刻々と変化する地球環境に対しては、グローバルなレベルでの対応が急務となる。気候変動や生物多様性などの課題に対して企業が果たすべき役割は大きいが、継続的かつスピーディーな取り組みを推進するためには、広範なパートナーシップ、ビジネスモデルの確立も欠かせない。サステナビリティと価値創造を両立する視点は、今後ますます重要になるだろう。

サステナブルなビジネスを、グローバルで実践しているのがNTTグループだ。中期経営戦略として「NTTは挑戦し続けます。新たな価値創造と地球のサステナビリティのために」を掲げる同グループは、高度なテクノロジーによりサステナブルな社会を実現すべく、国内外でさまざまな施策を推進している。これらのノウハウを幅広く共有するため、2013年より毎年開催しているのが、「NTT GROUP サステナビリティカンファレンス」だ(※1)。カンファレンスでは各社の優れた取り組みを表彰することで、社内外のステークホルダーが持続可能な社会に向け協調することを目指している。

AMPでは昨年に続き、2025年度の「NTT GROUP サステナビリティカンファレンス」を取材。最優秀賞に入選した5件の事例を紹介するとともに、NTTグループの共創事例から、サステナブルなビジネスモデルを探っていく。

国内外の知見が集まる、NTTのサステナビリティカンファレンス

「NTT GROUP サステナビリティカンファレンス」は、国内外に広がるNTTグループ各社の、持続可能な社会に貢献する施策を紹介・共有する場だ。12回目となる今回は、18カ国・地域より過去最大となる全169件の施策がエントリー。審査プロセスを経て、最優秀賞5件、優秀賞5件が表彰された。

表彰式には日本電信電話株式会社(以下、NTT)から島田明代表取締役社長および経営幹部、グループ主要各社から副社長などが列席。プレゼンでは、先端技術を活用したユニークなアイデアの他、国際的な社会課題へのアプローチまで、幅広いバリエーションのビジネスモデルが発表された。NTT 経営企画部門 サステナビリティ推進室 主査の五味恵理華氏によると、審査基準には五つの軸があるという。

「『社会課題解決への貢献度が高いか​』『NTTグループの独自性、先進性があるか​『ステークホルダーのニーズを満たせているか』『企業の成長、事業の広がりが見込めるか​』​『対外的訴求力があるか』​という観点から、各施策を審査しています。NTTグループは2023年に中期経営戦略『New value creation & Sustainability 2027 powered by IOWN』を策定。サステナビリティ関連ビジネスのさらなる拡大と推進に向け、各社が連携しています。そこで重要になるのが、審査基準にある五つの指針です」

NTT 経営企画部門 サステナビリティ推進室 五味恵理華氏

中期経営戦略においてNTTグループが特に注力するのが、“企業としての成長”と“社会課題の解決”の同時実現だ。「NTT グループサステナビリティ憲章」でも掲げられるこの方針は、相反する概念や事象を包摂する点に特徴がある。

「グローバルとローカル、サイバーとフィジカル、環境・疫病と経済、人権問題における権利と義務など、現代社会には単純な二元論では捉えられない概念が同時に存在します。例えばデジタル化にも正と負の側面があるように、一つの事象は見る主体によっても意味が異なるものです。未来に向けて必要になるのは、多様な価値観を認め合う、“パラコンシステント(同時並列)”な社会。そこにNTTグループが描くサステナビリティがあります」

サステナビリティカンファレンスにエントリーされたのは、この憲章に沿った施策の数々だ。ビジネスを通じて社会課題を解決するノウハウが、グローバルに広がる各社に共有される。

「ビジネスとサステナビリティは二者択一ではなく、統合することで価値が生まれます。そして世界中で発生する諸課題に対応するためには、ソリューションの水平展開も欠かせません。ICTを活用したデジタルプラットフォームの構築力、国内外で実践される多彩なステークホルダーとの連携力は、NTTグループが持つ最大の強みです。高度な知見を結集したビジネスモデルを、グループ内外に拡大させることを目的に、サステナビリティカンファレンスを企画しています」

さまざまな対立概念を包摂するNTTグループの施策は、社会課題に挑む多くのビジネスパーソンにもヒントを与えてくれるだろう。具体的にどのような事業を創出しているのか、最優秀賞を受賞した国内・海外の五つの施策を見ていく。

