ジンジブは、2026年3月卒(以下、26卒)の高卒採用の動向について調査を実施し、結果を公表した。

■高卒の求人倍率“25卒4.1倍”、26卒も採用競争の過熱を予測

厚生労働省のデータ(※)によると、2025年3月末の高卒採用の求人倍率は4.10倍となった。約12.1万人の就職者に対し、約49.9万人の求人があったことを示し、企業が高校生の新卒人材を強く求めている状況が明らかに。

2025年2月実施の「25卒振り返りアンケート」(以下、<1>25卒振り返り)では、企業の約7割が採用計画に対して未達と回答。

一方、計画通り採用できた企業は24.6%にとどまり、60.6%が「採用ができたものの採用計画に対して未達」、14.8%が「採用ができなかった」と回答した。

25卒の高校新卒の採用人数

採用が充足しなかった理由では、30.2%が「他社の求人増」と回答しており、企業間の人材採用競争が激化していることがうかがえる。

また、同傾向は26卒でも続く見込みで、2025年5月に実施した「26卒採用動向アンケート」(以下、<2>26卒予定)では、26卒で求人募集人数を「増やす」と回答した企業は33.5%に達し、「再開する」「新たに始める」を含めると36.2%に。

その一方で、「減らす」と回答した企業はわずか3.3%にとどまった。

26卒の高校新卒の採用計画

■企業が高卒人材を熱望

前トピックからも読み取れるように、高卒採用の求人募集件数は増加傾向にある。「<2>26卒予定」によると、企業が高卒人材を強く求める理由として、「若さや体力」「素直さ」といった点が高く評価されているという。

また、高卒採用を実施する理由では、「若手人材の層を厚くするため」「人材不足のため」「高卒採用が自社に合っているため」といった声もあり、企業の将来を担う人材として、高卒生への期待が高まっていることが明らかに。

26卒の高卒採用を実施する理由

■「初任給アップ」や「生活応援」など就職後を後押し

企業は、高校生を採用するための具体的な待遇向上にも力を入れている。

「<2>26卒予定」では、25卒では83.1%が24卒より初任給を引き上げ、26卒では72.1%が25卒と比較して、初任給の引き上げを予定していると回答。

その理由として「物価上昇に伴い社員の生活を支えるため」「社員の定着のため」「高卒採用の応募を増やすため」があがった。

26卒の高卒採用の初任給引き上げ予定

また、初任給の引き上げだけでなく、新生活を支援する制度も強化されており、「26卒予定」では、「社員食堂や昼食代支給」「住宅補助」などの福利厚生を充実させる企業が増えていることが明らかになった。

26卒の高卒社員の社会人生活スタートをフォローするための取り組み

さらに、働き方の見直しに関する質問では、「残業時間の削減」や「休暇取得の促進」以外にも「働き方の選択肢(複数の求人を用意)」といった回答もあがった。

■高校生の就職活動の多様化

高校生の就職活動において、企業情報の収集方法は大きく変化している。

「<1>25卒振り返り」によると、応募のきっかけとなったものは依然として「学校の求人票」が最多に。

一方、「自社HP」「ハローワーク合同企業説明会」に加え、「求人サイト」、「民間企業の合同企業説明会」、「SNS」、「動画」といったデジタルツールや民間サービスから応募につながったという回答も増加。

25卒で採用に至った高校生の応募のきっかけ

これに対応し、「<2>26卒予定」では、企業が強化する採用ツールとして「会社のホームページ」以外に、「採用動画」、「企業公式SNS」などデジタルを活用したツールがあがった。

26卒の高卒採用で強化する採用ツール

また、早期からの「仕事体験」が主流になりつつある。「<2>26卒予定」の7月の求人解禁前の取り組みについての質問では、「インターンシップ」、「オープン・カンパニー」を重視すると回答されており、高校生が実際に働く現場を体験する機会の需要が高いことが示された。

■企業側の戦略的な採用と入社後育成の深化

また、企業は採用活動だけでなく、入社後の育成にも力を入れている。

「<2>26卒予定」によると、高卒社員のキャリアアップ支援の取り組みでは「資格取得の支援」、「キャリア面談の実施」、「研修・リスキリングの拡充」を重視していることがわかった。

また、社会人スタートのフォローでの「社会人の基礎研修の拡充」「メンター制度/ブラザー制度」という回答からも、企業は手厚い育成・定着支援を具体的に推進していることが明らかに。

26卒の高卒社員のキャリアアップ支援の取り組み

■就職活動でのミスマッチを防ぐ取り組み

ミスマッチを防ぐための「本音」と「体験」の開示も重要視されている。

「<2>26卒予定」では、企業はミスマッチ防止の取り組みで「業界について伝える」、「良いところだけではなく大変な部分を伝える」といった本音の情報開示を重視していることが分かった。

さらに、「職場見学などで働く現場を見てもらう」、「仕事体験できる機会をつくる」など、実践的な体験の場を提供することで、入社後のギャップを軽減する工夫をしていることも明らかになった。

26卒の高卒採用での企業のミスマッチ防止の取り組み

<参考>
ジンジブ『高卒採用担当者への25卒振り返りアンケート・高卒採用担当者への26卒採用動向アンケート