(1)旅行開始間近!? ヴァージンギャラクティック社とは

米国ニューメキシコ州に本社を持つヴァージンギャラクティック社は、2004年に著名起業家でヴァージン・グループ会長のリチャード・ブランソン氏によって設立されました。現在、宇宙旅行の販売や自社での商用宇宙船開発事業に取り組んでいます。

ヴァージンギャラクティック社は、スペースポートアメリカなど世界中にある宇宙港から毎年何百もの宇宙旅行を実現させることを目標としています。

2019年2月にパイロット以外の人員1名を乗せた自社の宇宙船「VSS Unity」を宇宙空間に到達させており、テスト飛行が実施されています。

2021年3月30日には、新しい宇宙船SpaceShip III(VSS Imagine)を公開しており、今年の夏には滑空試験飛行を行うと発表しています。

(2)費用は2700万円! ヴァージンギャラクティック社の宇宙旅行は予約できる?

宇宙旅行と聞くと料金が気になるところですが、ヴァージンギャラクティック社はすでに、約600人の乗客に1人あたり約25万ドルの価格でサブオービタル宇宙旅行を販売しています。

商業宇宙旅行に向けて自社開発した宇宙船「VSS Unity」のテスト飛行を重ねており、2021年頃には実際に宇宙旅行が開始される予定です。現在は宇宙旅行の事前予約を中断していますが、2021年に予約が再開される見込みです。

また同社は、今後の宇宙旅行需要増加に伴って宇宙旅行の価格を引き下げることが可能であると話しておりしており、多くの人にとって手が届く価格になるのもそう遠くはないかもしれません。

(3)ヴァージンギャラクティック社から見える景色と宇宙旅行の種類、市場規模

現在、実現に向けた動きがある宇宙旅行には、軌道上宇宙旅行と、サブオービタル宇宙旅行、月旅行、火星旅行などがあります。

オービタル宇宙旅行

高度400km程まで飛行し地球を周回、数日または1週間以上宇宙に滞在するもの。

これまではロシアのソユーズ宇宙船を仕様したISSへの飛行が行われ、現在はSpaceX社も本分野に取り組んでいます。

以下の画像は宇宙旅行の際に撮られたものではありませんが、ISSから撮影された画像になり、あくまでイメージです。

高度約400kmにある日本が参加する宇宙実験施設、国際宇宙ステーション(ISS)から撮影された地球(バハマ諸島)

サブオービタル宇宙旅行

高度100kmまで飛行し、数分間〜数十分間宇宙に滞在するもの。ヴァージンギャラクティック社とBlue Origin社がサブオービタル宇宙旅行の提供を予定しています。

以下、テストフライトの際に見えた地球の景色です。

月旅行・火星旅行

月や火星に行って帰ってくるもの。日本では、前澤友作氏がSpaceX社にて開発中のStarshipでの月旅行を2023年に実施することを発表し、8名の同乗クルーを募集中です。

以上、宇宙旅行の分類を行い、取り組むプレイヤーを紹介しました。上記の通り、サブオービタル宇宙旅行の分野において、ヴァージンギャラクティック社以外ではブルーオリジン社も宇宙船New Shepardを開発しており、2017年にテスト飛行を実施しています。

これから実現されていく宇宙旅行ですが、市場規模はどのくらいなのでしょうか。

UBS社が作成したレポートでは、軌道上宇宙旅行とサブオービタル宇宙旅行を合わせた宇宙旅行の市場規模は、2030年までに30億ドルに達する可能性があると予測されています。

また宇宙コンサルティングを営むノーザンスカイリサーチ社は、サブオービタル宇宙旅行は2028年までに28億ドル、軌道上宇宙旅行は約6億ドルの市場になると予想しています。

(4)世界初の宇宙旅行事業での上場企業の株価推移は? 宇宙旅行チケットの売上は4倍に?

ヴァージンギャラクティック社は2019年10月28日、ニューヨーク証券取引所に上場し銘柄「SPCE」にて株が取引されています。

宇宙旅行を進めるSpaceX社、ブルーオリジン社の中で、唯一の上場企業であるヴァージンギャラクティク社の株価は、どうなのでしょうか。

同社への投資判断について、様々な金融機関で「買い」と判断するレポートが発表されており、実際に2020年4月から2021年4月にかけて、株価は一時的に3倍程まで高騰していますが、現在は昨年の約1.5倍程まで落ち着いています。配当金はまだ支払われておらず、2020年度4Q決算では、当期純損失約7400ドルが計上されています。今後の動向にも注目です。

また、UBS社は、同社が商業宇宙旅行を開始されれば、何年もの間、宇宙旅行の需要が供給をはるかに上回ると見込んでおり、宇宙旅行チケットの売上高は数年間で4倍に増加すると予想しています。

(5)ヴァージンオービット社との関係は?

2017年にヴァージンギャラクティック社から分社化して設立されたヴァージンオービット社では、小型衛星事業や、宇宙港の開発事業にして取り組んでいます。

ヴァージンオービット社は2020年4月、大分県と提携し、大分空港を水平型の宇宙港「スペースポート」として開港するための準備を進めることを発表しました。大分空港における打ち上げ開始は2022年に予定されています。

(6)今後の展望

ヴァージンギャラクティック社のロケットは現在、米国ニューメキシコ州にあるスペースポートアメリカを拠点に打ち上げを予定していますが、今後日本でも大分空港での打ち上げが実現すれば、宇宙旅行が日本人にとってより身近なものになるかもしれません。

日本が島国であることを踏まえると、大分県の他にも宇宙港が建設され、宇宙旅行の拠点となる可能性が高いのではないでしょうか。

また、日本人に限らず、商業宇宙旅行が開始され宇宙旅行の価格が下がれば、宇宙が遠いものから身近なものへと変わり、さらに宇宙に関心を持つ人が増えることが予想されます。

週末に海外旅行に行くのと同じ感覚で、宇宙旅行に行ける未来が来るのが楽しみですね。