東京ゲームショウ2017(主催:一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会、共催:日経BP社)が9月21日(木)から24日(日)までの4日間、千葉市の幕張メッセで開催された。
今年で27回目の開催となる同ショウは、最新のコンピュータエンターテインメントが一堂に会する総合展示会として注目を集めており、出展した609企業・団体の半数以上が海外からの参加であることからも、世界規模のイベントとして成熟していることがわかる。
会期中の総来場者数こそ25万4311人と、昨年、一昨年を下回る数字となったが、ビジネスマッチングシステム「アジア・ビジネス・ゲートウェイ」に登録した企業は1250社と昨年を上回り、B to Bの商談をはじめ国際的ゲームビジネスのハブとして結果を残すことができたと、主催者は手応えを感じている。
対戦、実況、観戦。エンターテインメント化がゲームの概念を変える。
広大な会場を埋め尽くす大小のブースには、さまざまなタイトルや最新のハードウエアが並び、その刺激を体感しようと集まる人の波に、衰えぬゲーム人気の高さを感じたが、「さあ、現実を超えた体験へ。」をテーマに掲げた今年のショウでは、e-Sports(イースポーツ)やVR/ARゲームのブースがひときわ大きな盛り上がりを見せていた。
「エレクトロニック・スポーツ」を語源とするe-Sportsは、コンピュータゲームによる競い合いでありながら、スポーツ中継さながらの実況を聞きつつその模様を大勢で観戦するというライブ感に満ちたエンターテインメント性が新しい。競技者同士が反射神経やテクニックを競い合うだけでなく、素早い状況判断や連携、協力を必要とするチーム戦などもあり、ゲームのジャンルも格闘ものからパズルまで幅広い。すでに日本を含むさまざまな国で大会が開催されているほか、e-Sportsを正式なスポーツ競技として指定する国があるほど、近年その認知度は高まり続けており、海外のメジャーな大会では優勝賞金が1億円になることもあるという。e-Sports先進国であるアメリカや韓国に続くべく、日本でもプロフェッショナルのゲーマーを育成する学校が設立されている。
東京ゲームショウ2017では主催者肝煎りのコンテンツとして扱われ、e-Sportsの競技大会「e-Sports X(イースポーツクロス)」を行うため、会場にはふたつの特設ステージ「PlayStation presents BLUE STAGE」と「Samsung SSD presents RED STAGE」が用意された。
競技は「ファンタシースターオンライン 2」 や「モンスターハンターダブルクロス Nintendo Switch Ver.」など対戦型格闘ゲームを中心とした全8タイトルで、トッププレイヤーたちのハイレベルな戦いに多くの観客が声援を送った。
視聴型から体験型へ。さらに進化を遂げた最新VR/AR機器。
もともと「先進性そのもの」という印象が強いせいか、一般ユーザーにとって進化を感じにくいVR(仮想空間)やAR(拡張現実)の技術だが、昨年新設されたVRコーナーはVR/ARコーナーへと名称を変更したほか出展ブースも昨年を超える117に増やし、充実したコンテンツで来場者を楽しませていた。
ヘッドマウントディスプレイにコンピュータでつくり出した仮想空間を映し出し、あたかもそこにいると感じさせるVRは、ソニー・インタラクティブエンタテインメントが2016年に発売し話題となった「プレイステーションVR」によって身近な存在となっているが、東京ゲームショウ2017に出展された最新のVR/AR機器は、目や耳で感じる従来の視聴型から、身体全体で感じる体験型への進化が目覚ましい。
ビジュアルと装置の大きさで度肝を抜いたのは、ヘッドマウントディスプレイを装着したまま専用シートに腰かけるとユニットが上下左右シームレスに回転し、絶叫マシンさながらに未来世界の映像が楽しめる「GYRO VR」だった。
また、スティック型のコントローラーを両手に装着して楽しむゲームも多く出展され、仮想空間の中でアイテムを手に入れながら敵と戦うものや、PC本体を背負うことでケーブルに制限されず広いスペースを移動しながらプレイできるものなど、ソフトのバリエーションやアイデアが豊富であったことも印象的で、自転車のペダルを漕いで仮想空間を移動しながらターゲットや相手チームのプレイヤーを撃破するゲームも人気を集めていた。
大学やゲーム専門学校に通う学生が出展するゲームスクールコーナーでもVR/AR関連のコンテンツは多く、既存のハードウエアを利用しながら個性的な発想をゲーム化し展示するブースが目立つことからも、VR/ARに対する若い世代の関心の高まりがうかがえる。
これらの技術は時間の経過と共に進歩し、リアリティが増すほどに、現実と仮想空間の境界線がはっきりしない世界がやってくる。ここ日本で、プロフェッショナルスポーツとしてのゲーム競技をインターネットで観戦する、そんな日常を過ごす日もそう遠くない。
(取材)木村和貴
(文・写真)干場将信