INDEX
日本ではいまいち進んでいないが、世界的にはキャッシュレス化が進んでいる。このため、現在、さまざまな電子マネーによるキャッシュレス決済が可能となっている。中でも、注目されているのが「QRコード」による決済法だ。中国ではQRコードによる決済サービスが広く浸透しており、日本でも、モバイル決済のQRコード対応が次々と進んでいる。
有限責任監査法人トーマツは、10代~50代のスマートフォン保有者かつスマートフォンアプリ利用経験者2,000名を対象とした「QRコード決済・モバイル決済の利用実態と今後の利用意向に関する調査 2018年」を実施、その結果を発表した。
それによると、QRコード決済・モバイル決済を利用した経験があるのは10代・20代の若年層だけでなく30代~50代にも多く、幅広い世代で利用されていることがわかった。
利用経験者はまだ全体の1割弱
この調査は、2018年5月18日~22日にオンラインで実施され、対象はスマートフォン所持率が高いとされる、10代・20代・30代・40代・50代各男女200名ずつ計2,000名。
まず、QRコード決済の利用について聞いた。その結果、調査対象者全体2,000名のうち9.1%にあたる182名が「利用したことがある」と回答した。世代別では20・30・40代で1割超、10代と50代で1割未満が利用していることがわかった。
同様に、モバイル決済の利用について聞いたところ、全体の20.0%にあたる400名が「利用したことがある」と回答し、世代別では30代と40代で2割を超える利用者がいた。
また、QRコード決済・モバイル決済の利用頻度に関する質問では、QRコード決済について月に最低1回以上利用がある回答者が52.7%を占め、モバイル決済については58.1%を占める結果となり、過半数が月1回以上の頻度で利用していることがわかった。
QRコード決済・モバイル決済は、現状ではまだ利用者は少ないももの、一度利用すると半数以上の人がそのメリットを感じ、利用し続ける傾向にあるようだ。
その最大の魅力は「スマホだけで支払いができる」こと
そして、QRコード決済利用者かつ利用満足者にQRコード決済に対する魅力因子を聞いたところ、「現金・カードを持ち歩かなくてもスマホだけで支払いができる」が36.6%、「現金に比べて店頭での支払いが簡単でスピーディ」「支払うたびにポイントが貯まるなどお得」がいずれも32.9%、「ATMでお金をおろさなくても済む」が28.0%となった。
また、「QRコード決済が使えるお店が増えてきた」「LINEや楽天などすでに利用している企業の新サービスだから」がいずれも21.3%、「QRコードを読み取るスタイルが楽しい」が20.1%といったQRコード決済ならではの特徴も一定数が魅力に感じていることが読み取れた。
QRコード決済の魅力は、やはりスマホさえあれば、簡単に決済できるという利便性にあるようだ。また、使える場所の増加などインフラが整備されてきたことも大きい。
最も利用しているのは新しいモノ好きな「トレンド追求派」
次にこの調査の回答をもとに、生活消費およびキャッシュレスに対する意識をもとに、大きな集団の中から似たもの同士を集めてグループに分ける統計的な分析手法であるクラスター分析を行い、全回答者を「コンサバ消費派」「こだわり消費派」「消費無関心派」「クレバー消費派」「トレンド追求派」の5つのクラスターに分類した。
その結果、キャッシュレスの進行に対して肯定的意識の高かったクラスターは、「クレバー消費派」が21.2%と「トレンド追求派」が24.7%となり、その2つのクラスターをキャッシュレス層、それ以外が非キャッシュレス層にわけられた。
また、QRコード決済・モバイル決済を最も利用しているクラスターは新しいモノ好きな「トレンド追求派」で、このクラスターは年代による偏りが少ないことがわかった。
次に生体認証による決済方法の認知度を質問したところ、62.9%にあたる1,258名が「知っている」と回答した。利用意向を質問したところ1,166名、58.3%が「利用したい」と回答し、注目度の高さがうかがえたという。
また、キャッシュレス社会の普及に対して質問したところ、ポジティブに受け入れているのは1,139名、57%と過半数に上った。同社では、この結果について今後のキャッシュレス社会においては、生体認証のようなより手軽でよりセキュアと想定される決済手段が複数登場し、利用者が場面や利用金額に応じて使い分けていくことが見込まれると分析している。
そして、これらにクラスター分析の結果を踏まえると、キャッシュレスを好む「クレバー消費志向派」や「トレンド追求」層に現時点で積極的にアプローチしていくことで、年代に関係なく利用が拡大していくが予想している。
QRコード決済の普及については、まずは、いわゆる「新しいモノ好き」がそのカギを握っているようだ。
QRコード決済が日本のキャッシュレス化浸透の起爆剤に
今回の調査では、利用経験は年代よりも価値観による差が顕著で、新しいモノ好きな志向が強い層がけん引することがわかった。
現金に対する信頼が強い日本は、現状では「キャッシュレス後進国」と言われる。経済産業省の「キャッシュレスの現状と推進」によると2015年のキャッシュレス決済比率は18%でしかない。しかし、一度利用すると、そのメリットを感じる人が多いようで、QRコード決済が日本のキャッシュレス化浸透の起爆剤となるか、今後の展開に期待したい。
img:PR TIMES