AI搭載のコンピュータービジョンで、ダム周辺の生態系をモニタリング

一つ目の受賞施策は、NTT DATA Portugal(ポルトガル)が取り組む「水生生物モニタリングにおけるAI搭載のコンピュータービジョン」。ダム周辺に生息する水生生物の多様性を保護するためのソリューションだ。

NTT DATA Portugal AI & Intelligent Solutions José VARELA氏

水力発電の中心であるダムは、再生エネルギーへのシフトで重要な役割を果たす一方で、生態系への影響が懸念されている。ダム建設に伴う環境アセスメントの一環として、魚類の生息状況などへの影響評価に取り組んでいるのが、ポルトガルだ。ダムの建設前、建設中、建設後の各段階において、種の存続や生息環境の変化を監視するプロセスの設置が法律により義務化されている。

水中のモニタリングは通常、生物学者をはじめとするダムのスタッフが膨大な量のカメラ映像を目視で分析し、ダム内における魚の通り道である「魚道」を通る魚の種を数えていく。しかし「魚道」の水は濁っているケースが大半であり、手動での作業は困難だ。時間やコストを要する他、検出精度も60%を下回っており、データ収集・分析プロセスの改善が求められてきた。

この課題に対し、AI駆動型のコンピュータービジョン・モデル(※2)を開発したのが、NTT DATA Portugalだ。同社はポルトガル国内の電力大手・EDP社との協業により、魚の種類・個体数をAIにより測定する「FishNet Vision」を構築。水中映像を綿密に解析し、包括的なデータセットを作成することで、95%以上の精度で魚を検出することに成功した。

AI技術を用いて測定することで、魚の動きを正確に検知し追跡が可能になる

高精度の映像検知を可能にしたのは、機械学習とコンピュータービジョンにおける専門技術である。「FishNet Vision」では、データセットからラベル付けされたサンプルを基に、複数のモデルを評価しながら、精度面において最適なものが選択されている。このラベル付けに当たっては、ラベリングチームを専門技術に精通したエンジニアで構成し、効果的な訓練データセットの作成ノウハウを総動員することで、精度向上が実現した。

NTT DATA PortugalとEDP社の協業は、20年以上前に始動している。アプリケーション保守やフロントエンド開発などで築かれた関係性をベースに、データアナリティクス領域において連携を強化。現在は発電、ネットワーク、エネルギー取引・管理、コーポレート管理など、多くの部門でNTT DATAの専門技術が用いられている。今回の「FishNet Vision」は、EDP社におけるサステナビリティの実現支援を目的にスタートしたプロジェクトで、先進技術と持続可能なビジネスの統合に向けた、長年にわたるパートナーシップが結実した。

ソリューションは現在、ポルトガル国内3カ所のダムで、スタッフの調査業務に活用されている。効率化により生まれたリソースが、高価値種の同定活動といった生物学者たちの本来業務に充てられており、水生生物多様性の研究にも貢献しているという。

高い拡張性を備える「FishNet Vision」は、世界中のダム運営事業者の課題を解決するポテンシャルを持つ。エネルギー供給と生態系保護を両立したポルトガルでの成功モデルは、他の国・地域にも応用されていくだろう。

ブロックチェーン技術の導入で、ウォータークレジットの透明性を向上

二つ目の受賞施策、NTT DATA EUROPE & LATAM(スペイン)のソリューションは、「MeetZero ウォーター・クレジット(以下、MeetZero)」。ブロックチェーン技術を基盤とし、ウォータークレジットの認証や発行を行うプラットフォームだ。

NTT DATA EUROPE & LATAM GREEN ENGINEERING Green Transition & Sustainability Strategy Carlos REPARAZ氏

気候変動対策として近年注目される「ウォーターポジティブ」は、企業などが地球に及ぼす影響を相殺する環境クレジットの一つ。炭素(カーボンクレジット)と同様、水における自然への供給量を、事業での使用量よりも多くする概念を指す。企業が節約や再利用、浄化した水を定量化し生成したウォータークレジットを、環境負荷の相殺を求める他の団体に販売することで、金銭的価値が付与される仕組みだ。

