帝国データバンクは、従業員の離職や採用難など人手不足を要因とする「人手不足倒産」について調査を実施し、2025年度上半期(4〜9月)の件数が214件にのぼり、上半期としては3年連続で過去最多を更新したと発表した。

人手不足倒産は、法的整理による倒産で、負債1,000万円以上を対象としており、2024年度上半期(163件)から51件増加したかたちとなる。とくに、労働集約型の業種で倒産が目立っている。

人手不足倒産 年度上半期の推移

業種別にみると、軽貨物を含めたトラック運送業にあたる「道路貨物運送業」での人手不足倒産が33件と最多となった。これは前年同期(19件)から14件の増加であり、ドライバー不足による受注減や人件費の高騰、採用難によって事業の継続が困難となった事例が相次いでいるという。

そのほか、介護職員の人手不足が続く「老人福祉事業」(11件、前年同期比+3件)や、派遣スタッフの確保が困難な「労働者派遣業」(8件、同+5件)など、労働力に大きく依存するサービス業での増加が目立った。

帝国データバンクが7月に実施した「価格転嫁に関する実態調査」によると、コスト上昇分を価格に転嫁できている割合(価格転嫁率)は全業種で39.4%となり、2年半ぶりに4割を下回った。なかでも人手不足倒産が多発している「道路貨物運送業」では28.6%にとどまり、他業種と比べて10ポイント以上も低い。

現場からは「人件費や資材等が上昇している一方、運賃に転嫁できず利益確保が難しい」といった声があがっており、コスト増への対応が追いつかない状況が続いているという。

2025年度に改定された全国加重平均の最低賃金は1,121円で、昨年度から66円の引き上げとなった。この上昇幅は過去最高となっており、今後も賃上げ機運が続く見通しとのことだ。

賃上げ余力の乏しい中小・小規模事業者にとっては大きな負担となることが予想され、採用難や人件費高騰による「賃上げ難型」人手不足倒産がさらに増加する懸念があるとしている。

<参考>
帝国データバンク『「人手不足倒産」に関する調査