提供:IVS2024 KYOTO / IVS Crypto 2024 KYOTO

2007年に初開催され、2024年で18年目を迎える「IVS LAUNCHPAD」。過去に登壇した企業の60社がEXIT、10億円以上の資金調達を実施した急成長企業が35社以上あり、「スタートアップの登竜門」とも呼ばれるようにイベントに。

2024年は、7月4日〜6日に京都パルスプラザにて「IVS2024 KYOTO / IVS Crypto 2024 KYOTO」が実施された。

本記事では、熱戦が繰り広げられたピッチイベント「IVS2024 LAUNCHPAD KYOTO」の様子をレポートする。登壇した15社はいずれも独自性や高い技術力があり、グローバル市場に進出している企業も。

前編・後編に分けて、全15社のビジネスモデルおよび優勝賞金1,000万円を獲得したスタートアップを紹介したい。

<emole>1話3分のショートドラマアプリ「BUMP」

1話3分のショートドラマアプリ「BUMP」(BUMPの公式ホームページより)

2018年創業のemoleは、1話3分のショートドラマを配信するアプリ「BUMP」を提供している。登壇した代表取締役の澤村直道氏いわく、中国では2020年にショートドラマの市場が誕生し、1年で1,000億円の市場に拡大、2024年は8,000億円まで伸びているとのこと。2029年には、世界規模で8.7兆円規模になると推定されている。

emoleでは、2022年12月に「BUMP」をリリース。最初の数話は無料で視聴でき、途中から「待つと0円(1日待つと1話が視聴できる)」、「CMで0円(CMを見ると視聴できる)」など条件により無料で視聴できる。その後は、1話97円のコインを消費して視聴する。

リアルタイムのコメント投稿機能やドラマの15秒を切り取ってSNSシェアできる機能も好評だ。リリースから1年半で125万ダウンロードを突破し、アプリ内の課金率は24%に。5月には韓国進出を果たし、グローバルで成長を見据えているという。

AI VOLT>実在する人物そっくりのAIを生成

AI VOLTがプレゼンテーションで紹介したAI(IVS LAUNCHPADの公式配信より)

2023年創業のAI VOLTは、実在する人物の人格・個性を再現して本物そっくりなAIの開発に強みを持つ。開発したAIキャラクターは、Web上やホログラムで話したり、歌ったり、踊ったりできる。同社のAI開発における特徴は以下の3つだ。

1.カスタム性(国内初)
特定の人物のAIを画像1枚〜、10秒の音声で作成可能

2.リアルタイム性
リアルタイムでの対話が可能で、呼びかけに対して15秒以内に対応を生成する

3.低コスト運用
独自モデルの構築により従来の1/20で運用可能

2024年5月中旬から法人の問い合わせを開放し、現在20社以上と交渉が進んでいるそうだ。

<esa>廃棄されていたプラスチックを再生樹脂に

複合素材プラスチックを再生樹脂にリサイクル(IVS LAUNCHPADの公式配信より)

2022年創業のesaは、これまで廃棄されていた複合素材プラスチックを再生樹脂にリサイクルし、それをプラスチックペレットとして販売している。

同社いわく、排出された産業廃棄プラスチックのうち、品質や技術的な観点から、リサイクルして生まれ変わるのは約25%にとどまり、焼却した熱で発電などをおこなうエネルギー回収のため、約60%は燃やされている。残りの15%は埋め立てや発展途上国へ処理が横流しされているという。

esaでは、特別なスクリューによる混練技術と素材ごとに調整可能な温度調整により、リサイクルが難しかった複合素材プラスチックを再生樹脂に変え、自社製品の「Repla」として発売している。

共同創業社の黒川 周子氏は、「プラスチックのエコシステムを取り巻くすべての人がCO2削減に寄与できるビジネスモデルだ」と主張した。

<komham>生ごみを高速分解する微生物群「コムハム」

komhamが開発した「スマートコンポスト」(IVS LAUNCHPADの公式配信より)

2020年に創業したkomhamは、生ごみの高速分解を得意とする微生物群「コムハム」を活用して、スマートコンポストを開発。コムハムには、生ごみを最短1日で最大98%まで分解する特徴があり、通常、数週間かけて発酵させる堆肥化を高速で行うことができる。

コムハムは代表取締役の西山すの氏の父親が、15年前から生ゴミを分解し続けて変異した新種の微生物とのこと。そうした優位性から「追従できる企業はない」と西山氏。同社のスマートコンポストは、渋谷区などの12自治体、13社に導入実績がある。

すでに大型の堆肥化施設を持っている事業者向けには、コムハムを販売するビジネスモデルもある。例えば1日50トンを処理する堆肥化施設を持つ場合、初年度に1億円、その後、毎年4,000万円のランニングコストがかかる。莫大な費用に思えるが、生ゴミの受入量を増やせるため設備投資なしに売り上げを倍にでき、導入初年度にコムハムの投資分は回収できるという。