ウォーターポジティブのプロジェクトを実施する際には、クレジットの検証や確認が必要となる。しかし現在、多くのクレジットは手動で管理されており、取引の履歴を追跡することはできない。不十分なトレーサビリティにより、取引の透明性が確保されない点が課題視されている。

この課題にアプローチしたのが、NTT DATA EUROPE & LATAMの取引プラットフォーム「MeetZero」だ。クレジットの認証、発行、モニタリングにブロックチェーン技術を活用することで、手続きと情報記録のデジタル化、取引の追跡を実現。全ての取引のトレーサビリティを一元管理することで、透明性の確保が可能になった。

協業先は、世界的に水管理サービスを提供するVeolia社である。同社はスペインで展開するウォータークレジット(CAPs ※3)の創出プロジェクトにおいて、「MeetZero」を導入。安全かつ効率的な取引を実施することで、13,065のCAPsを創出した。

プラットフォーム「MeetZero」によって市場におけるクレジット取引の一元管理が可能に

スペインでは水資源に関するさまざまな規制や法律が制定されており、ウォータークレジットの管理にも基準が設けられている。これらを遵守する仕様になっている「MeetZero」は、同国内での競争優位性も高い。

「MeetZero」は現在、Veolia社のプロジェクトにおいて、データのアップロードと実証が完遂している。プラットフォームの機能性と信頼性が示されたことで、新たな潜在ユーザーからの関心が高まっているという。また、プラットフォーム内のマーケットプレイスを活用することでクレジットのオンライン販売が可能。ビジネスにつなげる仕組みを構築することで、プロジェクト推進を加速させやすい点も特徴だ。

欧州のウォーターポジティブ市場は約1兆7,000億ユーロと評価されており、今後数年間で飛躍的に成長する可能性が高い。社会課題の解決が、ビジネスチャンスにつながっている好例といえるだろう。

既存の地域資源を統合し、循環型経済の創出に挑む

ここからは国内の施策を紹介する。NTT東日本の「エネルギーの地産地消による循環型社会の形成」は、群馬県渋川市を中心に推進されているプロジェクト。同社は「地域循環型社会の共創」というパーパスの下、さまざまな地域の課題にアプローチしてきた。その一環として着目したのが、未利用資源の有効活用だ。

NTT東日本 ビジネス開発本部 営業戦略推進部 南雲雄氏

少子高齢化や人口減少が進む渋川市では、廃校の増加、林地残材の長期放置、農作物の廃棄などの課題を抱えている。一方、これらは“地域に眠る資源”と捉えることもでき、再生を通じた循環型経済の創出も期待できる。そこでNTT東日本は、廃校となった旧上白井小学校を拠点に、木質バイオマスのエネルギー活用の実証を2023年にスタート。自然エネルギーの拡大に取り組むフォレストエナジー社との協業により、地産地消のエネルギー循環に挑み始めた。

フォレストエナジー社が運用する小型木質バイオマス熱電併給機「Volter」は、通常の大規模な木質バイオマス発電機と異なり、小規模分散型の熱電併給を特徴とする。輸入材に頼らず、地域の森林資源量に合わせてコンパクトに導入できる点がメリットであり、本施策のような廃校にも設置しやすい。しかし経済性を高める上では発電・売電が必要である上、熱エネルギーの供給先も限られている。同時に、廃校の利活用においては地域連携や雇用創出、レジリエンス向上など、渋川市からも要望が寄せられていた。

これらの課題を統合的に解決する方法を模索し、たどり着いたのがシイタケとドライフルーツの生産だ。シイタケの栽培やドライフルーツの製造には温度や湿度の適切な管理が必要だが、「Volter」の熱供給を活かすことでそれを実現し、地域の循環型経済モデルにつなげている。

渋川市における廃校を活用した木質バイオマスのエネルギー活用の実証。ドライフルーツなどの原料には規格外のフルーツが使用される

導入実証においては、NTTグループのICTが結集された。ICT温室の設計施工に実績を持つNTTアグリテクノロジーの技術により、スピーディーかつ確実な生産環境を旧上白井小学校の校庭に構築。シイタケの圃場(ほじょう)では温湿度センサーおよびCO2センサーを、ドライフルーツ製造所には温湿度センサーおよびAIカメラを設置し、常時遠隔で制御できる仕組みを整えた。これらの技術により、生産者の勘と経験に支えられていた作業が均一化され、品質の安定や雇用の創出が実現。人手不足解消の一手として、1次産業の活性化にも貢献する。

