訪問回数16億回、1億人以上のユーザーを持つChatGPT

2022年11月30日にローンチされたChatGPT、そのユーザー数は5日で100万人、約2カ月で1億人に達し、コンシューマ向けアプリケーションとしては、インスタグラムやティックトックを超える記録を樹立したとみられている。

2023年2月初旬に伝えられたスイス金融大手UBSの分析レポートでは、同時点におけるChatGPTの月間アクティブユーザー数が1億2300万人に達したと推計されたのだ。11月末から2月初旬までの約2カ月でユーザー数が1億人を超えた格好となる。インスタグラムがユーザー1億人に到達するまで要した期間は2年半、ティックトックは9カ月だった。

Similarwebによる推計では、1月末から2月初旬時点における1日あたりのChatGPTウェブページへのユニーク訪問者数は1300万人、ローンチ以降の累計ユーザー数は2億6600万人に達したとされる。

2023年4月12日時点のSimilarwebのデータによると、2023年3月の月間訪問回数は16億回と前月比55.84%増、平均滞在時間は8分44秒だった。また国別の割合は、米国が14.84%でトップ。これに、インドが6.23%、日本が3.63%、コロンビアが3.19%、カナダが2.94%と続く状況となっている。

米テック企業に厳しいEU、イタリアでは一時利用停止へ

このように驚異的なスピードで成長を続けるChatGPTだが、欧州では風当たりが強くなりつつある。

2023年4月4日の報道によると、イタリア当局がChatGPTの開発元OpenAIに対し、イタリア国内のユーザーに関するデータ処理を一時停止するよう命じた。これにより実質的にイタリア国内のユーザーは、ChatGPTを利用できない状態になっていると報じられている

イタリア当局「データ保護監視機関(Garante)」は、この措置の理由について、3月20日に報告されたChatGPTのバグに言及、またAI開発における個人データの収集・処理に際し、欧州の厳格なプライバシー規制に違反した疑いがあるためだと説明した。また、ChatGPT利用に年齢制限が設けられていない点や時折不正確な情報を示す点なども懸念事項に挙げられている。

イタリア当局は、ChatGPT利用の禁止に加え、EUの一般データ保護規則(GDPR)に適合するかどうかの調査も実施するとしている

CNBCなどは、もしOpenAIが20日以内に指摘される問題に対応しない場合、2000万ユーロの罰金が科せられる可能性があるとも報じている

AP通信によると、この件に関してOpenAIとイタリア当局は、ビデオ会議を実施、OpenAIによる対応が約束されたという。

このイタリアの動きは、各国も注視するところ。特に米テック企業に対し厳しい姿勢を取るEUでは、ChatGPTに対しても厳しい目が向けられている。

Politico2023年4月7日の記事によると、フランスのデジタル担当大臣ジャン=ノエル・バロー氏は地元紙に取材で、ChatGPTがGDPRを遵守していない可能性があるとの意見を述べ、データ処理に問題があり、この点を改善する必要があるだろうと指摘したとされる。一方、イタリアを踏襲して、フランス国内でもChatGPT利用を禁止すべきかどうかについては、「禁止しない」と回答。

同氏は、この問題を管轄するのはフランス政府ではなく、国内のデータ保護当局であるCNILであり、利用の可否についてもCNILが決定すべきだと述べている。

一方、ドイツとアイルランドでもChatGPTのプライバシー問題が指摘されている。The Independent紙は、イタリアがChatGPTを禁止したことを受け、ドイツ、アイルランド、フランスのデータ当局がイタリア当局と情報交換しており、ドイツでは、ChatGPTの利用禁止が検討されていると伝えている。ドイツの連邦データ保護委員会の代表、ウルリッヒ・ケルバー氏による「原則的にドイツでも(イタリアと)同様の手続きが可能である」との発言が禁止検討報道の背景にあるようだ。

利用が一時的に禁止されているイタリアのほか、中国、北朝鮮、ロシア、イランなどでも政府の検閲などの理由からChatGPTが利用できないと報告されている

英国、米国ではAI規制への関心高まるがChatGPTへの直接的言及はなし

一方、EUから離脱した英国、OpenAIの本国である米国では、AI規制に関する議論が始まっているが、現在のところChatGPTへの直接的な言及はない。

英国では、イタリアがChatGPTを禁止した1週間前に、当局によるAI規制計画が発表された。英国政府は、各セクターの規制当局に対し、新規規制を導入するのではなく、既存の規制を適用するよう求めたとされる。特に、AIプロダクトを使用する際、企業が守るべき、主要原則を明確にすることが提案されていたという

またロイター通信4月12日の報道では、米国政府は、国家安全保障や教育への影響に対する懸念が浮上していることを受け、AIシステムの説明責任策に関するパブリックコメントを求めることを発表した。急速にユーザーが拡大するChatGPTに対し、米議会の関心が高まったことも背景にあるといわれているが、ChatGPTへの直接的な言及はなかった模様。

国レベルだけでなく、自治体・企業・学校レベルでも、ChatGPTに対する姿勢は様々。禁止するところもあれば、利用を推奨する組織も存在する。ChatGPTの競合が続々と登場する状況、その恩恵を最大化するためのルール・規制の議論が進むものと思われる。

文:細谷元(Livit