<ファミリーテック>家族のための「決済」と「アカウント」を提供

ファミリーテックが提供する「ファミリーバンク」(ファミリーテックの公式ホームページより)

2021年に創業したファミリーテックは、「家族」にフォーカスしたフィンテックソリューションを提供する。具体的に「ファミリーバンク」と「ファミリーカード」の2つのサービスがあり、前者は家族で使える銀行口座や共有メールアドレス、ID、パスワード、後者は夫婦で使えるクレジットカードを提供している。

ファミリーテックでは、銀行口座とクレジットカードのシステムを自社開発しており、低コストで運用できる強みがあるという。現在はプロダクトのローンチから約2年が経過しており、登録ユーザー数・アクティブユーザー数ともに右肩上がりで伸びている。

<LANDIT>世界中の駐車場をデジタル化

衛生×カメラ×AIで駐車場をデジタル化(IVS LAUNCHPADの公式配信より)

2021年に創業したLANDITは、衛星データ・カメラ・AI画像認識技術を組み合わせ、世界中の駐車場をデジタル化して、以下5つの駐車場関連サービスを提供している。

1.建設や物流現場などで必要になる駐車場を探せる「at PORT」
2.目的地近くの駐車場を探して確保できる「PIT PORT」
3.条件に合った駐車場を探せる「PARK STOCK」
4.駐車場サイトを自動作成できる「SYNC PORT」
5.駐車場の遠隔監視ができる「AIMO」

利用者数は右肩上がりで、代表取締役社長 CEOの藤林謙太氏は、グローバル市場進出への意思も示した。

<Valtec>AIとドローンを使用した魚群探知システム

ドローンとAIを活用した魚群探知システムを提供(IVS LAUNCHPADの公式配信より)

台湾発のValtecがターゲットとするマグロ産業は、年間6.5兆円の市場で、その9割が魚群探知にヘリコプターを使用しているという。一方で、ヘリコプターは運搬や整備に多大な労力がかかり、コストも高く、危険も伴う。さらに、結局は人の目で魚群を探すため認識ミスも避けられない。

そこで、Valtecではヘリコプターの代わりにドローンを使い、AIがドローンを操作、そしてドローンが撮影した映像は遠隔で一元管理ができる。コンピューターが画像を自動的に認識するため、従来の方法よりも精度良く魚群を探知できるという。

ビジネスモデルはSaaSのサブスクリプションで、1隻あたりリコプターの賃料と同程度の月額780万円となる。現在、台湾、フィリピン、パプアニューギニアの地域最大級の漁船団を顧客に持つ。さらに、世界トップのマグロ漁獲量を誇る日本でパートナーシップを模索していると、創業者 兼CEOのJohn Keh氏は締めくくった。

<Remedies>書きたい内容に集中できるAI文章校正

AI文章校正ツール「wordrabbit」の使用イメージ(wordrabbitの公式ホームページより)

2017年に創業したRemediesは、文章校正をAIで効率化するツール「wordrabbit」を提供している。同ツールは日本語専用に開発されており、誤字脱字にとどまらず、誤解を与える恐れのある不当表示やガイドラインに違反している表現、表記ゆれなど、ビジネスに必要な修正提案をするのが強みとなっている。また、独自のルールを設定してドキュメントの品質を一定に保つことも可能となる。

料金タイプは、文法やミスタイプをチェックする「スターター」が880円(一人あたりの月額料金)、ビジネス向けに、明瞭で誤読のない文章を書くための検出と提案をする「プロフェッショナル」が3,100円(同)、チームで表記を統一しながら、正しい文章を書くための検出と提案をする「エンタープライズ」(価格は要問合せ)の3つがある。

<BoostDraft>リーガル文書向けIDE

法律文書エディタ「BoostDraft」のイメージ(IVS LAUNCHPADの公式配信より)

2021年に創業したBoostDraftは、ITエンジニアの発想で開発された法律文書エディタ「BoostDraft」を提供している。同ツールは法律家が本来の仕事に集中することを目的としており、AIが法的な判断を下すのではないという。

搭載している機能は、法律家が法的な判断を下すための条文や法令、定義語の参照先や定義をすぐに確認できたり、文章の体裁や条項の追加によるズレを瞬時に整えたり、定義がなされていない言葉を確認できたり、といった作業の効率化に貢献するものだ。

法律事務所やキッコーマンなどの大手企業の法務部などにも多く導入された実績があり、海外のクライアントとも取引があるとのこと。プレゼンテーションや公式ホームページではビジネスモデルに触れられていないが、創業1年目から一環して黒字と順調に推移しているという。

後編では7社のプレゼンと優勝企業をレポート

続く後編では、残り7社のプレゼンの様子と受賞企業について紹介したい。

文:小林香織