エネルギーの地産地消、ICTを活用した次世代施設園芸、原材料・廃棄物の再利用を組み合わせた渋川市のモデルでは、年間エネルギーコストを100万円低下させることに成功している。今後は同市の約20倍の規模で他の自治体への水平展開も計画されており、地域資源を複合的に活用するモデルの波及が期待される。

GISに連動するプラットフォームで、森林クレジットの普及を促す

四つ目の施策は、NTTコミュニケーションズの「森かち~カーボンクレジットで森林の価値を創造」。住友林業との協業により開発された、カーボンクレジットの認証・取引プラットフォームだ。

NTTコミュニケーションズ ビジネスソリューション本部 スマートワールドビジネス部 スマートインダストリー推進室 藤浪俊企氏

日本ではJ-クレジット制度(※4)の下、企業における森林クレジットの取引が行われている。森林クレジットは気候変動対策のみならず、水源涵養、土砂災害の防止、生物多様性の保全などにも貢献する公益的価値の高いクレジットだが、その創出量は再エネ・省エネ由来の削減系クレジットの約10%と、低い水準にとどまっている。背景には、煩雑な手続きや管理に伴うクレジットの創出者、審査機関、購入者の負担があり、三者を包括的に支援するサービスが求められていた。

このニーズに応えたのが、NTTコミュニケーションズと住友林業だ。両社は情報交換を通じて森林を取り巻く課題を共有し、協業によって「森林価値創造プラットフォーム(森かち)」を開発。「森かち」は、森林クレジットの創出者、審査機関、購入者に対し、発行プロセスの効率化とクレジットの信頼性向上を実現するプラットフォームとして、2024年より提供が開始された。

森林価値創造プラットフォーム(森かち)の仕組み

「森かち」の最大の特徴は、地理情報システム(GIS)との連動だ。デジタル化された膨大な紙資料をGISとひもづけてクラウド上で管理することが可能で、クレジットの創出者はデータ運用の負担を軽減できる。一方、審査機関は、GISで位置情報を確認しながらオンラインで書類を審査することで、精度向上と効率化を実現。さらに購入者は、プロジェクト対象森林の位置と書類などを比較し、簡単かつ正確に森林情報を確認できるようになった。

協業においては、両社のノウハウが統合されている。住友林業はシステムの要件定義やコンサルティングサービスの提供を、NTTコミュニケーションズはプラットフォームサービスの開発と運用を担当。またセールス・マーケティング面では、森林や林業のノウハウを持つ住友林業が創出サイドを、ICTやシステムの安定性を担うNTTコミュニケーションズが購入サイドを担当することで、両社の強みが発揮されている。

「森かち」では既に取引が行われており、出品クレジット量は34,354t(CO2)となっている。クレジット発行量の簡易シミュレーション、生成AIを活用した販売ページの作成支援など、機能が拡充されていく予定だ。

脱炭素のみならず、担い手や資金が不足する林業の維持に貢献する点も「森かち」のサステナブルな価値だろう。将来的には、森林から発生する多様な公益的価値のクレジット化に向け、サービスを拡充する構想もある。森林や木材の循環利用をICTで活性化する未来が、徐々に近づいているのだ。

企業横断のデータ連携で、自動車業界の脱炭素を支援

最後に紹介するのは、NTTデータグループの「バッテリートレーサビリティ基盤の実現」。自動車業界のサステナビリティに向け、電動車向けバッテリーに関する情報を可視化するソリューションだ。

NTTデータ 第一インダストリ統括事業本部 自動車事業部 布井真実子氏

カーボンニュートラルや資源循環型社会の実現に向けては、製造、利用、リユース・リサイクル、廃棄など、製品における一連のライフサイクルに携わる各企業の協力が不可欠となる。そこで重要になるのは、CO2排出量や素材の含有量などのデータを適切に流通させることだ。しかし規模や派閥、IT基盤が異なる企業同士が一気通貫でデータを共有するには、統一化されたルール、中立的に運営されるデジタルインフラが必要であり、障壁が高いとされてきた。

