2024年2月9日〜11日、第4回目となる「Femtech Fes!(フェムテック・フェス)」が六本木アカデミーヒルズで開催され、過去最高の5,150名が参加した。同フェスを主催するのはフェムテック関連ビジネスを展開するfermata(フェルマータ)社。会場には、世界23カ国5地域から200以上のフェムテックサービス・プロダクトがそろった。

世界中からも起業家が多く訪れ、中には「Femtech(フェムテック)」という言葉の産みの親であり、生理周期管理アプリ「Clue」の共同創業者・元CEO、現会長のイダ・ティン氏の姿も。
※ティン氏とfermataの代表取締役の杉本亜美奈氏による基調講演の様子は、こちらから。

後編では、国内外の出展企業からユニークなプロダクトを抜粋して紹介したい。

大手企業も多数出展。【国内】のフェムテックプロダクト

会場は終日混雑しており、女性のみならず男性も多く見られた(fermata提供)

まずは、国内企業のプロダクト・サービスを取り上げる。近年は、大手企業のフェムテックおよびフェムケア市場の参入が目立ち、同会場でも参加者から注目を集めていた。

【アサヒグループ食品】月経前の不調を緩和する日本初のサプリメント

月経前の晴れない気分、精神的疲労感、眠気にアプローチするサプリメント(筆者撮影)

アサヒグループ食品では、機能性表示食品『わたしプロローグ』(2,210円)を2024年1月25日に発売開始。アサヒグループ独自の乳酸菌「CP2305ガセリ菌」を配合したフェムケア商品で、月経に関する機能性(健康な女性の月経前の一時的な晴れない気分の軽減)を訴求する機能性表示食品は日本初(2023年12月 アサヒグループ食品調べ)となる。

同社は徳島大学と共同で、女性を対象とした「CP2305ガセリ菌」の摂取による影響を長年研究してきた。その成果を活かして、開発された新商品だ。毎日2粒を摂取することで、月経前の一時的な「晴れない気分」「精神的疲労感」「眠気」の緩和に役立つ結果が出ているという。

【味の素】セルフケアを「おすすめ商品」と「コミュニティ」でサポート

自身がPMSに長年悩んできた経験から、社内起業家として「LaboMe®」を立ち上げた味の素の橋 麻依子さん(筆者撮影)

味の素では、女性のセルフケアのためのプロダクト&コミュニティサービス「LaboMe®」(ラボミー)の提供を2023年8月から開始している。月額2,980円のサブスクリプションで、毎月のセルフケアテーマに沿ったプロダクトが届き、セルフケアの情報・つながりが得られるコミュニティを利用することができる。

これまでに、「生理中の悩みに寄り添うバスパウダー」や「デリケートゾーンソープ」、「締めつけ感のない新感覚のソックス」など、独自目線のプロダクトを会員に届けてきた。コミュニティでは、セルフケアをサポートするイベントを毎月開催。20〜40代中心の女性たちが、PMSの悩みを打ち明けたり、セルフケアの情報交換をしたり、交流が盛んになっているという。

【アルプスアルパイン】骨盤底筋トレーニングをサポート

骨盤底筋トレーニングをサポートするデバイス。尿もれ軽減などが見込める(筆者撮影)

アルプスアルパイン社は、骨盤底筋トレーニングをサポートする「ペリノス™」(一般販売予定価格:25,000円)を提供する。内蔵を支える骨盤底筋が衰えると、下腹が出たり、尿もれしたりする原因になる。とはいえ骨盤底筋のトレーニングは自力では難しい。そこで、トレーニングをサポートする製品を開発したという。

下腹部に同製品を装着してトレーニングすると、スマートフォンで骨盤底筋の動きを見ることができ、適度に力が入っているか、自身で骨盤底筋のコントロールができているかなどが把握できる。現在は、専門家による同製品を使ったトレーニングレッスンが提供されている。

【セキララカード】パートナーの価値観を知るカードゲーム

パートナーの価値観を知ることができる質問が書かれた「セキララカード」(筆者撮影)

2023年11月に創業した株式会社セキララカードは、パートナーや友人の価値観を知るためのカードゲーム「セキララカード」(カップル、フレンズ用:各3,000円)を発売する。

例えば、パートナー向けのカードには、「あなたの浮気の基準は?何があれば別れる?」「どういう状況が一番ストレスにくる?ストレスが溜まったとき、私にどうしてほしい?」など、あらかじめ知っておくと関係性の維持に役立ちそうな内容が書かれている。

創業者の藤原紗耶さんは、自身がパートナーにうまく向き合えなかったツラい経験から、同製品を開発したそうだ。

進化が目覚ましい【海外】のフェムテックプロダクト

続いては、国内と比較して、より「テック色」が強かった海外製のプロダクト・サービスを紹介する。

【アメリカ】就寝前に着用して睡眠と基礎体温を測定するデバイス

上腕に取り付けて睡眠と基礎体温を測定するデバイス(筆者撮影)

