帝国データバンクは、自社保有の信用調査報告書ファイル「CCR」(200万社収録)などを用い、中国本土および香港・マカオを含む中国企業と直接・間接の取引を行う日本企業について調査・分析を実施し、結果を公表した。
調査によると、2025年10月時点の対中輸出企業は国内で9,250社判明した。2023年の調査(9,270社)と比べ、参入870社・撤退890社で差し引き20社・0.2%の純減にとどまった。関連産業別では「機械・設備」が3,498社で約4割を占め、2023年から5社減でほぼ横ばいとのことだ。次いで「食品分野」は733社・7.9%で、同6社増となったという。

食品のうち、水産加工・販売など水産品を本業とする企業は172社・1.9%となり、2023年(164社)から8社増加した。品目はナマコ加工品、ホタテ、スケソウダラや冷凍・鮮魚製品が多いという。東京電力福島第一原子力発電所の処理水海洋放出に伴う中国の日本産水産物の全面禁輸措置で打撃を受けたものの、取引社数自体は増加傾向で推移したとしている。

さらに、約2,000社を対象にした中国向け販売比率は、1社あたり平均43.8%となり、2023年の42.8%から1.0ポイント上昇した。増加が大きかったのは「金属」(31.7%、+6.8ポイント)で、「機械・設備」(36.4%、+1.8ポイント)、「繊維産業」(39.0%、+3.5ポイント)も上昇したという。一方、「建設関連」(18.8%、▲15.2ポイント)、「医療」(54.4%、▲3.4ポイント)、「美容」(55.4%、▲1.7ポイント)は低下した。中国の対日輸入規制の影響が及ぶ可能性のある「食品」は55.9%から53.9%に、「水産関連」は48.4%から47.8%に低下したという。背景として、チャイナリスク認識の高まりにより、米国・東南アジアなどへの販売先多角化や国内回帰の動きが進んだことも考えられるとしている。
同社は、台湾有事を巡る高市政権の国会答弁をめぐり中国政府が日本産水産品の事実上の全面輸入停止に踏み切った経緯を挙げつつ、足元では日中両政府間で輸出再開に向けた手続き・技術的要件で合意に至り、2025年11月上旬には北海道産冷凍ホタテなどの中国向け出荷が再開したと指摘している。他方で、政治情勢の変化に伴うチャイナリスクが改めて認識されており、企業側では中国依存の低減や第三国市場の開拓などリスク分散が進んだとみているという。短期的には対中輸出比率の高い企業を中心に一定の影響は避けられないが、2023年当時のような「ショック」には至らない可能性もあるとしている。
<参考>
帝国データバンク『中国の対日輸入規制による日本企業の影響調査(2025年)』
