば郊外ともいえる埼玉県さいたま市や八王子市にも設置されている。

(都内周辺の「ドコモ・バイクシェア」のサイクルポートの分布)

(都内周辺の「HELLO CYCLING」のステーションの分布)

大手通信キャリア×コンビニがバイクシェアで協業

両社のバイクシェア事業の普及に弾みをつけると期待されるのが、コンビニエンスストア大手の「セブン‐イレブン・ジャパン」との協業だ。

同社は、2016年12月末よりドコモ・バイクシェアと提携し、店舗を利用した「自転車シェアリング」事業を進めている。東京都港区や新宿区、渋谷区を中心に設置店舗を増やしてきた。

(高田馬場3丁目中央店に設置されたサイクルポート)

先日にはソフトバンクグループのOpenStreet 株式会社も提携を発表。11月中にさいたま市内の9店舗に「ステーション」を設置し、順次エリアを拡大するという。

2018年度末までには首都圏や地方都市の1,000店で5,000台に拡大する予定で、「来店客数の増加につなげる」予定だ。

(セブン‐イレブン浦和常盤10丁目店に設置された「HELLO CYCLING」のステーション)

ドコモとソフトバンク、両者のエリア展開の行方

セブン‐イレブンは出店に際してドミナント戦略(一定の地域に集中的に出店する戦略)を採用しているため、店舗間が近接しているエリアが多い。電車やバスを使うほどでもない「ラストワンマイル」の移動手段であるバイクシェアとの親和性は高そうだ。

現状では「ドコモバイクシェア」を設置する店舗は23区内に、「HELLO CYCLING」はさいたま市に位置する店舗と提携している。前者は観光や買い物、ビジネス目的の利用に、後者は地元住民の生活の脚として活躍が期待できるだろう。

(いずれの車両も電動アシストで乗り心地は良好だった)

筆者は自転車を導入してから日の浅い店舗を訪れたためか、買い物客が設置された自転車を物珍しげに眺める様子がみられた。

日常的に店舗を訪れる顧客が日常的に目にすれば、ちょっとした移動が必要な際に利用することもあるだろう。あるいは、自転車の貸し借りついでにコンビニに寄る可能性も高い。セブン‐イレブンにとってもバイクシェア導入のメリットは大きいはずだ。

冒頭に挙げたような国内外のベンチャー企業が参入し始めれば、バイクシェア事業のシェア争いはより激しさを増すだろう。

一足先にサービス展開を進めた大手通信キャリアは、日本におけるバイクシェア事業の覇権を握れるのか。駐輪所を提供する小売業との協業をいかに進められるかも、命運を左右する大きな鍵なのかもしれない。