アメリカ発の「Tempdrop」(169ドル、公式ホームページ参照)は、寝る前に二の腕に装着することで、睡眠と基礎体温を正確、かつ継続的に測定するデバイスだ。朝起きたらセンサーをアプリに同期させると、アプリにデータが共有される。体温計を使って測定する場合、毎朝できるだけ同じ時間に測定するのが望ましいとされるが、同デバイスは睡眠中の基礎体温を継続的に測定するので、起床時間が変わっても問題ない。充電不要なのもメリットだ。

※本商品は日本未上陸品です

【オーストリア】呼気を分析して月経周期と排卵を予測するデバイス

吐く息から月経周期と排卵を予測するデバイス(筆者撮影)

オーストラリア発の「breathe ilo(ブリーズ アイロ)」(価格不明)は、吐く息のCO2濃度などを分析することで、月経周期と排卵を予測する。毎朝1分間、デバイスに息を吹き込むと、その情報がアプリに送られ結果を追跡できる。さらにアプリ上で運動、食事、生活習慣のアドバイスを提供して、妊活をサポートする。

※本商品は日本未上陸品です

【アメリカ】妊娠合併症を予測する妊婦用のウェアラブル・デバイス

予防可能な妊娠合併症を早期に予測する妊婦用ウェアラブル・デバイス(筆者撮影)

アメリカ発の「Bloomlife Pregnancy Tracker(ブルームライフ プレグナンシー トラッカー)」(価格不明)は、母体と胎児の健康に影響を与える心拍などの身体データを追跡し、分析する世界初(同社調べ)の妊婦用ウェアラブル・デバイスだ。データを医師と連携することで、妊娠合併症を早期に予測、管理することができるという。

※本商品は日本未上陸品です

【アメリカ】手元で温度を調整可能なリストバンド

手首を冷やしたり、温めたりして更年期の体の悩みにアプローチするデバイス
(fermataのプレスリリースより)

アメリカ発Embr Labs社は、更年期の突然の発汗やほてり、動悸などにアプローチするリストバンド「Embr Wave 2(エンバーウェーブ2)」(299ドル)を発売している。症状に応じて手首から体を冷やしたり、温めたりでき、睡眠障害の軽減にも役立つという。

※本商品は日本未上陸品です

【フィンランド】ピルの飲み忘れを防ぐ服薬管理アプリ&デバイス

薬のシートに取り付けて、薬の飲み忘れを防止するデバイス(筆者撮影)

フィンランド発の「Popit」は、毎日同じ時間に飲まなければいけない薬の「飲み忘れ」を防止する服薬管理アプリ「Popit」とデバイス「Popit Sense」(6,349円)を組み合わせて使用する。同デバイスを薬のシートに取り付けると、薬を取り出す動きや音を感知してアプリに記録する。もし薬を飲み忘れていたら、スマホに通知する仕組みだ。

【スウェーデン】世界160ヵ国で発売されているプレジャートイ

カタチやバイブレーションにこだわって製作されたプレジャートイ(筆者撮影)

2003年にスウェーデンで誕生したプレジャートイブランド「LELO」は、オーガズムに導くマッサージャーやバイブレーター(女性・男性・カップル向け)を中心に、コンドームや潤滑剤など幅広く展開する。

同社のミッションは「恥じることのないエクスタシー体験を提供すること」で、自身の気持ちよさを追求して性的に満足することができる社会を目指しているという。

【スウェーデン】ニーズによって選べる月経カップ、月経ディスク

性教育の先進国スウェーデン生まれの「月経カップ」(写真中央付近の取ってが付いたピンクの製品」、「月経ディスク」(写真右手前の薄ピンクの製品)(筆者撮影)

スウェーデン発のフェムテックブランド「INTIMINA(インティミナ)」は、最初の月経から更年期まで、女性特有の健康問題を解決する製品と情報を届けることをミッションに掲げている。主な製品は、繰り返し使える「月経ディスク」(6,600円)、「月経カップ」(5,500円)、「膣トレボール」(6,930円)だ。身体のサイズに合わせて、月経ディスクは2種類から選べる。

フェムテック製品の普及は「情報提供」や「教育」が求められる

第4回「Femtech Fes!」は、グローバル色がより濃くなり、国内外のフェムテック市場の現状が垣間見られた。国内では大手企業の参入や本格化も目立ち、近い将来にさらなる市場拡大が見込まれるのではないか。

基調講演やトークセッションも多くの聴衆が耳を傾けていた(fermata提供)

一方で、イチ女性の視点でプロダクトを見ると、新規性が高いものほど利用のハードルが高いと感じる。筆者の体験でいえば、月経ディスクは一度トライしたが、恥骨に引っ掛けるなど調整が難しく、うまく装着できなかったことからネガティブな印象がある(あくまで個人の経験であり、月経ディスクの一般的な使用満足度とイコールではない)。また、月経ディスクにスモール、レギュラーのサイズがあっても、自分がどちらに当てはまるのかわからない。

自分に合ったアイテムを選べるようになってきているが、何を基準に、どう選ぶべきなのか。どうしたら正しく使えるのか。まだまだ不明瞭な点が多いのが実情だ。本格的な普及には、積極的な情報や体験の提供、利用者への教育が求められるだろう。

サムネイル写真提供:fermata株式会社
取材・文:小林香織