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帝国データバンクは、国内の上場企業を対象に2025年の猛暑による影響や対応について調査・分析を行い、その結果を公表した。
猛暑関連の影響を開示した企業は183社に増加 プラス効果は114社で6割を占める
2025年も記録的な暑さが続くなか、猛暑による需要を自社ビジネスに取り込む企業が増加した。10月16日時点で「猛暑」「酷暑」の影響や対応について情報を開示した上場企業は183社に上り、前年(102社)から79.4%増加した。
このうち、自社の業績や新商品の開発など企業活動に「プラスの効果」があったとする企業は114社で、開示企業全体の約6割を占めた。プラス影響の企業数は前年(63社)から81.0%・51社増加している。増収・増益など業績面でプラス効果を見込む企業は85社となり、前年の57社から49.1%・28社増加した。

小売業が最多の45社でプラス効果 猛暑関連商品の需要が拡大
プラス効果があった114社を業種別にみると、「小売業」が45社で最も多く、全体の約4割を占めた。前年の25社から1.8倍に増加しており、夏物衣料や冷感素材の商品、エアコン、ハンディファンなどの猛暑対策グッズが好調だったという。また、清涼飲料水やアイスクリームなどの「止渇需要」の高まりが販売増につながったとのことだ。
さらに今夏は、涼しい屋内施設を避暑地として開放する商業施設やショッピングセンターも多く見られた。これにより来館者数が増加し、館内テナントの販売や飲食消費の伸びにもつながったという。
このように「避暑需要」を取り込むことで、アミューズメント施設や小売店舗など室内業態が好調に推移した。
「製造業」では30社がプラス効果を報告しており、前年(15社)から倍増した。エアコン関連部材、ボディケア製品、飲料水、耐熱・遮光製品など、幅広い商材で恩恵を受けた企業が多かった。また、「卸売業」(前年8社→12社)や「サービス業」(同8社→11社)も、空調設備関連の販売・施工・メンテナンス需要の増加で業績を伸ばした。

マイナス影響は69社に拡大 外食・屋外関連で苦戦が目立つ
一方、自社の業績や活動に「マイナスの影響」を受けた企業は69社となり、前年の39社から76.9%増加した。業種別ではプラス効果と同様に「小売業」が最も多く28社で、前年(18社)から55.6%・10社増加した。特に飲食店や路面店など、屋外での来店を前提とする業態で外出控えによる客足減少が見られたという。
また、アウトドア用品やガーデニング関連など、屋外活動を前提とした商材の販売も落ち込み、猛暑が商機を奪う結果となった。「製造業」では16社がマイナス影響を報告し、前年(9社)から増加した。濃厚飲料など夏場に需要が落ちる商材の販売低迷に加え、原材料費の高騰により食料品メーカーを中心に収益悪化が目立ったとのことだ。
猛暑による家計支出は月3512円増の試算 二極化が進行
帝国データバンクが8月に行った試算によると、2025年夏の東京都内における家計消費支出は、猛暑の影響で世帯あたり月平均3512円増加すると見込まれている。飲料や冷菓、調理済み食品、エアコンなどの消費は増加する一方、外食など外出を伴う支出は減少する傾向があり、猛暑がもたらす経済効果には業態ごとに差が生じている。
また、物価高や節約志向の高まりから、夏の猛暑需要の反動として秋以降の支出を控える動きも見られる。同社は、気温上昇の長期化により今後も猛暑が企業業績に与える影響は一層拡大するとみており、企業の戦略や取扱商品によって「業績の二極化」が進む可能性を指摘している。
<参考>
帝国データバンク『上場企業「今年の猛暑」影響調査』