こうした中、経済産業省は横断的なデータ共有やシステム連携を進めるべく、「Ouranos Ecosystem(ウラノス・エコシステム ※5)」を提唱。そのユースケースの第1弾として、2024年に商用サービスが開始されたのが、「バッテリートレーサビリティプラットフォーム」である。

バッテリートレーサビリティプラットフォームの仕組み

「バッテリートレーサビリティプラットフォーム」は、電気自動車向けバッテリーの製造、利用、廃棄に至る各プロセスにおいて、カーボンフットプリント情報の集計やリサイクル・リユース情報の可視化を実現。各企業がデータ主権を確保しながら、安全にデータ流通を行うことで、自動車業界のビジネス革新が支援される仕組みになっている。

企業横断の協調領域におけるシステムの設計は、困難を極めた。完成車メーカーや製品・部品サプライヤーはもちろん、各社に向けてカーボンフットプリントの算出システムを提供するアプリケーションベンダー、経済産業省や情報処理推進機構(※6)など、ステークホルダーが多岐にわたるためだ。各所の方向性を同じくするため、NTTデータグループは、システムの機能と業務設計、製品カーボンフットプリントの算出ルールなどの議論に時間を割き、入念な説明とヒアリングを重ねてきた。着実に形成された合意内容は情報処理推進機構によってガイドラインとしてまとめられ、設計方針の理解・共有が実現。その結果、システム構築は迅速に進められ、1年未満という短期間での実装が達成された。

NTTデータグループ/NTTデータでは近年、組織や業界、国境を超えたデータ連携の研究開発を強化している。今回のシステム構築は、データ連携基盤領域で蓄積された国内外の知見が生かされた形だ。現在「バッテリートレーサビリティプラットフォーム」は多くのユーザー企業に提供されており、今後はバッテリー以外の自動車関連部品サプライヤー、廃棄物処理や再利用を担う静脈産業向けにもサービスを提供していくという。

需要が拡大傾向にあるリチウムイオン電池は、製造・利用における環境負荷が高い。同プロジェクトはCO2削減への貢献を期待できるとともに、ビジネスとしての継続性も見込むことができる。また、蓄積されたノウハウを応用すれば、他の産業や国・地域においてもプラットフォームの構築が可能であり、すでに進んでいるプロジェクトもあるという。協調領域でのデータ連携が幅広い業界に浸透すれば、社会全体のサステナビリティも加速するだろう。

サステナブルなビジネスで広がる、パートナーシップの輪

以上、最優秀賞を受賞した五つの施策を見てきた。各社がアプローチしているのは、世界的に深刻化する気候変動や生態系の危機だ。地球環境に取り組む施策のエントリーは年々増加していると、五味氏は振り返る。

「自然資本への注目が、国際的に高まっているのは間違いありません。社会的なニーズに呼応し、事業化に至るケースも増えているのでしょう。また、エントリーされた施策には、医療や教育、人権、地域など、さまざまな課題に取り組む施策も多く見られました。各国・地域に拠点を持つNTTグループは、広範な社会課題にアプローチできるはずです。サステナブルな取り組みが局所的な思想にとどまらず、ワールドワイドに広がっていくことを期待します」

サステナビリティカンファレンスの企画に従事する五味氏は、「新たな価値創造モデルを、社会全体に発信したい」と、思いを述べた。

「『社会課題の解決こそがビジネスになり得る』『サステナビリティを念頭に置いたビジネスデザインの必要性が高まっている』というマインドがグループ各社に広がり、新たな事業のヒントにつながることを期待します。そして、社外のステークホルダーの皆さまにも施策を知っていただき、パートナーシップの輪が広がるのであれば幸いです。これからもNTTグループが“地球のサステナビリティ”に貢献できるよう、新たな価値創造を促進していきたいと思います」

最先端かつサステナブルなビジネスモデルが世界中から集まる「NTT GROUP サステナビリティカンファレンス」。今回紹介した取り組みが種となり、国境を超えた連携が育まれることを期待したい。

取材・文:相澤優太
写真:水戸孝造